五夜目・カプセルホテル

 ――カプセルホテルに、生まれて初めて泊まった。

 

 円筒形のエントランス。


 吹き抜けの空間にはカプセルを思わせる鉄製のつつが連なるように組み込まれ、おりのごとき筒の先端せんたんからは人の顔が見えてプライバシーもへったくれもない。


 エレベーターも古めかしい鳥籠とりかごのような形状。

 降りた先でボーイから泊まる予定の一室を案内される。


 マンホールのようなドアを開けた先には、やや斜め下に向く筒形の檻。

 中世の拷問器具ごうもんきぐを思わせる狭い個室には布団も枕もない。


 寝心地は最悪に違いないと思いつつも潜り込むと「おやすみなさい、良い夢を」とボーイが足元のふたを閉め、ガチャリと鍵のかかる音がした。

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