38.シルヴェスタと第二王女





「……ヴェスタ様、シルヴェスタ・H・ウォーカー様!」


 俺は、その言葉で目が覚めた。

 目の前に広がる空間は、どこか見覚えのある部屋。白を基調に豪華な装飾に囲まれた空間には、どこか甘い香りが漂っていることに気がつく。

 壁に立てかけられた狼の絵。窓が開けられたのか揺らぐカーテン。黄金の枠に嵌められた姿鏡。

 俺はそれらを一通り見回して、ぼそりと呟いた。


「ここは……」

「もう、またぼーっとされてるんですか? いけない人……今日くらいは、リラックスして話を聞いてくれても、よいではないですか」


 声を掛けてきた方へと、俺は自然と目線を投げる。

 なぜか、そんなはずはないと思いながら――いやしかし、そうあってほしいと切に願ってしまう声。


 俺の真正面。彼女の身分には相応しくない質素な椅子に腰掛けながら、不機嫌そうにこちらを見つめてくる美しい顔は紛れもなく――。


「ルリス……王女?」


 ――――彼女、そのものであった。


「なん……で……?」

「なんでって……不思議なことを聞くのですね。私がお誘いしたからです。覚えていませんか?」


 目の前に座る少女――ルリス第二王女殿下は、黄金の髪に陽光を受けながら、怪訝な様子で小首を傾げた。まるで、本当にそこにいるかのように、彼女はいつもの上品な振る舞いで、席を立ち上がる。


「あ、見てください。庭園にアイリスが咲いていたんです! 綺麗ですよね、もうすっかり春を感じます」


 そう言って、彼女は窓の近くに置いてあった、花瓶を俺に見せてくる。心底、嬉しいのか、子供のように自慢する彼女の顔は、俺が幾度となく見たルリス王女そのもののように見えた。

 ルリス王女は生粋の花好きだ。

 美しい花々を愛でることは、体が弱いため、あまり外に出ることができなかった彼女の、数少ない娯楽だと聞いたことがある。


 しかし、そんな彼女に俺は生返事しかできなかった。

「そう、ですね……」と喉を詰まらせながら、心の中に渦巻く疑念を払拭できずにいる。


 頭にモヤがかかったような不気味さに思考を半ば鈍らせながら、俺はふと彼女の指に嵌められた赤い宝石の指輪を目にした。


「っ、そうだ! イドヒ、イドヒは!?」

「イドヒ卿がどうかされましたか?」

「え……どうされたって、そりゃぁ、あなた――」


 そこまで言いかけて、俺の頭から、すとんと情報が抜け落ちたように口が止まる。

 

(あれ、なんだっけ……俺は今、彼女に何を言おうとした?)


 さっきまで思っていたことのはずなのに、途端、頭が回らなくなった。

 大事なことだったはずだ。すごく、大事なことだったはず……。

 それなのに、何も思い出すことはできず、ただただ行き場を失った言葉たちは、もはや沈黙となってこの場を支配することしかできいでいた。

 

 そんな俺を見たせいか、ルリス王女は、またもや不思議そうな表情を浮かべた。そして、彼女は花瓶を置き、俺の方に近寄ると、ゆっくりと小さな手を頬に重ねてくる。


「怖い顔……どうやら、調子が悪いようですね。お茶会はまたの機会にしましょうか?」

「お茶、会……?」


 そこで初めて、用意されたテーブルに並ぶ、2つのティーカップへと目がいった。他にも、彼女が愛用していたティーセットが、卓上にはずらりと並べられている。ティーフーズとして用意されたのか、焼きたてのスコーンもあり、まさしく今、俺と彼女でお茶会を始めようとしていたのが分かった。


(そうだ……)


