第8話 ファン第一号
第8話 ファン第一号
今俺はゲートポート近くのコンビニの駐車場で座り込んで連絡を待っていた。スマホの画面にはつい昨日作ったラールッドとヨシノのグループチャット画面が開かれており、2人に対して「昨日の女がゲトポ前で張り込んでる。どうする?」とメッセージが表示されていた。
「よっす。悪い事したわけじゃ無いんだから隠れる必要無いんでは?」
ラールッドがコーヒー片手に表れてそんな事を言う。まあ、コイツは気にしなさそうだよな。
「それより昨日のマザー個体、幾らになったんだろうな?」
「かなり良い値が付いてるだろ。傷という傷は脇腹を一箇所だけだしな」
ラールッドから渡されたコーヒーを飲む。ブラックのクリアな苦みが口に広がりサッパリさせてくれる。
「あっ!2人とも居た!もーなんなの待ち伏せされてるから最寄りのナミマに来てってさ。あ、ちょっと待ってて朝ご飯買ってくる」
「ハニトーか?」
「昨日怒られたからメロンパン!」
ヨシノは元気よくコンビニに入って行く。
「で、どうすんだ?助けたのは良いが目をつけられたくない?配信に出てこれから有名になろうってのに遅かれ早かれじゃないか?」
ラールッドはそんな正論をのたまう。そんな事は分かってるんだけど、いざとなるとな……気が引けるんだよ。目立つのはさ
「私はあのカスミさんって人もなかなか凄い人だと思うよ。あんな目に会って次の日にゲトポ前で仁王立ちなんて凄い肝が据わってるじゃない。そういうのは無碍にしちゃいけないんじゃない?」
クソッ……2対1か。はぁ……行くしか無いか
─────────────
「あっ!貴方様は昨日の!」
俺はそのうわずった様な高い声に頭を抱える。そんなにテンション高めで来るなよな。回り見ろよ人がめちゃくちゃ見てるやんけ
「あっ、お礼とかそういう話はウチの団長にしてくれよ。俺はあくまで突入しただけだ。」
できるだけそっけない態度で先手を打つ。コチラから出鼻を挫い向こうのペースに乗らないようにしないとな。あれよあれよという間にコラボとか取り付けられるのは嫌だからなぁ
「あのっ!昨日の事をお礼を言いたくて、ここで待ってたんです。マッカンさんですよね」
「あぁ、そうだけど。お礼とかそういう話は団長にしてくれって言ってるじゃないか。団長!ラールッド!ニヤニヤしてんじゃねぇ!俺ァ女慣れしてねぇんだ」
そういって迷惑そうにしてると後ろからカスミのクルーらしき女が出て来て真面目な話を始める
「すみませんウチのカスミが……ウチはカスミのチームメンバーにリリと言います。ウメコさんでしたよね。昨日はありがとうございます。ちゃんとしたお礼を受け取らずに行ってしまったものですから、不躾ながらゲートポートで待たせて貰ってました。昨日は本当にありがとうございました。」
リリと隣のユウジと名乗った男が頭を下げる。カスミもこの時は真面目な目をしていた。
「あっ、あ〜畏まられるのも苦手だしここに居ると他の人の邪魔になるしもう良いですって!私たちも動画のネタにならないかなって動機だったから大丈夫ですよ!むしろ遠目にだけど勝手に映して怒られないかなってちょっと思いましたし」
その後、2〜3言葉を交わしその場を後にする。
ラールッド、ニヤニヤするだけで助け舟出してくれなかったな……覚えてろよ……
───────
私は信じられないモノを見た。あのクズが綺麗な女の人にお礼を言われていたのだ。しかも隣にはこの間組もうと言っていた長身の男もいた。
2人で組んでまた悪い事を始めたのかもしれない。あの綺麗な人が毒牙に掛かる前に私が本当の事を教えてあげなきゃいけないわね。
「あの、すみません!」
カスミと呼ばれていた綺麗な人に話しかける。
「アイツと何かあったんですか?」
彼女はキョトンとした顔をした後に少し考えて何かを納得した様子になった。
「あら、以外とライバルが多いのね。貴方も彼に助けられたクチなの?」
その瞬間、カッと頭が沸騰する!あのクズに助けられたですって?冗談でも許せないわ!
「冗談じゃない!あんなクズに助けられたって?!その逆よ!私はあのクズに兄さんを殺されたのよ!貴方の事も利用するつもりかもしれないから忠告してあげようと思ったのに!」
ハァ…ハァ…、一気にまくし立ててしまった。言った後に「初対面相手に言う事じゃなかったよな」と思ったけどつい勢いで……
「なに?聞き捨てならないわね。貴方の名前は?………そう。舞って言うのね。舞さん、彼が貴方のお兄さんを殺した?ちょっと話を聞かせて貰っても良いかしら」
カスミは先程までとはうって変わってゾッとする様な顔をでコチラを覗き込んで来ていた。
これは……逃げられないわね。相手の方が実力は圧倒的上、ここで騒ぎを起こすのは現実的じゃない私はリリさんの案内で入ったカフェで兄さんが居なくなった顛末を話す事にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます