第4話 アイマム
「ワハハハ!コイツァすげぇ!パワーが最新式とも遜色ねぇんじゃねぇか?!なあ、ラールッド!」
「ああ、ウェポンベイも中身は空だがハブがたっぷりある!好きな武装積み放題だな!マッカン」
俺達2人はエビタイ号の内装に大はしゃぎする。
こんな所にあったなんてな。
「気に入ったぞヨシノちゃん!アンタの親父さんには世話になったんだ。動画回せ!」
「あ、あのっ、本当に良いんですか?!いやっ、出てほしくないワケじゃないんですが……」
ヨシノがこの期に及んで尻込みしてる。まあこういうのは勢いだ!堂吉のオッサンには世話になったしな。
「良いぞ!やれやれ!金が必要なんだ!」
すかさずラールッドの奴がヨシノの背中を押す。遠慮がちにしていたヨシノは俺達二人のゲートポートの様子からの変わり様に目を白黒させていた。
「アイツも自分で稼ぎ出したし、俺も干上がる寸前だったんだ。これもお大師様の思し召しと、そろそろ一発ぶちかましてやるぜ。お前とのこともあるしな」
「違いない」
俺達2人でワハハと笑う。
ヨシノは不思議そうな顔をしながらも配信準備を終えてカメラをこちらに回していた。
「は〜い!皆さんこんにちは!可愛い梅の花系探索者のウメ子で〜すっ!」
ジングルを鳴らしながら慣れた様子でカメラに挨拶するヨシノ、いやウメ子か。
「んだよ、ウメ子ってずいぶん渋い名前じゃねぇか!まあ俺は嫌いじゃないがパンチが弱いんじゃねぇか?」
「そう言うな、今や俺達のスポンサー様だぞ?」
「ちょっと待って二人共!カメラ回ってるのよ!自己紹介と、気の利いた台詞とか無いの?!」
まあ、肩ひじ張ってやるよりは良いだろ。それより……
「こういうのはバッと見せる方がインパクトがあるだろ。まあ何人が見てるか知らねぇがな!」
グォン、と加速してダンジョンの瓦礫の間を駆け抜けていく。そろそろか?
谷底を飛んでいると後ろに武装した戦闘船。さらに上から小型の戦闘艇が5機覆いかぶさる様に展開し始めた。ビンゴ!
戦闘船はいかにも海賊仕様で派手なカラーリングをしており、型落ちの連装砲を積んでいた。小型戦闘艇の方はウインチと格闘戦用のショットガン装備か、やりようは十分あるな。
「まぁ、見てな」
コブダイの様な形をしたエビタイ号は流れる様に地形スレスレを舐める様に駆け抜ける。
「当たる当たる当たる当たる!擦ったら給料から引くわよ!」「この程度でぶつけるかよ!」
グングンとスピードを上げ瓦礫地帯を抜ける。正面には別働隊と思しきビビッドピンクのカサゴの様な戦闘船が浮かんでいた。
「ダンジョン攻略の前の準備体操と行くか!ラールッド!行けるか?!」
「誰にモノ言ってんだ!あんな懸賞金逃す手は無いだろ?」
ガゴン!とエビタイ号のこめかみ辺りから機銃が飛び出し、カチッ!カチッカチッ!ん?弾が出ない?
「ウェポンベイは空だってさっき言ったろうが!どうせ弾が抜かれてたんだよ!」
ラールッドが叫ぶ。気づくと彼はハッチを開けて自慢の愛銃ユーチョロン−83をぶっ放して敵のカサゴ戦闘船のセンサーやら機銃を的確に潰していた。しゃーない、アレやるか!
「自動操縦に切り替えた!俺もちょっと出て来る!」
「あっ!何をするつもりなんですか!」
「復活祭さ!派手な花火を上げようぜ!」
俺はハッチから虚空に身を乗り出すと一番近くの敵船へ背中に背負った小型ウインチのフックを射出する……………ビンゴ!
「うわぁああ!来るな!来るな!」
「撃て撃て撃て!乗り込ませるな!」
「ぶっ殺してやる!」
ガン!と船体横に着地するとそのまま船に乗り込み中の海賊どもを一刀でノシてゆく。途中ブリッジに来たのでエビタイ号へ制圧完了のシグナルを出し、最後に機関室のエンジンをバキバキに破壊しすぐさま隣の船に移る。直後、先程まで居た戦闘船が大爆破する!
「ィィィィィイイイイヤッッッハァァァァ!」
─────────
〜エビタイ号船内〜
「す、凄い………1人で船を落としちゃった!」
私は配信している事なんて忘れて齧り付く様にモニターに見入っていた。そこには海賊船の上を駆け回る帽子を目深にかぶった短足小太りの男がしっかりと映し出されていた。
「こりゃあ俺も負けてられないな!」
ハッチから身を乗り出しているラールッドさんこっちも凄い!的確に機関部に近い装甲の薄い所を撃ち抜いては戦闘船より小型な戦闘艇を的確に撃ち落としている!
「それに比べて私は……「バカ!配信してんだろ?そういうウジウジしたのはしまっとけ!」
戦闘の様子をしっかりカメラに収めるべくモニターを確認していると、真ん中のビビッドピンクのカサゴみたいな船のブリッジで何か光ってる?拡大して拡大して〜
………え?船長席の後ろに繋がれた人が?!光って見えたのは繋がれてる人のペンダントみたい
「あ、あの!聞こえますかマッカンさん!」
[ああ?何だ!こちとら忙し…]
「真ん中の趣味の悪いトゲトゲの船の中に捕まってる人がいます!助けられますか?!」
[アイマム!キャプテン!]
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