第三話 暗躍するもの、その名は〝結社〟
ミズニーさんたちに対する作業員たちの敵意は凄まじいものだった。
案内を受けている間中、私たちも一緒くたに警戒心を抱かれ、さながら針のむしろ。
もっとも、私もカレンも閣下もそういったことを気にしない
現在、来賓用の宿舎に戻り、私たちは額を突き合わせていた。
閣下の部下達が最後の情報集めに奔走してくれているので、その到着を待って最終的な結論を出すことになるのだけれど、
「実情、黒ですね」
「ああ、ドス黒いほどのな」
……意見の一致は既に見ている。
この鉱山は、明らかに辺境伯領の法律を
事故死した作業員について報告することなく、そのまま労働力として用いている疑いだけでもアウトだというのに、金銭の流れも書類上あやしい。
「〝結社〟と、便宜上呼んでいる」
閣下が、
「かつて、王都でこのような事件があった」
何の変哲も無いある朝、前の晩にはなかったはずの怪文書が、街中に張り出された。
一夜の犯行。
不可能に見えるほどの早業劇。
文章には、次のようなことが記されていたという。
『我ら、いと高きものの
平たく言えば、主君に対する
当然、現体制派は
「しかし〝結社〟の足取りはようとして掴めず、暗躍を許すこととなった。俺は、彼奴らを白日の下へさらけ出すことを王より望まれている」
「ゲーザンさんは、その一件に関わっていたと?」
「この鉱山の物資を〝結社〟へと横流しする、その橋渡しをしていたと考えられる。よくも我が領地で好き放題してくれたものだ」
地下組織の摘発など、外敵の備えである辺境伯が任される仕事ではない。
しかし、自分の領地で
実際、閣下の瞳は
……〝結社〟。
残念ながら、謀略の一族に産まれながら、私はこれについて思い当たるところがない。
実家が絡んでいる可能性は充分あるのだが、だとしても内部からすら証拠などは見えなかった。
「申しわけありません、閣下」
「小鳥よ、お前の謝罪は不適当だ。
謝罪する私の肩に優しく手を置き、なぐさめの言葉をくださる閣下。
そういった機能があったことに驚いてしまうのは、彼が冷酷無慈悲な辺境伯と噂されてきたからか。
ずっと優しいかただということは、とっくに解っているのだが。
「お嬢様に理解者が現れるとは……カレン、安堵」
何か世迷い言を
閣下が来訪したことで、ミズニーさんは証拠隠滅に動くかもしれない。
あるいは〝結社〟と連絡を取ってくれればめっけものだ。
なんにせよ、閣下の放った密偵は、ミズニーさんへ張り付いているはず。
私たちは相手方の動きを見て柔軟に対処すればよいと。
このときは、そう考えていた。
けれど、そんなもくろみは。
明け方に響き渡った、たった一つの悲鳴によって
駆け付けた私たちが見たもの。
それは。
ゴーレム技師、アゼルジャンさんの死体だった。
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