 ここで、俺は自身の記憶が蘇る。

 確か今日の朝、騎士団本部から王城へと寄った俺は、彼女に午後の茶会に誘われていたのだ。

 その時、「自慢のジャムを塗った、スコーンを食べさせてあげますね」なんてしたり顔で言われたのも、覚えている。

 なんで、こんなことを忘れていたんだ。


「……今、思い出しました。すみません、変なことばっか言って。そうですね、俺はあなたのお茶会を楽しみにしてたんですよ!」

「まぁ、ふふ。そんなにはしゃいで。私も嬉しくなってきますわ」

「いや、本当。ここのところ、任務が詰まっていまして、食の楽しみがなかったですからね」


 俺はそう言って、彼女が座るために椅子を引いてやる。

 ルリス王女はなんの躊躇いもなく「ありがとうございます」と言って、その椅子に腰掛けた。

 俺も彼女が席についたので、正面に用意された椅子へと座る。


「お茶、淹れますね。今日のは少し力を入れたんです。楽しんでもらえると、良いのですが……」

「言っても、ルリス王女の淹れる紅茶は王国一でしょ。どんな味の紅茶であれ、楽しまない奴は、よほどの味音痴か、そもそも紅茶嫌いのどちらかです」

「じゃあ、最初に出会った頃の貴方様は、かなりの味音痴だったわけですね?」

「うぐ……それを今、言いますか」


 これは痛いところを突かれたと、俺は胸に手を当てる。

 最初に出会った頃は、俺も色々と尖っていたのだ。誰も信用できないし、誰も信用する気がない。そんな風に考えていた……まぁ、男の子特有の所謂イタイ時期だったのである。

 察してほしい。


「ふふ、ごめんなさい。今のはちょっぴり意地悪でした」

「全くです。さらりと人の傷つくことを言うのは、気をつけてくださいね。この前も、あなたの何気ない一言で、俺かなり傷ついたんですから……」

「この前の、と言いますと、あれでしょうか? シルヴェスタ様のネーミングセンスは絶望的ですね、という」

「わざわざ言わなくていいことを、言わないでいいんです! ったく、変な人に忠誠を誓ってしまった……」

「私は嬉しいですよ? それに楽しくもありますね。シルヴェスタ様は、かっこよくて、何より可愛らしい人ですから」

「…………はぁ」


 俺はそう言ってため息を吐き、そして堪えきれず少しだけ笑ってしまう。ルリス王女も俺の笑い声に反応したのか、くすりと微笑んで、慣れた手つきで紅茶を淹れ始めた。

 

 ああ、懐かしい。(懐かしい?)

 こんな平和な時間がずっと続けばいいのに。(今も続いているはずだろ?)


 俺はそんな羨望を抱きながら、彼女から差し出された紅茶を受け取った。



 そうして、談笑は続く。

 他愛もない話が転がり続ける。

 お互いに茶会を楽しみにしていたはずなのに、用意されたスコーンも、淹れた紅茶にも手をつけず、ずっと、ずっと、ずっと、言葉だけが行き交いを続ける。

 あれはどうだったかとか、最近ある令嬢が婚約したとか、北の大地は魔物の動きが活発らしいとか、王都で汚職をしていた貴族が平民内で悪口の掃き溜めになっているとか。

 どれもこれも、くだらない、そう、どこにでもある話題たち。

 誰もこの空間を脅かすものはなく、誰も彼女を侵す者はいない、平和で、穏やかで、幸せが溢れる時間。まるで、失った幸せを取り戻すように。


 それなのに、ふとどこからか、俺の耳に彼女以外の声が届いてきた。



『ウォーカー! ねぇ、起きてよ、ウォーカー! お願い、お願いだから!』



 誰だ?

