14.あの蜘蛛を倒す作戦を言おう!お前、壁役な
「で、私たちは何をすればいいのだ?」
譲り受けた魔剣の感触を確かめていると、ランドマークが苛立ちを隠すように、俺へそう問うてきた。
それに続くように、渋々といった表情ではあるが、他2人も俺の指示を待つ。
「あんたら魔法は使えないんだよな? だったら次男と三男は、遠巻きに、最低限の魔力膜を張って立っててくれ。あのバエルはどうも警戒心が強いらしいから、視界の端に映るだけで、相手に選択肢を増やせるはずだ」
「…………次男とは俺のことか!?」
「なら、三男は俺か!?」
「はいはい、元気いっぱいのリアクションをどうも……仲良いな、あんたら」
何かとすぐにいきり立つ癖があるこの2人は、戦力外にした方が良さそうだ。下手に役割を与えて、そこから全体が瓦解するより、ランドマークと俺とで重要な役割は埋めてしまうべきだろう。
それに、新米に過度な役割を任せるとロクなことにならんしな。
ていうか、普通に俺の命も危ない。
「では私は?」
「魔力探知ができるんだろ、範囲は?」
「……大体半径150メートル。20メートル以内なら、相手の魔力の流れから、微細な動きも探知できる」
「まじか……」
「なんだ、私の魔力探知に不服か!?」
「いやいや、逆だ。本当に驚いてる。第三等騎士にしては優秀すぎるくらいだ」
普通は相手の魔力の流れまで感知できない奴も、結構いるんだがな。
ほとんどがセンスに委ねられる技術。その分、習得度や熟達度は個人によってばらつきが激しい。きっとランドマークは才能溢れた男なんだろう。
こいつは、良い意味で予想を裏切られた。
「そこまで出来るなら、少し作戦を変更だ。次男と三男にも攻撃に加わってもらう。ランドマークには一撃目を凌ぐ壁役を任せたい」
「っ!!? 待て、私1人でか!?」
「20メートルもいけるなら、一撃を凌ぐくらいは簡単のはずだ。それに大盾も持ってるみたいだし、訓練したことあるんだろ」
「いや、私はあまり武闘派ではなくてでな……!」
「さっきまでの啖呵はどこにいったよ。あの糸目クソ野郎の思惑通りには成らないんじゃなかったか? あんたは俺が思ってたより優秀な男だ。だから、壁役という重要な仕事を任せたい……頼まれてくれないか?」
俺がそう言って、ランドマークの目をじっと見る。
その間も、ランドマークはずっと顔色の悪いままだった。
初めての死地というやつか。多分、ランドマークもあまり、こういった命をかける場面に遭遇したことがないのかもしれない。戦時中ならともかく、今時の騎士はほとんどがそういう奴か。
まぁ、それを責めるつもりもないが。
「だ、だが、私だけ近づいたとしても、都合よくヘイトを買えるかどうか分からないだろ? もし、私ではなく攻撃役のお前らに向かった場合、どうするつもりだ……!?」
「その心配は大丈夫だろう。さっきから俺たちは、悠長に作戦会議できているしな」
俺がそう言って、剣で蜘蛛を指す。
さっき攻撃態勢に入ってからというもの、前足の鉤爪を振り上げた状態でバエルの動きは止まっている。
まるで本物の蜘蛛である。エネルギーの節約か、はたまた待ち伏せしているつもりなのかは分からないが、少し不気味だな。
「た、確かに」
「俺たちにビビってるんですかね……?」
「そんな訳ねーだろ、三男。たぶん攻撃対象を見極めているんだ。それか、攻撃するまでもないと判断されているか」
調子づきそうになっていた三男坊へ、釘を刺す意味も込めて、俺ははっきりと言った。
あまり楽観視されると、いざという時に困る。
「どういうことだ……?」
俺の釘刺しが効いたのか、ランドマークがそう聞いてきた。
「最初の時といい、その次といい、アイツはずっと俺達の魔力で攻撃対象を決めている。言うなれば、視覚や聴覚は頼ってないってことだ。最初、逆探知されたはずのアンタではなく、カイデンがいる方向から来たのも、お前よりヤツのほうが発する魔力強かったから。その次も、前に出た3人の騎士が戦闘態勢に入った時の魔力が、あの中で一番大きかったんだろう」
だから、魔力を全く感じない俺の侵入には気づけなかった。
俺が鉤爪を蹴ってから、ようやく鉄鍋に反撃したのが良い証拠だ。目に見えないほどのスピードか何かがあるなら、俺が蹴り返す時にもっと良い反応をしていてもいいはず。いや、鉄鍋に攻撃が掠るだけで済まなかったはずだ。
あの蜘蛛は、唯一俺から魔力を感じれた鉄鍋目掛け攻撃をした。だから、鉄鍋だけが吹き飛んだ。
俺が咄嗟に顔を庇ったのもあるが、それなら全てに辻褄が合う。
「ランドマーク、あんたが全力の魔力探知をして、アイツからの攻撃を誘うんだ。そして、その隙を狙い俺と次男、三男で一斉にに仕留めに掛かる。それが今から行うバエル討伐の作戦の内容だ」
俺がそう言うと、ランドマークは頭を抱えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます