第12話 豊村花凛との出会い
鮫島さんが慣れた手つきで女性の介抱を行っていると、遠くから「雪菜ちゃーんっ!」という声が聞こえてきた。
「あっ!花凛ちゃんっ!」
雪菜が豊村さんの声に気付き、豊村さんの方へ駆け寄る。
「久しぶりっ!花凛ちゃん!」
「久しぶりだね!最近学校に行けてないから雪菜ちゃんに全然会えなくて!」
そう言って美少女2人が笑顔で話している。
そんな2人のもとへ俺も駆け寄り声をかける。
「俺が雪菜の兄であることを豊村さんに伝えたのか?」
「うんっ!電話で伝えたんだ!すっごくビックリしてたけど!」
「当たり前だよ!今、最も有名な芸能人と言っても過言ではない青葉さんがお兄さんなんて驚くに決まってるよ!私、雪菜ちゃんが嘘を言ってると思ったくらいだもん!」
当然と言えば当然だが、かなり驚かれたようで、信じてくれるために俺とのツーショット写真を送ったらしい。
(だから数日前、突然「ツーショット写真撮ろっ!」とか言われたのか)
そんなことを思いつつ豊村さんを見る。
雪菜と同級生の高校2年生で、ソロアイドルとして活躍している美少女。
ピンク色の髪を右側に結ったサイドテールと、高校2年生とは思えないほどの大きな胸が特徴的だ。
「雪菜の兄の森本青葉だ。今日はよろしく、豊村さん」
「は、はいっ!よろしくお願いします!」
“ぺこり”と可愛らしく頭を下げる豊村さん。
「ほ、ホントに女である私のことが怖くないんだ」
「そうだよー。まぁ、私たち女性に恐怖しなくなったのはここ最近だけどね」
「えっ!そうなの!?」
「うんっ!昔のお兄ちゃんは私やお母さんとも距離を置くくらいの女性恐怖症だったんだ」
「そ、そうなんだ。信じられないよ」
「昔のままじゃ悪いと思ってな。頑張って改善したんだ」
「そのおかげで今はお兄ちゃんといっぱいお話しできるんだ!」
「ふふっ、だからここ最近雪菜ちゃんと電話するをすると青葉さんの話が多かったんだ」
「そっ、それは今、言わなくていいでしょ!」
そう言って雪菜が“ポカポカ”と豊村さんを叩く。
その様子を微笑ましく思いつつ、俺は口を開く。
「2人とも仲がいいな」
「そうですね。雪菜ちゃんとは中学の頃からの友達ですから。昔、私がアイドル業で悩んでた時は優しく励ましてくれたんですよ」
「そうなのか。偉いぞ、雪菜」
「えへへ〜」
俺の褒め言葉に雪菜が嬉しそうに微笑む。
そんな俺たちを見て、今度は豊村さんが笑みをこぼす。
「ふふっ、2人も仲がいいですね。兄妹って仲が良くないイメージだったので驚きました」
「可愛い妹だからな。仲良くしない理由なんかないよ」
「も、もうっ!お兄ちゃんたらっ!」
そう言って口では抗議するが、顔を赤くして緩み切った表情をしている。
「そ、それより花凛ちゃん!生のお兄ちゃんはどうだった!?」
「そうだね。写真で見るよりもカッコいいよ。正直、青葉さん以上にカッコいい人はいないくらいだね」
「でしょ!自慢のお兄ちゃんだからね!」
豊村さんの返答を聞き、俺以上に喜んでいる雪菜。
「そんなに褒めなくていいぞ。それに豊村さんだって写真で見るよりも生で見る方が圧倒的に可愛いよ。スタイルも良いから見惚れてしまいそうだ」
「あっ、ありがとうございます……」
“ぼふっ!”と顔を一瞬で真っ赤にする豊村さん。
「ふふっ、良かったね、花凛ちゃん」
「うぅ〜」
真っ赤になって照れている豊村さんへ雪菜が歩み寄る。
そんな感じで自己紹介していると…
「おはよう、青葉くん。花凛さん」
と、1人の女性が話しかけてくる。
「おはようございます、足立さん。今日はよろしくお願いします」
「こちらこそ仕事の依頼を引き受けてくれてありがとう」
そう言って挨拶してくれたのは今回のCM撮影で監督を務める
40代前半の女性で東條社長とは交流のある方だ。
「東條社長からお話しは聞いてます。何でも昔から交流があるとか」
「学校では私の後輩でね。今でも交流があるのよ」
そのため足立さんの人柄を信頼した東條社長が今回のCM撮影は男の俺が参加しても問題ないと判断したようだ。
「それにしても本当に女性に対しての恐怖心がないんだ」
「そうですね。全くと言っていいほど怖くありませんよ。もちろん、刃物を持った女性とかは恐怖しますが」
「それは恐怖しない方がおかしいよ。なら撮影はスムーズにできそうだね。今回の撮影は女性スタッフしかいないから心配してたんだ」
この世界で男性が働くのは稀なケースなので余程のことがない限り、スタッフに男性がいることはないだろう。
「花凛さんとの自己紹介も終わったと思うから、早速今から行う撮影内容を話すよ」
とのことでCM撮影の内容を話し始めた。
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