第15話
雨が降る前には村人も火矢で矢防ぎを燃やされる事態を警戒し、あらかじめ水をかけたり、消火用の水桶を用意したりして、備えていた。その作業の一部はは俺も見ていた
だが、今日は雨が降り続き、萱は完全に水浸しの状態になり、村人たちは火矢をまったく恐れていなかった。
しかし、どういうわけが雨でも消えない火矢が次々に射こまれ、あわてた村人たちは必死に火を消そうとするが、むしろ逆に火は広がっていき、消す事が出来なかった。
やがて、大きな炎を上げながら、矢防ぎは崩れ落ちる。
巻き込まれまいと、後退するところに矢が放たれ、総崩れになる。
垣を越えて待機していた盗賊たちが前進を始める。
村長はなんとか林の端で防衛線を形成しようと、声を上げているがなかなか混乱はおさまらない。
俺たちは林の中の村人の邪魔にならない位置に移動して、対応を相談する。
「一度下がりますか?」
アリシアさんが提案する。
林で防ぎきれずに、村に突入される事態に備えて、林の東まで下がった方がいいというわけだ。
だが、ガイさんは即答しない。
(アポさん、いけそうですか?)
(まだ、二人残っていますがいけるでしょう)
(では始めてください)
(わかりました)
ガイさんはアポさんとの話しの後、村長に伝える。
「村長殿、間に合います」
「それは助かる!」
喜びの声を上げて、村長は指示を切り替える。
防衛線を死守するのではなく、道を突破されないように重点的に守りながら、全体としては後退し、出来るだけ時間を稼ぐ、そういう方針のようだ。
「団長たちは、東に下がってください。突破した敵を抑えて、林から出ないようにして下されば助かります。私は道をふさぎましょう」
そう言って、道に走り出ると、盗賊たちに攻め立てられ、今にも破られそうだった状況を覆す。
盗賊の頭らしき声が聞こえてきた。
「道にこだわるな、林に広がって攻め立てよ。どこかが破れればそれでよい」
盗賊は勢いづいて攻めてくる。だが、村人の方も村長の懸命の指揮と、道に立ちふさがって、敵の攻撃をものともしないガイさんの活躍のおかげで、しだいに混乱もおさまり、ゆっくりと東に押されつつ、何とか敵の突破を許さずに済んでいる。
盗賊の中には腕に覚えがある者もいて、あえてガイさんに挑戦してくる。だが、ガイさんにかなう相手ではなかった。ある者勢いよく振りかぶった太刀を降ろす暇もなく槍に突かれ、ある者は素早く距離を詰めようとして、跳躍したガイさんに足に装着した刃物で斬られる。ほぼ刃を交わす事もなく、四人ほどが撃退されると、ガイさんに挑む者はいなくなり、道から盗賊が侵攻してくる恐れはなくなった。
だが、道以外の場所では押されており、村人の後退に合わせて、ガイさんも下がっていく。
あと少しで東の端まで敵に押し込まれるという時に、西で声が上がった。
口々に叫ぶ盗賊たちが何を言っているのかは
「うろたえるな。数は少ない」
頭の声だけが何を言っているかわかる。
アポさんが西の空から飛んできて声を上げる。
「援軍です。援軍が来ましたよ」
続いて村長が叫ぶ。
「村から出ていた猛者どもが戻って来たぞ!」
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