第27話 徳丸茉莉奈との撮影 3
PV撮影が始まる。
「まずはウォータースライダーを楽しんでもらうよ。移動中もカメラにおさめるから、撮られてることを意識してね」
との指示を受け、徳丸さんが動く。
「おぉー。見惚れるほど美しい歩きだよ」
「さすが茉莉奈ちゃん。カメラの位置や角度を頭に入れ、自分が綺麗に映るよう考えてるね」
雪菜の言葉に、近くにいた監督が解説してくれる。
その間も徳丸さんはウォータースライダーまでの距離を美しく歩き、その様子をカメラが撮影している。
「青葉くんには茉莉奈ちゃんのような技量は求めてないから気楽に取り組んでくれたらいいよ」
「ありがとうございます」
監督の言葉に安堵しつつ、徳丸さんの良いところを少しでも取り入れようと目に焼き付ける。
そして徳丸さんがウォータースライダーの入り口に到着する。
この温水プールにあるウォータースライダーはトンネルタイプとなっており、スライダーの中に入ると真っ暗になる。
そのため、滑っている様子を撮ることはできないので、カメラマンたちが出口に集まる。
「じゃあ滑っていいよー!」
カメラマンたちの準備が整ったタイミングで監督が声を上げ、徳丸さんがスライダーの中に入る。
そして1分後、「ざぱーんっ!」という水しぶきとともに徳丸さんがスライダーから飛び出し、水の中へ。
「ぷはっ!なかなか面白いわね」
そんな言葉とともに水面から顔を出した徳丸さん。
(おぉ、浮いとる。胸がぷかぷか浮いとるぞ。しかもちょっと水着がズレてるし……)
その様子を見て、変態的な感想しか出てこない。
「こんな感じでいいですか?」
「そうだね。しっかり撮れてるかは後で確認するけど良さそうだったよ!じゃあ次は……」
そう言ってどんどん指示を出し、徳丸さんが指示通りに動き、撮影をする。
「さすが女優だね。すごくプールに入りたくなるね」
「あぁ。俺もはやく泳ぎたくなるよ」
隣の雪菜と感想を言い合いながら徳丸さんの撮影を見学し、ついに俺の番がやってくる。
「じゃあ次は青葉くんの撮影だよ!」
「分かりましたっ!」
俺は気合を入れるため、カッコ良く上着を脱ぎ、雪菜に投げる。
「わっ、ちょっと!上着着ないでいいの!?」
「あぁ。泳ぐ時邪魔だからな」
ベタっと張り付く感覚が好きではないので雪菜に渡して監督のもとへ。
「監督。俺はどうすれば……って監督?」
「……はっ!あ、青葉くんの身体に見惚れちゃってた!危うく明美先輩から殺されるところだったよ!」
俺の言葉で我に返ったようで、「こほんっ!」と咳払いを挟む。
「元々青葉くんには上着を着た状態で撮影をお願いする予定だったけど……着ない方が受けは良さそうだね。青葉くんも勧んで服を脱いでたし」
目をトロンっとさせた状態でボーっとしている女性スタッフたちを見ながら監督が頷く。
「じゃあ先ずは流れるプールで浮き輪を使ってぷかぷかと浮いてね」
「……?それだけで良いんですか?」
「うん!あ、大きな浮き輪は準備してるからね!」
そう言って監督から浮き輪を受け取る。
「じゃあ行ってらっしゃい!」
「わ、分かりました」
監督の求める事が良く分からなかったが、言われた通り、俺は流れるプールに入り、浮き輪の中にお尻を入れ込む。
そして流れるプールに身を委ねる。
(おぉ。結構楽しいな)
流れに逆らわず、俺はくつろぎながら流れに身を委ねる。
その間、1人の女性がカメラを持ちながらプールサイドを走り、カメラにおさめる。
「カメラマン!もっと青葉くんの上半身が映るように!あ、青葉くんの邪魔にならない程度で近づくのは許可するよ!」
等々、忙しなく指示を出しながら撮影を行うが、始まって1分程度で大きな問題が発生した。
「ぐふっ!あ、青葉くんを直視しすぎて鼻から血が……も、もう限界……」
「監督ー!カメラマンがふらふらしてます!それと血みたいなものがポタポタと垂れてます!」
「マズイっ!一旦中止ー!」
俺は浮き輪からすぐに飛び出して女性カメラマンへ近づく。
そしてカメラを壊さないように女性カメラマンを支える。
「大丈夫ですか!?」
「ひゃぃっ!あ、青葉くん!?」
意識が朦朧としていたのか、俺が近くに来たことには気づかなかったようで、カメラマンが驚く。
「まずは座りましょう。俺が支えますのでゆっくりと腰掛けてください」
「あ、青葉くんの身体が近くに……っ!ぐふっ!」
「ちょっ!」
再び鼻血を出した女性がふらふらしながら俺にもたれかかる。
そのため、その女性に怪我を負わせないよう俺は優しく抱きしめて床に座り、膝枕をする。
「大丈夫ですか?」
「あ、あれ。青葉くんが4人いる……あぁ。ここは天国か……4人の青葉くんに囲まれるなんて幸せ……」
「監督ー!結構ヤバいかもしれません!」
幻覚が見えてるようなので俺はすぐに応援を呼ぶ。
そして駆けつけた女性スタッフたちとともに介抱を手伝う。
俺は忙しなくカメラマンを介抱していたため…
「躊躇なく女性を助けることができる男性。やはり噂通り、彼は私の知ってる男性とは違うようね」
そんなことを呟きながら俺のことを見ている徳丸さんに気づかなかった。
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