第10話 仕事の依頼
俺の写真集が発売された翌日。
東條社長に呼ばれた俺は鮫島さんの運転で事務所に出向いていた。
ちなみにボディーガードとして雪菜も同行している。
「今日は来てくれてありがとう。さっそくだが本題へ移る」
との前置きをした社長が話し始める。
「まず、昨日発売された写真集は全て完売したと出版社から連絡があった。おめでとう」
「ありがとうございます!」
写真集が完売するなんてことは滅多にないので素直に嬉しく思う。
「そのため増刷を行う予定だ。部数は検討中だが、また再販する時は連絡する」
「よろしくお願いします」
俺は社長に頭を下げてお願いする。
「じゃあ次の話題に移るぞ」
そう言って社長が話しを続ける。
「現在、青葉くんに仕事の依頼が200件以上来ている」
「……え?」
「1日で200件以上だ。多分、これからもっと増えるだろう」
あり得ない数字を聞き、耳を疑う。
「200件以上はさすがに冗談ですよね?」
「いやマジだ。小さい仕事から大きな仕事まで合計で200件以上だ」
詳しく聞くと地域の町おこしイベントの参加やCMの出演依頼、バラエティー番組の出演依頼など、さまざまなな仕事が来ているらしい。
「これらの仕事全て引き受けるわけにはいかないから何個か厳選して依頼を受けることにするんだが、どれがいいか最終的には青葉くんに選んでもらおうと思ってな。鮫島、資料を」
「はい」
社長の発言を聞き、鮫島さんが俺に何枚もの紙を手渡す。
「200件以上来た仕事の中から私と鮫島が厳選した仕事を一覧にした。これらは芸能界に慣れてない青葉くんでもできると思った仕事だ」
もらった紙は丁寧にまとめられており、どのような仕事内容か一目でわかるようになっていた。
「えーっとCM撮影に旅番組、そしてトーク番組の3つですね」
「トーク番組はハードルが高いと思うが、この番組は司会者が上手くゲストたちに話を振ってくれるから、変なデビューにはならないはずだ。他の2つもキャストが素晴らしいから選出した」
「なるほど。雪菜はどれを引き受けた方がいいと思う?」
「うーん……まずはCM撮影からでいいと思うよ。旅番組やトーク番組って知名度が高くないと収録しにくいと思うし。それにこのCMで共演する豊村花凛ちゃんって私の友達で悪い子じゃないのは保証できるからね。CM撮影はアリだと思うよ」
「わかった。ならCM撮影を引き受けてみるよ」
雪菜との話し合いの結果、豊村さんという女の子とのCM撮影を引き受けることにした。
「CM撮影か。了解だ。すぐに先方の方に連絡しよう」
俺の返事を聞いて東條社長が動き出す。
「豊村花凛さんってどんな子なんだ?雪菜の友達なんだろ?」
「うん!私と同じ学校に通ってる同級生でソロアイドルとして活動してる女の子だよ!歌がすっごく上手くて良い曲を何曲も生み出してるんだ!」
詳しく聞くと雪菜と同い年の高校2年生で、雪菜と豊村さんは中学の頃から友達らしい。
現在はアイドル活動が忙しくて会うことは少ないが、学校に登校した時は色々とお話してるらしい。
「もしかして俺って豊村さんと会ったことある?」
「うーん、それはないかな。昔のお兄ちゃんって女性恐怖症がすごかったから」
「確かに。ちなみにどんな女の子だ?」
「優しくてめっちゃ可愛い女の子だよ!えーっと……この娘!」
雪菜からスマホを渡された俺は画面を見る。
そこにはピンク色の髪をサイドテールに結んだ美少女がいた。
「この娘か。この娘なら街の看板やテレビCMで何度も見かけるな」
「今1番人気のあるアイドルと言っても過言ではないからね!」
「へー、そうなのか。なら豊村さんの歌をいくつか聞いてみるか」
「あ、それならオススメがあるんだ!」
そんな会話を雪菜とする。
すると電話を終えた社長が話しかけてきた。
「先方と連絡がついたぞ。日程調整含めて詳しく話し合っておくから仕事できない日だけ教えてくれ」
「分かりました」
俺は社長に予定のある日を伝える。
「了解した。他にもどんどん仕事を入れる予定だから、これから忙しくなるぞ」
「望むところです!」
俺は元気に返事をする。
(ここからだ。ようやくスタートラインに立てたぞ。『モテモテになる』という夢を叶えるため、これから頑張るぞ!)
そう心の中で決意した。
【2章完結】
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