第6話 本業開始!

「本当にこの辺りで良いんですか?!」


「あぁ、心配すんな!俺はこの辺りにはチョイと詳しいんだ」


 エビタイ号をスイスイと操りかなり奥の方のダンジョンに降り立つ。ここは見渡す限り鬱蒼としたジャングルであり、名を「禍密の森」と呼ばれている。


 海賊団を壊滅させた後に、一応お巡りさんと救急舟をを呼んだんだけど、面倒事は嫌だから彼らが到着する前に女の人と別室に居た彼女のクルーをその場に置いてダンジョンに来たんだよ。


 なにせ指名手配ならまだしも、その辺のチンピラを警察に突き出したからって金は出ないからね(´・ω・`)


「でも本当に良いんですか?謝礼とか貰えたかも」


「バカ言うなよ。チームを立て直すなり、今回の事で解散するなりにも金は要るんだ。あんな目にあった娘からさらに毟ろうだなんて、ボスは冷血なんだなぁ」


 そうからかうとヨシノ……ウメコは「むぅー!」と頬を膨らませた。だってよエビタイ号は、“アイツ”はそういう事しなかったもんよ。


「こっちは準備終わったぞ。ボス!マッカン!視聴者の度肝を抜いてやろうぜ!」


「そういや二人共!組まない?とは言ったけど、そのボスってなんなのさ!私にいかついイメージがつくでしょ!やめてよね!」


「「アイマム!」」


「もーっっ!」




──────────




「なぁ、単純にぶっ飛ばすのも良いけど、食材になる奴でご馳走作んねぇ?」


「おっ良いねぇ」


「ゼヒッ………ハヒィ………ブフゥ…………」


 森を歩きながら襲って来る獣をラールッドと2人で仕留め、ウメコに仕留めたモノからプライズを回収させていた。この辺りに出て来るのはプーリーベアと言って黄色い体毛が特徴なんだよね。強さ?まあこの辺の敵なら昔よく狩ってたからまあ倒せるレベルだよ。


「ハァ……ハァ………ちょっと休みません?」


 山盛りのプライズが入った鞄に押し潰されそうになっているウメコ。あれ?現在地点からするとまだそんなにプライズが集まる程に奥まで来てないはずなんだが……?


「ラールッド、おかしくないか?」


「ああ、俺も来るのは久しぶりだが、妙に数が多い。」


「配信しながらのダンジョン攻略がメインになったから絵的に映えないダンジョンは人が少なくなるのか?それで狩る人間が減ったとかかな」


「難易度としては中の上だからってのもあるけど、それにしても他の探索者が入った痕跡が乏しい。ゲトポの連中は何やってんだか」


「そんなの良いから休みましょうよ〜」


 その場にへたり込むウメコ。う〜む、これは強くなって貰わないとな。何と言っても俺達のボスなんだから。


 ん?甘い匂い………ってコイツ菓子パンを取り出して食ってる?!ハニートースト………左手にはコーラか………バカがよ!


「おいおいおいおい!ソレ置いて船まで走れ!寄って来るぞ!」


「へ?」


 木の向こうから、先程まで倒していた個体からふた回りはデカいプーリーベアがこっちに向かって走って来ていた。クソッ、後ろから取り巻きも一緒か……流石に分が悪いな。


「ダンジョンでは匂いがするモン出したら寄って来るでしょうが!講習で習わなかったのか!」


「えっ?素早くエネルギーにするために甘い物は良いって習ったよ?このハニートースト、ナミマの新作なんだよね!」


 俺はウメコを抱えて来た道を駆ける。背中で「うえぇぇ!」と聞こえるが無視無視。ラールッドはプライズバッグを抱えてすぐ後ろを付いて来ていた。


「だっていつもは乗り合いの渡し船で行く低級ダンジョンでスライムやエレメント系の魔物がメインで……」


「ゴブリンやらコボルトで注意されるだろ!」


「生き物を殺す感触が慣れなくて……」


「そんなんでよく配信者になろうと思ったな!」


「良いじゃん!みんなキラキラしてて……好きな事やりたいし!」


 ああもう!ケンカになりそうだから船長へのお説教は後だな。船が見えてきた……やべっ!


 真横に飛ぶのと同時に目と鼻の先に岩が降ってくる。補足されたな。


「おい、マッカン。さっき海賊船の時は譲ってやったんだ。俺にも良い格好させてくれよ。妹に自慢したいしな」


 ああ、任せたぜ。



──────



 俺はラールッド、今は勢いでエビタイ海賊団の船長の右腕をしている。まあ、最初は妹の病気の為に金が必要だったから、腕利きにだったマッカンと組むつもりだったんだが、あれよあれよと言う間に海賊団になってたんだ。


 そんな事は今は良い。とりあえず船長が不用意に呼び出した、おそらくはマザー個体であろうデカいのを狩って良い所を見せないとな。これで人気が出て金が入れば良いんだが。

 あんだけデカいと骨で銃弾が止まりそうだな……ついでにマザー個体だから毛皮も持ち帰りたいな。良い値段付きそうだし、傷つけたくない……まあ上手くやってみるか。


「まずは……コレだ。催涙ショット!」


 催涙ガスを撒き散らす催涙弾をプーリーベアの集団にブチ込む。続けてコレ!


「カプサイシンショット!」


 グガッ!グゲッ!ガガァ!と苦しそうなうめき声を出して群れの大半が回れ右して取り巻きのプーリーベアは帰って行く。ってうおっ!

 マザーは集団の先頭に居たから煙を余り吸わなかったのか効果が薄い様で、突っ切って爪を振り下ろして来る。

 右に、左に、脇腹を通り抜けて背後に抜けて、ここで耳栓。からの!頭に向けて鳴響弾!


 鳴響弾とは弾薬が無い変わりに撃鉄で雷管を撃つと一瞬だけものすごいカン高い音が“銃口から”発射される特殊弾だ。指向性の音波がどうとか言ってたけど理屈は知らん。


 マザーの身体が一瞬こわばる。

 

 虎の子のマギナムを装填、撃鉄を起こし、魔力を込めながら弾倉をリールする。

弾倉表面に刻まれた呪文がマニ車の要領で効力を持ち、アイアンサイトから淡い光が一直線に伸びる。狙うは左脇腹。左腕の付け根から内部の心臓。そこに目掛けて………放つ。


 どう、と倒れる巨体。


 俺はその場に座り込み2人に回収カートの要請を送った。



───────

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