3章 初仕事編

第11話 撮影現場へ

【3章開始】


 CM撮影の依頼を受けた数日後。

 豊村さんとの撮影日を迎えた。


「今日の撮影はボウリングのCMです」


 迎えにきてくれた鮫島さんが今回の撮影内容を話してくれる。

 現在ボウリングの人気が低迷しており、潰れるボウリング場が増えている現状を何とかするため、ボウリング協会という団体が依頼してきた。


「詳しくは撮影監督が話してくださると思います」

「分かりました」

「お兄ちゃんと花凛ちゃんのCMかー!すごく楽しみだよ!あ、もちろん、お兄ちゃんのボディーガードを怠るつもりはないからね!」

「あぁ、頼りにしてるよ」

「任せてっ!」


 そんな会話をしながら撮影現場に向かった。




 撮影現場であるボウリング場に到着する。

 ちなみにボウリング場は貸し切りだ。


「見てっ!青葉くんよ!」

「きゃぁぁーっ!本物の青葉様っ!」

「やっぱりカッコいいっ!」


 撮影現場であるボウリング場に入った瞬間、女性スタッフたちの視線を集める。


「さすがお兄ちゃん!すごい人気だね!」

「ありがたい話だな」


 みんなの反応に笑みをこぼしながら雪菜に返答する。


「青葉くんに話しかけて良いかな?」

「ダメよ。話しかけただけで逃げ出す男の子は多いんだから。遠くから眺めるだけにしましょ」


 ここでも写真集を撮影する時のように、話しかけてくる女性スタッフはおらず、遠目から俺たちを見ているだけだった。


(こんな雰囲気じゃ撮影しにくいよな)


 そう思い、俺は周囲の女性スタッフへ手を振ってみる。


「えっ!私を見て手を振ってくれたんだけど!」

「違うわよ!今のは絶対私よ!」

「青葉くーん!もう一回手を振ってー!」

「初めて男の子から手を振ってくれた!もしかして青葉くんは女が怖くないのかな!?」


 俺が手を振っただけで周囲の女性スタッフが盛り上がる。


「お兄ちゃん。いくら女性恐怖症が治ったからといって愛嬌を振り撒くのは良くないよ?」

「雪菜様の言う通りです。青葉様が襲われるかもしれませんので」


 そんな俺を見て雪菜と鮫島さんが注意喚起してくる。


「だ、大丈夫ですよ。これくらいで襲われることなんてありませんから」

「そう思ってるのはお兄ちゃんだけだよ。まぁ、言っても無駄だとは思うけど」

「そうですね。青葉様は女性に対してとてもお優しいので」


 雪菜が諦めながら言った言葉に鮫島さんが少し笑いながら同意する。


 その時…


「ふぎゃっ!」


 近くを歩いていた女性スタッフが壁に激突し、頭を抑えてしゃがむ。


「あの女性、お兄ちゃんに見惚れて壁に激突したね……ってお兄ちゃんっ!?」


 雪菜の驚く声が聞こえる中、俺はすぐさま壁に激突した女性のもとへ駆け寄る。


「大丈夫ですか?怪我はしてませんか?」

「あ、はい。少し額が痛いけど大丈夫……って青葉くんっ!?」


 声をかけてきた人が俺であることに気づいた女性が驚きの声を出す。


「見たところ血が出てる様子はありませんね。1人で立てますか?立てないようなら俺の手を使ってください」


 そう言って俺は女性スタッフへ手を差し伸べる。


「あ、ありがとうございます……」


 少し頬を染めながら俺の手を取った女性がゆっくりと立ち上がる。


「いえいえ。次からはよそ見をせず歩いてくださいね」


 そして立ち上がった女性へ笑顔で告げる。


「はぅぅ〜っ」

「あ、ちょっ!」


 その瞬間、俺の方へ倒れたため、女性が怪我をしないよう身体で抱き止める。


「きゃぁぁっ!青葉くんが女を抱きしめてるっ!」

「羨ましいっ!あの娘っ!」

「女性スタッフに手を差し伸べ、抱きしめても恐怖する様子なし!青葉くんって女性が怖くない!?」

「神対応すぎるっ!私も青葉くんに抱きしめられたいっ!」


 俺の対応を見て、周囲の女性スタッフたちが先ほど以上に盛り上がる。


「さ、鮫島さーん」

「青葉様、写真集の撮影の時も思いましたが積極的に女性スタッフと関わりすぎです。私は自重した方が良いと思うのですが……」

「勢いよくぶつかった女性が心配で……」


 近くまで来た鮫島さんへ抱きしめている女性スタッフを渡す。


「すみません、また介抱の方お願いします」

「これくらい問題はありません。ですが……さすが青葉様の笑顔ですね」

「うんうん。お兄ちゃんってイケメンだからね。笑顔を至近距離で見たら気絶しちゃうのも無理ないよ」

「そうですね。私も青葉様の笑顔には気絶しそうになりますから」


 そんなことを言いながら、鮫島さんが慣れた手つきで女性の介抱を行ってくれた。

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