第6話 写真集の撮影 3
鮫島さんがお手洗いから戻ってくるまで、女性スタッフたちと談笑する。
俺の隣に雪菜がいる点と撮影準備をしている途中ということで、今のところスタッフたちとは一言二言話す程度で襲われる気配はない。
(よし、だいぶ女性との会話に慣れてきたぞ)
前世では女性と関わることがほとんどなかったため、女性との会話に慣れていなかったが、今では問題なく話せるようになった。
「すみません。戻るのが遅くなってしまいました」
俺が女性スタッフと話していると、頬をほんの少し赤く染めた鮫島さんが戻ってくる。
「気にしなくていいですよ。では社長のところへ行きましょうか」
鮫島さんにそう言った俺は、先程まで談笑していた女性スタッフへ謝る。
「すみません。今から東條社長のもとへ向かいます。続きは後ほどしましょうか」
「えっ!また私とお話ししてくれるんですか!?」
「もちろんです。貴女とのお話しはとても楽しかったので」
「で、では!仕事が終わった後、私と一緒にホテルで……」
「「それはダメです!」」
女性スタッフの発言を遮るように雪菜と鮫島さんの声が被る。
「じょ、冗談ですよ。あはは……」
「………」
(冗談じゃなくマジで誘ってたな。多分、他のスタッフも心の中では……ってそれは自意識過剰すぎか)
さすがに話しかけてきたスタッフ全員が隙あれば襲おうと思ってたなんてことはないだろう。
「また話しかけますので、その時も今みたいに話しましょうねー!」
雪菜と鮫島さんの睨みに女性スタッフが走り去る。
「だから言ったでしょ?お兄ちゃんは女性スタッフと関わらない方がいいって」
「女性は皆んな獣です。特に青葉様のようなカッコいい男性は標的にされやすいので気をつけてくださいね」
「わ、わかりました」
謎の迫力を2人から感じ、頷くことしかできない。
(まぁ、女性スタッフと関わるのは辞めないけどね)
俺の夢はモテモテになることなので、女性スタッフから話しかけられるこの状況は大変喜ばしい。
そんなことを思いつつ東條社長のもとへ向かう。
「おはよう。青葉くん」
「おはようございます、社長。今日はよろしくお願いします」
俺は社長に頭を下げて挨拶をする。
ちなみに社長の口調が面接した時と変わっているのは、俺がお願いしたから。
社長という立場の人間から敬語を使われるのは変な感じがしたからだ。
「スタッフたちから何か変なことはされなかったか?」
「いえ。変なことはされませんでしたよ」
「それなら良かった」
ホッとした表情で東條社長が言う。
「それで俺はこれからどうすれば良いんですか?」
「あぁ。まず青葉くんには写真集用の服に着替えてもらう。服のサイズは事前に聞いていたのでピッタリな物が用意されてるはずだ」
「分かりました」
とのことで、俺は控え室に鮫島さんたちと移動する。
「コチラの部屋に服を用意しております。着る順番も記していますので指示通りにお願いします。それと、控え室に隠しカメラ等は無いと思いますが、念のため着替える前はチェックをお願いします」
「えっ?隠しカメラですか?」
前世では隠しカメラの存在に気をつけながら生活などしなかったので、隠しカメラという言葉に触れる。
「はい。隠しカメラの存在はチェックした方が良いと思います。ちなみに事前に私が確認したところ、この部屋には100台以上の隠しカメラやスマートフォンが設置されておりました」
「………」
(多すぎだろ。100台以上あればさすがにバレるぞ……)
「分かりました。着替える前にチェックしておきます」
そう言って控え室に入る。
するとテーブルに置かれたメモが目に入り、着る順番が記載されていた。
「ふむふむなるほど。まずはハンガーにかかっている服から……ん?」
俺はハンガーに手を伸ばそうとして手が止まる。
なぜならハンガーの奥に“キラリっ!”と光る何かが目に入ったから。
「……カメラだな。しかもこれ、なかなか高級なものだぞ」
数万円ほどの小型カメラが設置されており、俺は貞操逆転世界にいることを改めて実感する。
「前世だと男性が女性を盗撮するニュースしか見たことなかったからなぁ。とりあえずカメラを探すか」
そう思い、隠されてそうな場所を片っ端から覗いてみる。
すると、合計100台以上のカメラやスマートフォンが出てきた。
「すごいわこの数。みんな暇かよ」
きっと隠す場所にも苦労したのだろう。
隠す気なしかよとツッコミたくなる場所にも置かれていた。
そんなことを思いつつ、鮫島さんに報告する。
「はぁ。考えることはみんな同じですか。青葉様のルックスを見て、私に回収されたカメラたちを再設置したのですね」
「あー、だから歩き回ってるスタッフが多かったんですね」
「あとでお説教しておきますので、撮影の中止だけはしないでいただきたいです」
「それは大丈夫ですよ。撮影はキチンと行いますから」
「……ホント青葉様はお優しくて寛大な心をお持ちですね」
そう言って鮫島さんの口角が上がる。
(っ!だからその笑顔は反則ですって!)
「じゃ、じゃあ着替えてきますっ!」
「はい。ドアの前で待機しておりますので、何か分からないことがあればいつでも声をかけてください」
その言葉を聞き、俺は顔が赤くなっていることがバレないよう扉を閉めた。
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