第28話 徳丸茉莉奈との撮影 4
気絶したカメラマンの介抱を終え、撮影が再開する。
「青葉くん!そこはカメラ目線で!」
「分かりました!」
等々、富田監督の指示を受けながらPV撮影を行う。
その間、カメラマンは俺のことを直視し続けるため…
「ぐふっ……ちょ、ちょっと休憩を……」
「はーい!休憩入るよー!」
再び気絶しないよう、定期的に休憩をとりながら撮影を行い…
「はうっ!い、今の青葉くんはカッコ良かったです……しかし、何とか耐えました!」
「さすがだよ!その調子で頑張って!」
「はいっ!頑張ります!」
等々、時にはカメラマンが再起不能にならないよう励ましながら撮影を行った。
そんな感じで撮影を行うこと約1時間。
「うん!いい感じ!これで青葉くん単独の撮影は終わるよ!」
冨田監督から撮影終了の言葉をもらい、1時間の休憩となる。
「お疲れ!お兄ちゃん!」
「お疲れ様でした、青葉様」
「ありがとうございます。俺の撮影はどうでしたか?」
俺は真っ先に駆けつけてきた雪菜と鮫島さんに感想を聞く。
「良かったよ!監督の言った通り!」
「そうですね。私も素晴らしい撮影だと思いました」
「良かったぁ」
2人の言葉を聞き、安堵する。
「これからどうするの?」
「そうだな。とりあえずご飯を食べたい」
「では私が近くのコンビニまで食べ物を買ってきます。何か食べたいものはありますか?」
「いえ、皆んなで買いに行きましょう。鮫島さんだけ買いに行ってもらうのは鮫島さんを使ってるような感じがして気分が悪いですから」
「……青葉様がそう仰るのなら」
少し返答に間があったが、鮫島さんは俺の提案を受け入れ、3人でコンビニに行くこととなる。
そして移動を開始すると…
「ちょっと待ちなさい」
と、徳丸さんから呼び止められる。
「私も一緒に行くわ」
「え、徳丸さんも来るの?」
「なによ。私がいたら嫌なの?」
「いや、そういうわけではないが……」
俺が男だからなのか、ものすごく強気な態度だ。
(まぁ嫌いな男と話すとなれば、そんな態度になるか。歳も俺と同じだし)
徳丸さんの態度が気に入らないわけではないので、気にしないことにする。
「じゃあ問題ないわね。もちろん、危害を加えるとかはないから安心して」
「そんなことは心配してませんよ。むしろ俺と行動を共にしてくれることが嬉しいです」
「……なぜ?」
俺の発言に徳丸さんが戸惑う。
「だって俺は徳丸さんと仲良くなりたいので」
心の底から思ったことを口に出し、笑顔を向ける。
「っ!ほんと変わった男ね」
「……?」
何かをボソッと呟くが俺は気にせず口を開く。
「じゃあ徳丸さんも交えて4人で行きましょう」
とのことで、4人でコンビニへ向かうこととなった。
水着から私服へ着替えた後、コンビニへ向かう。
その道中、少しでも徳丸さんとの撮影が良いものになるよう、徳丸さんへ積極的に話しかける。
「徳丸さんは趣味とかあるの?」
「一人旅が趣味ね。何も考えずに旅をするのが」
「あ、そーなんだ。俺、いつかは一人で旅をしたいなーって思ってたから徳丸さんが羨ましいよ。このご時世、男である俺が1人で旅なんてできないと思うけど」
等々、話をしながら歩く。
(良かった。普通に会話してくれる。今日初めて会った時は挨拶しかしてくれなかったからな。しかも素っ気ない態度で話しかけるなオーラも出てた気がするし)
そんなことを思い安堵していると、「ねぇ」と真剣な表情の徳丸さんが話しかけてきた。
「私のこと、怖くないの?」
「……?全く怖くないよ。それより徳丸さんは俺のことが怖くないの?男が嫌いって聞いてたけど」
「……そうね。今のところ怖くないわ。貴方は私の知る男たちとは違うみたいだから」
「そんなことは…………あるな」
この世界の男たちとの違いに心当たりしかない。
「だから貴方のことを知ろうと思ったわ。なぜ、他の男たちとは違うのかを知るために」
「なるほど……」
徳丸さんの知る他の男というのがどんな男かは分からないが、俺のことを知ろうとしてくれたことに嬉しさが込み上げ、思わず笑みを浮かべる。
「な、なによ?」
「あ、いや。ごめん。そう言ってくれて嬉しかったから。だから何でも聞いていいよ。答えれることは答えるから」
前世の記憶がある辺りは話すことはできないが、それ以外のことは全て答えようと思う。
「なら1つだけ教えて。なぜ、貴方は高飛車な態度を取らず、私たち女性に優しいの?」
「うーん、何故と言われてもそれが当たり前だからかな」
こんな答えで良いのかは分からないが、俺は自分の考えを伝える。
「俺は女性を蔑ろにするような男になりたくない。そして女性に頼って生活するような男にもなりたくない。俺は将来、好きになった女性を養い、幸せにできる男を目指しているからな」
これが俺の将来の展望だ。
そう本気で思っているため、堂々と告げる。
「ふふっ。やはり貴方は私の知る男たちとは違うようね」
「っ!」
初めて見せた徳丸さんの笑顔に俺の心臓が“ドキっ!”と跳ねる。
「今日の撮影、一緒に頑張るわよ」
「あ、あぁ」
見惚れてることを誤魔化しながら俺は頷いた。
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