第20話 亀山結衣菜との撮影 4
撮影を再開する。
あれから俺の想いが伝わったのか、幾分か表情の固さが取れ、地域の方たちと触れ合っている時に笑顔が見られるようになった。
対する俺は…
「肩と肩が触れそうなくらい近くまで来たけど本当に女の子が怖くないみたいだね!」
「うんうん、そうみたい!あ、私も青葉くんと一緒に『雪だるま』という店を探すの手伝うよ!」
「怖くはないけど2人は近すぎです!」
等々、話しかけた女性たちとの距離感に困りながらも撮影を続けた。
その間、亀山さんは俺のそばから離れず見守っているだけで、会話を中断するような行動はなかった。
(まぁ、女性たちのすぐ後ろにいるから何かあったらすぐに対処はできるんだろうが)
そんな感じで撮影が続き…
「え、『雪だるま』の場所を知ってるんですか!?」
「もちろんです!」
俺たちの目的地である『雪だるま』の場所を知る女性と出会う。
「だって私の実家ですから!」
しかも実家が『雪だるま』の女性に。
「場所を教えていただいてもよろしいですか?」
「はいっ!私も今から家に帰る予定でしたから!」
「ありがとうございます!」
俺と亀山さんは頭を下げる。
こうして『雪だるま』が実家の女性と3人で移動した。
女性を交えた3人で移動する。
「私は葉山美琴です!よろしくお願いします!」
可愛い笑顔を向けながら自己紹介をする。
眩しいくらい綺麗な金髪を肩のあたりで切り揃えた美少女で、雪菜たちに負けないくらい可愛い女の子だ。
俺たちも葉山さんに倣い、簡単に自己紹介を行い、雑談しながら移動する。
「ここから二駅先の駅で降りて5分くらい歩いたところにあります。なので名古屋駅から電車に乗ります」
とのことで再び名古屋駅に戻る。
その間、色々な雑談を行う。
「私は今高校2年生なので青葉さんは先輩ですね!青葉先輩って呼んでもいいですか?」
「い、いいけど……どうして?」
「だって青葉先輩って呼ばれる方がポイント高いかなーって!」
そう言ってウインクしながら舌を少しだけ出す。
(1つ1つの仕草が可愛いんだけど!)
身体的接触は一切なく隙あれば俺の身体に触ろうとする気配もないが、可愛い容姿を全面に押し出して俺の心に攻撃している。
「青葉先輩って本当に女の子が怖くないんですね。確か、女の子に触るのも問題ないとか」
「そうだな。手や肩くらいなら問題ないよ」
前世の男性なら誰でもそれくらいできるが、この世界の男たちの大半は女性の手すら触れることができない。
「そうなんですね……」
そこまで呟いた葉山さんが「はわわっ!」と床につまづき、隣を歩いてた俺の方に倒れ込む。
「あっ、危な……!」
「それは許されませんよ」
俺の方に倒れてきた葉山さんを受け止めようとしたが、一瞬で亀山さんの手が俺と葉山さんの間に入り、葉山さんが俺に倒れ込むのを防いでくれる。
「むぅ」
「残念ですね。私がいる限りその作戦は成功しません」
頬を膨らませて睨む葉山さんに対し、淡々と告げる亀山さん。
「だ、大丈夫?怪我とかしてない?」
俺はすぐに葉山さんに声をかける。
転ぶ演技だったかもしれないが、本当に転びかけたかもしれない。
そう思い声をかけたが、何故か「あ、青葉先輩は優しいですね」と呟かれる。
そして支えてくれた亀山さんから離れ、両足でしっかりと立つ。
その様子を見て怪我はなさそうだと安堵する。
「ご迷惑をおかけしました」
“ペコリっ!”と俺や亀山さんに頭を下げる。
「気にしなくていいよ。それより葉山さんが無事で良かった」
俺は笑顔で怪我が無かったことを喜ぶ。
「はぅっ!」
すると突然、心臓部あたりを抑え始める。
「ど、どしたの!?」
「だ、大丈夫です。青葉先輩の顔がカッコ良すぎただけですので……」
「そ、そうか」
これ以上は何も言わず、今度は亀山さんを見る。
「葉山さんを支えていただきありがとうございます」
「いえ。これはボディーガードとして当然の務めですから。それより……今度はしっかりと守ることができました……」
そう呟き、安堵の表情をする亀山さん。
まるで自分に言い聞かせるように呟く様子を見て、過去に似たようなケースを経験したのだろうと思う。
(「今度はしっかりと守ることができた」って言ってたな)
そしてその言葉から前回は失敗したことが理解できる。
(もしかしたら失敗経験が今日の緊張に繋がってるのかもしれない)
そう思い、俺は今回の成功を褒めてリラックスしてもらうことを思いつく。
「亀山さんのおかげで俺や葉山さんは無事です。もちろん、葉山さんのことが怖くなったとかもありません。なので素晴らしい結果です。この調子でボディーガードをお願いしますね」
「は、はいっ!」
パーっと笑顔を見せながら応える亀山さんを見て俺も安堵した。
【次話は亀山さん視点となります】
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