第13話 『返品』
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「よくいらっしゃった、ごんべいさん。」
「ながく不義理を致しました、神殿長様。」
「いいんですよ、活躍は聞いております、あなたが精一杯生きているんなら、それでいいんですよ。」
「ありがとうございます。」
大神殿より呼び出しを受けた。
神殿長直々のお呼びである。失礼
思い当たるのは、この前のアレか。
モノがモノなんで動揺したが、もしかしてホントに…。
「早速だけど、じつはごんべいさんに頼み事があってね。」
「えっ、頼み事ですか?」
「ああ、そうそう、この前は結構なモノを納めてくれたようだね。
イロイロと因縁が絡みついていたがキレイにお清め出来たよ。
あとでお返しするよ。」
「あ、いや、その」
「何をそんなにおびえてるんだい。
アレは面倒なモノではあるが、元々は大地母神様の祭事に使う祭器だよ。
心配することは無いよ。」
「そ、そうですか。」
「ま、なんなら、大地母神様に奉納するといい。
そうすれば、なんの心配も無くなるよ。」
「あああ、そうですね、奉納すればいいんですね。」
「うん、そうだね。
それでね、お~い、たろう君、はいって。」
「失礼します。」
扉を開けて学ランを着た中学生くらいの少年が入ってきた。
「先日、保護した、たろう君だよ。
こちらは君の先輩にあたる、ごんべいさんだよ。」
そういう事か。
「ごんべいを名乗っている、ドブ浚いのじじぃだ。」
「え、あ、たろうを名乗っています。」
「うんうん、たろう君には神殿で一通り、神様のことは教えてある。
たろう君は人の間で生きるようでね、その辺をごんべいさんに教えてやってもらえないかと思ってね。」
「そうですか、となると分神殿の方ですか?」
「うん、そうだね、その方がいいだろうね。」
「わかりました、お引き受け致します。」
「ありがとうね、たろう君はまだまだ若い、ごんべいさんのようなしっかりした大人に任せられて一安心だよ。」
「出来る限りのことは致しますので、お任せください。」
***
「まず、俺のことは、ドブ浚いのじじぃ、長いなら、じじぃと呼べ。
お前のことは、たろうと呼ぶ。
さんとか君はつけるな、いいな。」
「え、なんで?」
「丁寧なしゃべり方をしてると舐められる、舐められたら終わりだと思え。
ここには野蛮人しかいない、上か下かだけだ。
下の人間、いや、人として扱われないな。
下のものには何をしてもいいと思っているんだ。
大げさに言ってるんじゃない、ジャングルの首狩り族ぐらいに思っとけ。」
たろうの顔色が白くなり、青褪めていく。
「ま、神殿長様に頼まれたんだ、最低限は生きていけるようにしてやる。
嫌なら逃げてもいいが、そん時はロクな死に方をしないと思っておけ。
脅してるんじゃないぞ、ほんとの事だ。」
顔を引きつらせながら頷く、たろう。
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