第26話 徳丸茉莉奈との撮影 2

 あれから更衣室へ戻り、上着を羽織ってプールサイドへ。

 そして女性スタッフたちへ挨拶を行った後、今回のPV撮影で監督を務める冨田志保さんの元へ挨拶に向かう。


「おはようございます。今日はよろしくお願いします」

「はーい、よろしくね!」


 冨田志保さん。

 綺麗な黒髪をポニーテールに結んだ30代前半の女性で、他のスタッフと同様、水着を着用している。

 胸の膨らみはあまりないが、20代前半と言われても納得してしまうくらい綺麗な女性だ。

 そして30代前半で監督を務めることができるくらい優秀な方だ。


「今日は青葉くんとの撮影ということで、私とても楽しみにしてたんだ!」

「あ、ありがとうございます……」


 “グワっ!”と俺との距離を縮めながら嬉しそうに言う。


「でも、私が青葉くんに手を出すと恐ろしい先輩から首をへし折られてしまうんだ。想像しただけで……ぶるるっ」


 冨田さんが全身を震わせる。


「か、監督である冨田さんを怖がらせる先輩って誰ですか?」

「あれ?聞いてないの?青葉くんの事務所の社長である東條明美先輩だよ」

「は、初耳なんですが……」

「あ、そーなんだ。私は明美先輩からこの業界について色々と学んだからね。怒らせると怖いけど優しくて大好きな先輩なんだ。だから……今日は泣く泣く青葉くんと仲良くなるのを諦めます」


 ガックリしながら落ち込む冨田さん。


(30代で監督を務める冨田さんを指導してるって東條社長って何者?あ、そういえば、豊村さんと一緒に仕事をした時の足立監督も東條社長と縁があったな)


 東條社長は足立監督の後輩にあたるらしく、足立監督の他にも監督として働いている方にたくさんの知り合いがいるようだ。


(しかもテレビのCMを使って男性モデル募集の告知をしてたし、三大名家の鮫島さんを俺のボディーガード役として雇うこともできている……え、マジで東條社長って何者?)


 ふと疑問に思う。

 そんなことを思っていると「おはようございます」という声が響き渡った。


「あ、来たみたいだよ、茉莉奈ちゃんが」


 冨田監督の言葉を聞き声のした方を向くと、完璧なプロポーションの美少女がいた。

 薄紫色の髪を肩の辺りで切り揃えており、豊村さん並みの大きさを誇る巨乳が黒のビキニからこぼれ落ちそうだ。

 そんな姿に俺は見惚れてしまう。


「おはようございます、監督。今日はよろしくお願いします」

「はーい、よろしくねー!」


 まずは冨田監督へ挨拶をした後、俺の側にいる雪菜と鮫島さんにも簡単に挨拶をする。

 そして最後に俺の方を向く。


 布面積の少ない黒ビキニからこぼれ落ちそうな巨乳と、引き締まった身体に視線が吸い込まれそうなところをグッと堪えて、徳丸さんの目を見る。

 目つきの鋭さに少しだけ驚くが、男性嫌いなのでこの鋭さは仕方がない。


「おはよう。今日はよろしく」

「あぁ。おはよう、徳丸さん。こちらこそよろしく」


 素っ気ない態度で俺に挨拶をした後、俺から距離をとる。


「とりあえず挨拶だけしたって感じだね」

「そんな感じだったが、会話してくれるだけありがたい。正直、雪菜たちだけに挨拶をして俺のことは無視するかと思ったからな」


 そう思いひとまず安堵する。


「これならお兄ちゃんの護衛は簡単そうですね」

「そうですね。青葉さんと1番関わる冨田監督と徳丸さんが青葉さんに手を出すことはないので。気を抜くことはできませんが」


 そんな会話を俺の側にいる2人がしている。


「じゃあ、茉莉奈ちゃんも到着したし早速撮影の説明をするよー!」


 とのことで冨田監督から簡単に説明を受ける。


「2人が仲良く遊んでるシーンは数ヶ所のみ。基本的には個別で遊んでるところを撮影するよ」


 俺と一定の距離を保つことができれば2人一緒の撮影は問題ないと、徳丸さんからは了承を得ている。


「まずは茉莉奈ちゃんから」

「分かりました」


 徳丸さんが冨田監督から丁寧に説明を受ける。


「さて、大人気女優の演技だ。しっかりと参考にさせてもらおう」


 こうしてPV撮影が始まった。

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