 俺はその声に一瞬だけ反応する。

 ルリス王女はそんな俺に気が付かず、宝石のような笑顔を浮かべながら、楽しそうに話を続けていた。


(幻聴か……どうやら、本気で疲れてるのかもしれん。これが終わったら、俺も暫く取っていなかった休暇を取るか)


 これが終わったら。

 俺はその言葉に、ふと引っ掛かりを覚えた。

 これ、とはいったい何を指しているのだろうか。そもそも、俺は彼女に誘われた記憶はあれど、その後からここに来るまでの記憶が思い出せない。資料室で資料の整理をしていたような気もするし、補給戦について考えていたような気もする。もしかしたら、武器庫の帳簿をつけていたような気もしてきた。


 確かにどれも疲れる仕事ではあるものの、何か違う。

 もっと体を酷使するような……例えば、戦争に出ていた時のような、そんな疲れが体を襲っている気がした。


「シルヴェスタ様?」

「っ、うぉ、ルリス王女!?」

 

 俺が思考に囚われすぎていたせいか、いつの間にか、彼女は俺の耳元まで顔を寄せて、名前を囁いてきた。

 ぼそぼそっと耳にかかった息が、やけにこそばゆい。

 俺は息を吹きかけられた耳を押さえ、驚きのあまり目を見開いた。


「ふふ、大成功です。次ぼーっとしてたら、はむはむしてみましょうか」

「……やめてくださいよ。王女がはしたない」

「ムゥ……その王女の前で、2回も無視するなんて、貴方様の方が不敬なのでは?」


 ルリス王女は頬を含ませて、ぷいっと顔を背ける。

 俺はそんな反応に乾いた笑みでしか返せず、ようやく彼女が差し出してくれたティーカップを手に持った。

 


『GAO……そっか、魔力が足りないんだ……! 本人の生命力強化のためのリソースが足りてない……!』



 ふむ、幻聴がどうやら必死になっているらしい。何やら俺を助けようとしている言葉が散見される。

 別に、五体満足だというのに……もしや、俺はかなり心を病んでいるのだろか。


(それにしたって、かなりリアルな声だな……知っている人間の声なんだろうけど、いったい誰で再生されてるんだ?)


 俺のことをウォーカーと呼ぶ人間をピックアップしてみたが、このような娘の声は誰もヒットしない。

 となれば、俺が脳内で作り上げた架空の声、と言う風になるのだが、すごい想像力だ。きちんとした人間の声でありながら、探せばどこかにいそうな声である。

 

 いやそもそも、俺なんかこんな奴を必死で助けようとする人間が、この世にいるのがびっくりである。



『GAOH……せめて、何か液体のような魔力を経口で飲ませれば………………そうだ!』

「おいおい。『そうだ』って、何する気だよ、ラスティ」



 そこで、俺の体が止まった。


 今、自分はなんと言った?

 …………思い出せない。確かに、誰かの名前を呟いたはずだ。それも、この幻聴の主を知っているかのような口ぶりで。

 なのに、さっき言ったばかりの言葉が、霧に隠れたように海馬から消え失せた。


「誰かと念話されているのですか?」

「あ、いや、別に誰とも…………俺、今なんて言いました?」

「え?」

「あ、聞こえてなかったのなら、良いんです。気にしないでください」


 俺はそう言って、文字通り茶を濁すためにティーカップへ口をつける。

 話に花を咲かせすぎて、だいぶ冷めてしまった液体が、唇の隙間から流れ込んできた。


あっま!!!?」


 舌の上で転がした黄金の液体の味に、思わず目を剥いてしまった。

 味わったことのない甘さ……いや、違う。口内に広がる甘さは、どこか懐かしい味だ……後味がしつこいくらい残り、普段コーヒーしか飲まない俺には衝撃が大きかった甘味……。


 なぜ、懐かしいと思った?

 ルリス王女は、よくこうして甘い紅茶を淹れてくれたはずだ。初めは好きになれなかったけど、次第にこの甘さも良いと思えるようになって、何げに俺が一番好きな紅茶にもなっていたはず。

 なのに、まるでここ一週間は飲んでいなかったような、懐かしさで……。


「……ルリス王女、ひとつ聞いても良いですか」

「はい、なんでしょう?」

「この紅茶、砂糖以外にも入ってるって、一度教えてくれたことがありますよね」


 そうだ、たしか砂糖以外にも入れているって、一度だけ聞いたことがある。

 あの時、この人はなんと答えたんだっけ……。


「何が、入ってるんですか?」

 

