第7話 写真集の撮影 4

 鮫島さんの笑顔を見て顔が赤くなった俺は、バレないよう急いで部屋に入る。

 そして心を落ち着かせながら指示通りの服に着替える。

 最初はシンプルな服を着るようで、俺は白のTシャツに黒のジャケットを羽織り、紺色のジーパンを履く。

 そしてアクセサリーを身につけて髪型を整える。


「スタッフが用意しただけあるな。すごく似合ってるんじゃないか?」


 俺は鏡の前に立って自分の姿を確認し、部屋から出る。

 そして部屋の前で待っていた雪菜と鮫島さんへ問いかける。


「ど、どうですか?似合ってると良いのですが……」

「「………」」


 俺は不安そうな声で問いかけるが、なぜか2人からの返答がない。

 そのため2人をよく見ると、2人とも顔を赤くして“トロン”とした目で俺のことを見ていた。


「「か、かっこいい……」」

「あ、ありがとうございます」


 どうやら2人とも見惚れていたようで、俺の顔を見ながら呟いた。


「……はっ!危ないっ!お兄ちゃんを変な目で見るところだった!」


 血の繋がった妹ということで復活が早く、鮫島さんより一足はやく通常運転に戻る雪菜。


「お兄ちゃん、似合いすぎだよ!もしかして似合う服ばっかり用意されてるの!?」

「見たところ俺が普段着ない服ばかり用意されてた。似合うか分からないが多分、今みたいに似合ってるだろう」

「なるほどっ!お兄ちゃんの私服姿なら見慣れてると思ったから油断してたよ!まさか普段着ない服を着るとは!」


 見慣れているといっても女性恐怖症の俺が外出することはほとんどなかったため、私服を着る機会もほとんどない。

 見慣れてるといっても他の女性より耐性があるってところだろう。


「それで鮫島さんは……」

「あー、戻ってこないねぇ」


 鮫島さんの前に立ってから1分程度経過しているが、未だに通常運転に戻らない。


「おーい、鮫島さーん」

「……はっ!」


 鮫島さんの目の前で手をブンブンさせると、ようやく復活する。


「良かった、戻ってこれて」

「す、すみません。お見苦しいところをお見せしました」


 そう言って頭を下げる鮫島さん。


(鮫島さんも見惚れさせることができるとか、俺すごすぎるだろ。イケメンに産んでくれてありがとう、父さん。母さん)


 心の底から父と母に感謝する。


「こほんっ!では急いで撮影現場に向かいましょう。社長たちもお待ちしておりますので」


 とのことで俺たちは撮影現場に向かう。


 そして現場入りすると…


「きゃぁぁっ!カッコいいっ!」

「イケメンすぎるっ!近くでイケメンを見ることができるとか、この職場に入って良かったぁー!」

「男の子を凝視すると普通は逃げられるからね!でも青葉くんは逃げないっ!いつまでも見ていいんだよ!」

「か、カッコ良すぎて直視できない……はぅぅ〜……」

「ぐふっ!やべっ、鼻血が止まらん……」


 等々、一斉に女性スタッフが盛り上がった。


「みなさん、ありがとうございます」


 その言葉を聞いて嬉しくなった俺は、スタッフたちへ笑顔で感謝を伝える。


「「「「きゅぅぅっ!」」」」


 “パタンっ”


「おぉ。今ので女性スタッフの3/4は倒れたね」

「青葉様。これ以上減ってしまうと撮影ができなくなりますので控えていただけると嬉しいです」

「す、すみません」


 気絶させようと狙ったわけではないが、これ以上減ると本気で困るのでこの辺りで自重する。


「青葉くんが到着次第撮影を始める予定だったが、この状況で撮影は無理だな。スタッフが少なすぎる」

「ほんとすみません」


 こんな事態になるとは思わなかったので素直に謝る。

 その後、倒れたスタッフの介抱にかなり時間を要した。




「では撮影を始めるぞ」

「よろしくお願いします」


 社長やスタッフたちに向けて頭を下げる。


「優しいっ!青葉くん、超優しいよ!」

「お婿さんにするなら青葉くんしかいないっ!」

「礼儀正しくてカッコいい!何より優しいとか完璧すぎる!」

「少女漫画に出てくる理想の男子そのものね!」

「彼女とかいるのかな!?10番目でもいいから彼女にしてほしいよっ!」


 頭を下げて挨拶しただけでこの反応だ。


(マジでこの世界の男子たち、どんな風に女性と接してきたんだよ)


 本気でそう思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る