第5話 爆発的な出来事





 私はカスミ。自分で言うのもなんだけど、そこそこの人気配信者だった。そう、“だった”の。ミスって帰りの船が襲われてまんまと海賊に捕まったバカな女よ。あーあ、助けが来なけりゃここで配信者人生も終わり、かぁ。諦めたくないけど、現実的に逃げ出すビジョンが浮かばない。ホント困ったなぁ。


 しかし、最近入って来た新人アシの子がまさか海賊と繋がってたなんてね。ホント私ってツイてない。


「ヒャハハ!おいカズ!撮ってるか?」


「えぇ!バッチリでさぁ!もう一人売れない配信者のメスもそろそろ追い立てられてここに来る時間だ!楽しみだぜ!」


「あぁ、コイツらを売った金で俺達ロッジ海賊はさらにデカくなる!その時はお前にも船を持たせてやる!」


 私を売ったクズは自分の船を貰えるみたい。ははっウケる。てめぇみたいな小物は手漕ぎボートで十分だっての。あぁ、無事に脱出できたらこのドライブレコーダー代わりに付けてる超小型カメラが内蔵されたピンズでの隠し撮り動画を証拠に警察に駆け込むんだけどなぁ。


「おっ、キタキタ。ってありゃエビタイ号じゃねぇか?!いやカラーリングが似てるだけか。」


「エビタイ号?なんスかそれ?」


「ああ、12年前の事だから最近の奴らは知らねぇか。昔あんな感じの船にのって正義の海賊ごっこやってたバカが居たんだよ。まあ翠歌って家のお偉いさんの尻拭いをして行方不明になったんだがな。」


「へぇ~、じゃそれが蘇ったと?」


「バカ言え12年前の話だ。とっくにくたばってるだろうよ。ありゃ話題性欲しさにガワだけ似せたんだろ。俺達が今更そんなんにビビるかよ」 


「そっスよね〜船だけそっくりでも、のってるのが若い女配信者ってのは調べが付いてんのに、バカな女ッスよ」


 いい加減黙ってられないわね!


「バカな女?そのバカな女を食い物にしないとやってけない情けない男がよく言うよ!ダンジョンから金に、なるものを持ち帰れ無かった負け犬が!」


 グギッ………で、電気が…………く、苦し………


「殴るのは商品価値が下がるから勘弁してやるが、調子に乗るなよ?その負け犬に良いようにされてるならてめぇはメスブタか?あぁん?」


 ッッ…………ハァ………ハァ………ダメね……手足が縛られてる上に電流……うぅ…………


「なにっ?メスブタの船から小男が一匹出て来ただと?何か感づいて用心棒を雇いやがったか、撃ち落とせ!」


「そ、それがワイヤーを使って3番舟に乗り込まれました!」


「おい!3番!エリック!血祭りに挙げてやれ!」


[ボス!アイツ動きがおかしい!弾は当たらないし、刀は船体ごと斬られる!おかげで内装はボロボr]


「おい!エリック?!おい!」


「お頭………3番舟、機関部大破。目標の小男がこの船に取り付きました」


「えぇい!ならばあのパチモンに乗り込ませて先に女を捕まえろ!雇い主を盾にすれば止まるだろ!」


「それが、…………あの船に向かわせた仲間がブラスターで撃ち抜かれてます!1人も乗り込めてません!」


「おのれ………何処のどいつだ!」



 ガキィン!と金属音が響きブリッジへと入ってくる人影が、こう答えた。


「新生エビタイ海賊団、ウメコ船長の懐刀。マッカンだ。」


「撃てっ!」


 ブリッジに居たクソ野郎どもが一斉に銃を放つ。しかしマッカンと名乗った目深に帽子を被った小男は意外な程の俊敏さでそれを躱す。


「ブリッジに捕まってたのはアンタか。災難だったな。ちょっと待ってろ」


 彼が刀を一振りすると手足を拘束していた枷が砕け散っていた。


「持ってな。すぐに終わらせる。」



「ヒーロー気取りかよチビが!死ねぇっ!」


 頭が幅広の刀剣を勢い良くマッカンに振り下ろす。しかし、頭の手首から先がズレて刀剣とそれを握ったままの手首だけが彼の隣にゴトンと落ちた。


「殺しはしない。エビタイ海賊団の名を汚したくは無いからな。医者に行けばくっつくだろ」


 手首から先が無い両腕をみて床に崩れ落ちる頭。見ればものすごい速さでこの場にいる他の海賊どもも気絶させて回っていた。


「こ……殺しはしないって、だから隣の船も機関部大破だけなんですか?………」


「あぁ、後はお巡りさんを呼ぼうかなって」


「な、なるほど……」


「いやぁ、元はこの海賊どもの誘いにのって一網打尽、ヒュー!ウメコ船長最強!ってのを一発目の動画にしてインパクトを与えようと思ってたんだけど、船長がブリッジに縛られてる人がいるーって言うから先に助けに来たんだよね」


 彼はそう言って“ニイッ”と笑う。私は乱れた服を直し、深く頭を下げる。この人が助けに来なければ私の運命はここで終わってたのだ。それに……ちょっと可愛いかも。



─────────


〜エビタイ号のブリッジ〜



「いやぁ、どうだった?船長!」


 俺はホクホク顔でボディカメラの画像を確認する。


「うっ………画面酔いしそう……」


「だな。マッカンの動きにカメラが完璧についていけて無ぇ。と言うよりこの視点からあの動きされたら何も見えないだろ」


 戦闘場面の動画には早く動き過ぎてぐるぐるしてる残像しか写っていなかった。


「それより、さっきの海賊のお頭はヨシノに目を付けてたって言ってたぞ。お前うすうすは気付いてたろ。そう言うの最初から言っとけよな」


「違いない。」


 俺とラールッドにたしなめられたヨシノはシュンとしていた。




────────





読んでくれてありがとうございます(/・ω・)/


捕まっていた女の子はヒロインになるのかどうか……


良かったら高評価とチャンネル登録、よろしくお願いします(`・ω・´)ゞ


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