第24話 亀山結衣菜との撮影を終えて
亀山さんとの撮影を終え、鮫島さんの車で家に帰る。
「撮影お疲れ様でした」
「お兄ちゃんお疲れ!とっても良かったよ!」
「そうか。それを聞いて安心したよ」
終始、俺が女性と話しているだけだったが、撮影内容は問題ないようだ。
「撮影が終わった後、亀山さんと色々と話してたね」
「あぁ。ちょっとな」
先程聞いた過去は簡単に話すべき内容ではないと思い、話した内容は濁す。
(亀山さんの生活を滅茶苦茶にしたVtuber男は大人しくしてるようだが、次亀山さんに何かしてきたら手助けしよう。俺にできることは限られてるとは思うが)
調べたらアレ以来、Vtuberとして活動はしていなかった。
「そういえば、次の仕事は何になりそうですか?」
「はい。次の仕事は温水プールの宣伝PVを考えております」
そう言って詳しく概要を話し出す。
「来週、温水プールを貸し切って宣伝PVの撮影を行います。共演者は女優の徳丸茉莉奈さんです」
「えっ!茉莉奈さんと共演するの!?」
隣に座っていた雪菜が声をあげて驚く。
「だ、大丈夫なんですか!?」
「はい。大きな接触は無いので大丈夫だと判断したらしいです」
「……?」
雪菜が何に驚いているか理解できず首を傾げる。
「大丈夫ってどゆこと?俺の身が危険なの?」
「あ、お兄ちゃんの身は危険じゃ無いよ。むしろ1番安全な共演者だよ」
「……?」
雪菜の発言に余計混乱する。
「そっか。お兄ちゃんは女優に興味なかったから知らないよね。茉莉奈さんって男性嫌いなんだよ」
「へー。珍しいな」
この世界で男性嫌いがいることにビックリだ。
(男性が俳優となることは稀だから女優としても活動できるのか。この世界のドラマって女性しか登場しないドラマばかりだもんな)
実際、この世界のドラマは女優ばかりで構成されており、男性俳優が必要な恋愛ものは皆無と言っていい。
「昔何かあったみたいで男性が極度に嫌いらしいんだ。だからお兄ちゃんの身は絶対安全だよ」
「なので事務所側も引き受けることにしました」
「な、なるほど」
今回の撮影は俺と接触することはほとんどないらしく、徳丸さん側も了承したようだ。
「あとは青葉さん次第です。引き受けてみますか?」
「そうですね。やってみたいと思います」
身の安全が確定しているのなら引き受けない理由はない。
「でも男である俺との共演をよく引き受けてくれましたね」
「プール側は何としてでも青葉さんをPVに使いたかったようで、安全な共演者である徳丸さんに好条件でお願いしたようです。その結果、引き受けてくれたと聞いてます」
「まぁ、それくらいしないと引き受けませんよね」
「はい。なので青葉さんとは本当に接触しないと思います」
「分かりました。それなら次回の撮影は安心ですね」
「……はぁ、そう言うと思ったよ」
俺が安堵していると雪菜がため息をつく。
「徳丸さんは大丈夫でも撮影スタッフたちは危ないんだからね?」
「あ、そっか」
「ホント、お兄ちゃんは危機感なさすぎ……」
「私たちがしっかりしなければなりませんね」
「………ホントすみません」
そんな会話をしながら家に帰った。
〜亀山結衣菜視点〜
撮影を終えて帰宅した私は手早く着替えてベッドにダイブする。
「青葉さん……」
先程から青葉さんのことを考えてしまい全身が熱くなる。
「これが恋というものでしょうね」
そう呟いた私はとある光景を思い出す。
『許せませんね、その男。一発殴りたいくらいですよ』
そう言ってくれた青葉さんの顔が脳裏から離れない。
「優香さんは青葉さんのことをどう思っているのでしょうか?」
そう思い、私は今日連絡先を交換した優香さんへメッセージを送る。
『今日はお疲れ様』的なメッセージを送るとすぐに返信が返ってきた。
その後、何度かメッセージのやり取りを行った後、私たちは電話で少し駄弁ることとなった。
そしてタイミングを見て本題へ入る。
『優香さんは青葉さんのこと、異性としてどう思ってますか?』
『い、異性として……ですか?』
『はい。将来、結婚やエッチなことをしたいと思ってますか?』
回りくどいことは辞めてストレートに聞く。
『………それはありません。私にとって青葉さんは護衛対象ですから。それに私みたいな無愛想な女を青葉さんは好きになってくれませんよ』
返答までに間があったところは気になるが、あくまで青葉さんのことを護衛対象として見ているようだ。
『愛想がないのは頑張って改善してください。スタイルやルックスは私と変わらないくらい魅力的ですから』
そうは言うものの納得してくれない優香さん。
(毎日鏡を見てるのかな?)
そう思えるくらい魅力的なルックスとスタイルをしているのに、自分自身の魅力に気づいていない。
(って優香さんの気持ちは今の本題ではありません)
私は無理やり話をもとに戻す。
『優香さんに質問があります』
『……何でしょうか?』
『護衛した相手を好きになってもいいのでしょうか?』
『ま、まさか結衣菜さん。青葉さんに恋を……?』
『はい。私は青葉さんのことが好きになりました。青葉さんに今すぐ会いたいくらいです』
『……っ!』
優香さんが息を呑む。
『優香さん。護衛対象だった男性を好きになってもいいのでしょうか?』
同じ質問を再び行う。
『……私には経験がないので分かりません。ですが、鮫島家は護衛対象の方と結婚するケースは多くあります。なので問題ないと思います。それに結衣菜さんはボディーガードを引退されてます。今までのケースに縛られる必要はないと思いますよ』
『……そうですね』
とても嬉しい返答が返ってきた。
『背中を押していただきありがとうございます。もう一度、青葉さんとお仕事ができるよう事務所側に相談してみます』
『それがいいと思います。またお会いできる日を楽しみにしてますよ』
『はいっ!次に会う時は優香さんが青葉さんの彼女になってると私は嬉しいです!』
『わっ、私が青葉さんとお付き合いする未来はあり得ませんので期待しても無駄ですよ』
『ふふっ。それはどうでしょうか?』
『絶対あり得ませんよ。私みたいな無愛想な女を……』
『そんなことないと思うのですが……』
そんな感じで、もう一度青葉さんと共演できるよう働きかけることを決め、私は優香さんとの会話に花を咲かせた。
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