 いったい、どれほどの砂糖を入れれば、こんな味が出せると言うのだろうか。

 この紅茶を淹れた張本人を見れば、ルリス王女はきょとんとした表情をした。


 ――『えっとー……そのー……お恥ずかしいんですけど……』


「いつも通りですよ? シルヴェスタ様、仕事終わりは甘いのを欲してらっしゃることが多いので――――」


 記憶の中にいる彼女と、目の前にいる彼女が重なる。

 同じセリフを入っているわけでもないのに、まるで息を合わせたように、俺へと語りかけてくる。

 そうして、恥ずかしそうに/いつもと変わらないように。

 彼女にしては、珍しく頬を朱色に染めながら/俺を揶揄うように笑いながら。

 そっと耳に唇を近づけて。


『「蜂蜜です。ストレートも良いのですが、今日は特別に……あとは貴方様への、ほんのちょっとした日頃の感謝ですよ?」』








 

「起きて、目を開けてよ! こんなところで、死ぬべきじゃないんでしょ!! 大切な人にもう一度逢うんでしょ!!!」





 



 

 ドクン、と心臓が脈打つ。 

 大切な人にもう一度逢う……?


 俺は幻聴に脳を焼かれながら、そっと耳から離れるルリス王女を見る。恥ずかしそうに、ほんのり頬を朱に染めあげた彼女は、照れたのか目を俺から逸らした。


 ――『なんでそんなに必死なの? やっぱり王国の人間ってことは地位が大事ってこと?』

 ――『地位じゃねぇ。……大切な人にもう一回逢うためさ』


 はるか遠くのようにも思える記憶。

 たしかに俺はそう宣言した。マトークシで出会った不思議な少女。伝説の魔女と同じ特徴を有し、自分のことを見習いと言いながら、ここまで俺のことを助けてくれた、優しく、気高く、ちょっとだけ不器用な女の子に、俺はたしかに言った。


 ――『王族の女……どう凌辱するのが1番いいと思う?』

 ――『王太子様はあの身体が不自由な姫を”ガラクタ”としてしか見ていない』

 ――『ハハハ、顔と身体付きだけは一級品なんだがな』


 がりっと奥の歯が鳴る。

 許せない。俺に冤罪を着せたことよりも、奴が俺を利用して、この人へ危害を加えようとすることが……それを許してしまった自分の無力感が、情けなくてたまらない。

 

「どうかされましたか?」

「……全部、思い、出しました……」

「思い出した……? まぁ、それは良いことですね。では、その話はお茶でも飲みながらゆっくりと――」

「思い出したんです!! ……本当に逢いたかった……幸せにしてあげたかった人のことを」


 俺がそう言うと、白を基調とした部屋が炎に包まれた。

 いきなりのことに、ルリス王女は驚いているように見える。

 ウールを素材としていた絨毯は、たちまち炎に侵食され、燃えるはずのない部屋の壁すらも、本の一ページを焼き払うように灰へ変わっていく。


「……」

「シルヴェスタ様……これは?」

「すみません。俺は本物のあんたに顔向けはできないことをしようとした」


 部屋が燃えている状況を無視して、俺は頭を下げる。

 あの時、ラスティを助けるためとはいえ、俺は諦めてしまった。

 ルリス王女を救い出すことを、イドヒを打ち倒し、腐った環境から這い出してやることを。俺は自分の命を捨てることで、放棄しようとしていた。


 あの娘を助けたことに後悔はない。

 見殺しにした上でルリス王女を助けたところで、絶対に彼女は喜ばないだろうし、俺もそんなことをした自分を一生許さないだろう。


 けど、もっと違うやり方があったかもしれないと、今更ながらに思う。


 神殿迷宮に入る前のヴノオロスの時もそうだ。俺1人で相手をする賭けはいらなかった。

 そもそも、単独でマトークシーの森に入り、魔物と戦うことすら、非常に生き急いだ行動だ。


「イドヒに追放されてから、ずっと自分が情けなかった……俺のせいで、あんたを不幸せにしたって……俺がもっとちゃんとしていれば、もっと別の道があったんじゃないかって……! だから、心のどこかで、俺はずっと自分を許せなくて……!」


