第9話 写真集の発売
写真集を撮影してから1ヶ月が経過する。
その間、面白くもない男子校へ毎日通い、すれ違う女性たちから癒してもらっていた。
「ついに明日、お兄ちゃんの写真集が発売されるね!」
「あぁ。昨日鮫島さんから届いた写真集を見たけど良い出来だと思ったぞ」
「うんうん!私も見たけどお兄ちゃんの写真集は凄かったよ!妹の私でさえあと3冊は欲しいと思ったからね!」
届いた写真集は俺には必要なかったため雪菜にプレゼントした。
俺の写真集なんかもらっても嬉しくないとは思ったが、飛び跳ねながら喜んでくれた。
「俺は前評判とか一切ない無名のモデルだからな。どれだけの人が買ってくれるだろうか」
「その辺は大丈夫だよ!そもそも男性のモデルなんて少ないからね!」
この世界の男性は基本的に働かない。
そのため男性のモデルは少なく、東條社長曰く、男性のモデルは日本の中だと俺しかいないらしい。
よって今回の写真集はかなり売れると社長たちは見込んでいるようだ。
「さてどーなるか。売り切れまではいかなくてもいいから、赤字にはしないでくれ」
そう願いながら発売日を迎えた。
発売日となる。
コンビニでは深夜0時から発売しているため、朝起きてすぐに売れ行きを確認することができる。
「ふぁ〜、おはよ〜」
「お兄ちゃんっ!大変だよ!」
「うぉっ!ど、どうした!雪菜!?」
あくびをしながらリビングに入った俺に雪菜が大慌てで駆け寄る。
「すごいことになってるよ!お兄ちゃんの写真集!」
そう言いいながらスマホを差し出されたので俺は雪菜からスマホをもらい画面を見る。
そこには…
〈何気なく立ち寄ったコンビニに売ってた森本青葉くんの写真集、マジ神っ!〉
〈青葉くんカッコ良すぎっ!表紙見ただけで購入を決めた!そして買って損はないっ!〉
〈もう青葉様無しでは生きられない身体に……はふぅ……〉
〈青葉くんの写真集を眺めてたらいつの間にか朝になってたんだけど!イケメン過ぎていつまでも見てられる!〉
等々、SNSでは絶賛の嵐だった。
「おぉー、ここまで反響があるのか。嬉しいな」
「すごいよね!もうコンビニでは手に入らないらしいよ!」
現在の時刻が朝7時なので約7時間で完売続出となったようだ。
「なんでこんなに売れてるんだ?」
「やっぱりお兄ちゃんがカッコ良いからね!表紙のお兄ちゃんを見て買った女性たちが大満足したみたいでSNSで宣伝したんだ!」
その言葉通り、コメントの大半が〈絶対買った方が良い!〉とオススメしていた。
「おかげでお兄ちゃんの名前がトレンド1位だよ!」
「ホントだ。こりゃすごいな」
俺は自分のスマホでトレンドを調べると俺の名前が1位だった。
「だからこれからはより一層、外出する時は気をつけてね。お兄ちゃんのことは私が守るけど、万が一のことがあるかもしれないから……」
すると突然、顔を俯かせて心配そうな声色で雪菜が言う。
そんな雪菜を見て、俺は雪菜の頭に手を乗せる。
「お兄ちゃん……?」
「心配してくれてありがとう。でも俺は女性に恐怖することなんてないから安心して」
さすがにナイフ等の凶器を持ってたら恐怖するが、そんなことはないと思う。
「それに雪菜が側にいてくれるんだ。妹の雪菜に守られるのは兄として恥ずかしいが、頼りにしてるよ」
少しでも雪菜の不安が取り除けるよう、優しい笑顔で雪菜の頭を撫でる。
「う、うんっ!任せて!」
俺の言葉を聞いて顔を上げた雪菜が、頬を染めながら元気いっぱいに答える。
そんな雪菜を可愛く思い、俺は撫でながら感謝を伝えた。
「ほんと雪菜が妹で良かったよ」
「私もカッコ良くて優しいお兄ちゃんがお兄ちゃんで良かったよ!」
そう言って可愛い笑みを向けてくれた。
〜西沢ヒロミ視点〜
私はとある出版社で社長を務めており、芸能プロダクション『向日葵』で社長を務める東條明美とは小さい頃からの幼馴染。
その縁あって今回、森本青葉という男性の写真集を販売することとなった。
「撮られた写真を見て売れるとは思ったけど……これは凄すぎるわ」
そこまで大きな出版社ではないため、普段電話が鳴ることなど多くはないのだが…
“プルルルルっ!”
「西沢社長っ!電話が鳴り止みません!」
「電話対応の人、増やせませんか!?」
等々、朝から鳴りっぱなしだ。
理由は言わずもがな本日発売された森本青葉の写真集。
SNSでは絶賛の嵐となっており、発売から1時間も経たず、完売したコンビニまである。
「今の状況はどうなってるの?」
「はいっ!12時の現在の状況を報告させていただきます!」
社員の1人が私に報告してくれる。
「0時から発売しているコンビニでは入手不可能。10時から開店するTSU⚪︎AYAなどの本屋でも完売続出となっております。売ってる店を探す方が難しいようです」
「もう全ての店が完売してると見て良さそうね」
そのことに嬉しさを感じると同時に『もう少し増刷しとけば良かった』と後悔もする。
「男性の写真集なんて久しぶりに発売されたので、興味本位に購入された方もいらっしゃると思います。ですが今回の売り切れ続出の要因はやはり…」
「青葉くんのルックスよね」
「はい。実際、SNSでも〈イケメンすぎて死ねる〉と言ったコメントをたくさん見ました」
「ウチの社員も青葉くんの写真にメロメロだったからね」
そのおかげで社員全員が青葉くんのファンとなり、全員写真集を3部以上は購入している。
「引き続き売り上げ状況の確認をお願いするわ」
「分かりました!」
一礼したのち、報告してくれた社員が持ち場に戻る。
「これは売り上げが楽しみね」
そう呟きながら、私も仕事を再開した。
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