 そう慟哭した俺の頭に、ぽんと何かが乗せられる。

 見てみれば、目の前に佇んでいた彼女が、優しげな笑みを浮かべながら、俺の頭を撫でていた。


「もう、大丈夫。何も言わなくても伝わります。辛かったでしょ、苦しかったでしょ……ずっと、自分だけを責めて、その無力感に押しつぶされそうになって……」

「……っ……」

「私はきっと、貴方様の言う、本物ではないのでしょう。でも、私と同じ心を持つ人なら、こんな時、シルヴェスタ様に投げかける言葉も同じだと思っていますわ」


 ルリス王女はそう言って、頭を下げた俺の目線に合わせる。

 そして撫でていた手をそっと話、俺の頬をそっと撫でた。


「ありがとう、こんな私のために頑張ってくれて。貴方様のおかげで、私はとっても、幸せ者です」

「ぁ…………」


 頬から手を離し、彼女は後ろへ振り向く。

 未だ部屋は燃え盛っている。きっと、サラマンダーにやられた心象風景が、俺の心に強く残っているせいだろう。もしかしたら、これ自体があの化け物の攻撃なのかもしれない。


「さぁ、行ってください。そして、己のやるべきことを果たしなさい。今だけは、第二王女ルリスとして、貴方にそう命令します」

「…………承知しました。御身の命、今ここに拝命いたします」

「…………無理はしないでくださいね」

「……もう命を天秤に掛けることはしませんよ」


 俺はそれだけを告げると、夢から覚めるため踵を返す。意識が浮上するような感覚に囚われ、後ろから手を引く深淵を振り払う。

 もう、迷いはない。

 目が覚めて、たとえそこに地獄が広がっていようと、俺は全力で抗い続ける。


 そう覚悟を決めた時、一層焔が強さを増した。

 崩れかけていた天井が、夢の終わりを告げるように燃え尽きたのか。

 ガタン、と激しい音をたて、部屋の中へと落ちる。


 




 










 

 

 ……………………。


 ………………。

 

 …………。

 

 ……。


 






 



 






 ――ばき、がさ、どん。


「う、ぐあ、熱い!!」


 焼け落ちた天井を俺は火傷することも無視して、払いのける。

 夢の中だと言うのに、痛みはリアルなのは、本当にイイ性格をしているじゃないか。


「な、にを……なにをしてるのですか、シルヴェスタ様!?」

「はは、なんでしょうね……さっさと夢から醒めようと思ったんですが、やっぱ、俺が作った幻影だろうと、貴女を置いていくのは、俺にはできんらしいです」

「っ」


 俺はそう言って、ルリス王女を背負う。

 体が焼け臭いけど、これくらいは我慢してほしい。こっちだって、夢の中であろうと死ぬ気はもうないのだ。そんな瑣末な問題にかまってやる暇はない。


「しっかり、捕まってくださいよ、王女様。俺の乗り心地は最悪らしいですからね」

「…………ふふ、バカですね、貴方様は」

「今更、気がついたんですか? 平民のくせに、騎士なんかになる奴は、とんだ馬鹿しかいないんです、よ!!」


 俺は窓を思いっきり蹴り壊す。

 いったい、どこが夢の果てなのかは知らない。

 けれど、この意識、この体が持つまでは、絶対にこの人を傷つけさせるつもりはない。


 ルリス王女を背負ったまま、俺は夢の空へとダイブする。

 夢の中なのだから、なんでもありにしてほしいのに、こう言うところは融通が効かない。


 全く、悪夢のように感じられて……。


「すごい! 疾いですね、シルヴェスタ様!」

「ちょ、下手に喋ったら舌噛みますよ!!?」


 でも、ちょっぴり俺得な夢な気もした。

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