第3話

3話 希望


「あの〜……」


 はぁ、昨日はビックリしたな。だが、仲間と呼べる人間が出来たからこれから取れる手段が増えるな。


「す、すいませ〜ん……」


 問題はあんまり稼ぐと目立つからな……ただ軽トラも中古だし、アイツのもその場しのぎの探査艇。しっかりとした虚空艇、いやさ虚空船が欲しい所だな。


「あっ!あの!聞こえてますかっ!」


「んだよ、聞こえてるよ。そして関わり合いになりたくないから相手しないようにしてたんだよ。まったく………で、なんなの?」


 眼の前にいたのは染めていたのであろう、生え際が黒くなり始めている若干くすんだ金髪のボブカットの女が居た。黒縁メガネをかけた大きなタレ目には濃いクマが浮かんでおり、寝不足であろう事がうかがえる。


 そんな女がフラフラとしながらこちらに話し掛けて来ているのだ。女ってだけでロクなこと無いからなぁ


「で、ケツモチの兄さんは何処隠れてんの?どうせ話に乗っかったら最後後ろから「俺の女に何して〜」みたいなパターンだろ?勘弁してくれよ?俺ぁ今スカンピンなんだ」


「ち、違いますよ!その、ちょーっと昨日の話を聞かせて欲しくて」


「ああ、あのイケメンと話がしたいならここで待ってると良い。目立ってたもんな」


「さ、最後まで聞いて下さい!昨日あなた達のやり取りを遠目に見てたんですが、あのイケメンさん銃で貴方を撃ったじゃないですか!でも貴方は平然として、で急に仲良さそうに地上に帰って行ったじゃないですか!いったい何があったんですか?!」


 俺は帽子を深くかぶり直すと怪しまれない様に自然な感じで懐の中の鞘を掴む。


「………なんでそんな事が知りたい?いざこざなんざダンジョンの虚空じゃいつもの事だろ?」


「ただの喧嘩って感じがしなくて、何か事情があるんだろうなって思って、それが私の話のネタにならないかと思ったから……ですかね?」


「話のネタ?ああ、動画配信でもやってるのか」


「え、ええ……登録者数32人の弱小配信者です……そ、それに私あんまり強くないのでモンスターもかっこよく倒せなくて……で、ですので、ゴシップみたいな事もやってみようかな?……なんて」


「やめとけやめとけ……ってのはもう身近な人間にさんざん言われてそうだな……だが観察眼は悪く無いんじゃないか?確かにアイツとは因縁で繋がってる。しかし、ハイそうですかと話すと思うか?」


 女は驚いた様な顔をした後、少し躊躇いながらもバッグから厚めの冊子を取り出す。開いた所の見出しにある写真をこちらに見せる。そこには型落ちではあるが、探査船が写っていた。そう、探査“艇”や輸送“艇”のようなボートではなく船舶だ。簡易ドックにキッチンやシャワーまで完備、その上武装までしてると来た。まさに今欲しいものを出されたってワケだ。


「こ、これを……あげます。」


「バカ言ってんな!そんなモンしまっとけ!バカが寄っ「ひゃはは!だったら俺について来いよ!こんな弱そうな男よりよっぽど楽しいこででででで」


 寄ってきた男の手を掴み上げて苦笑するラールッド。コイツ………もっと早く出てくりゃ良かったのにな


「マッカン、ハイエナどもが聞き耳を立ててやがった。これからワラワラ来るぜ?」


「じゃ、じゃあ、私についてきてください!」






───────




「コイツは……まさか?!」


「ああ、マジかよ」


 ゲートポートから女の船のポートに入ると眼の前にあったのは元はあの説明書の船なのであろうが、原型は一切無く恐ろしく改造の施された、とても有名な船だった。


「コイツぁ、エビタイ号じゃねぇか。この辺で知らない奴は居ないぜ?!」


 ラールッドは興奮したように船内を見回す。あちこちのパーツこそ古いが傷んだ様子はなく、むしろ大切に使い込まれていた様子だった。


「あのえっと………自己紹介を。吉野堂吉の娘の吉野ソメイです。お、お二人のどちらか船を運転出来ますか?」


「そうか、アンタ堂吉の………よし、組むぞ。今日から俺達はトリオだ!配信?バズらせてやんよ!」


「ハァ、お前と言う人間がだんだん分かって来たよ。不器用なんだな」


「ほっとけ」



───────


「はい、はい、大丈夫です。ハイ……それでは」


「管制室、コチラエビタイ号。ポートからゲートへ」


[コチラ管制室、許可下りました。グッドラック!]


「グッドラック!」



 軽トラ……小型輸送艇とは比べ物にならないパワーをスロットルから感じつつ、エンジンの回転を上げる。長い間飛んでなかったのが嘘の様に気持ちよさそうに機関部がビートを響かせている。


じゃあ、まずは招かれざる客を片付ける所でも撮って貰おうかな?






──────────



※今更世界観説明


この世界のダンジョンはダンジョンそのものが宇宙空間の様なスペースに浮かんでいて、現代日本に開いた穴の周りに港を作りそこから船でダンジョンに乗り込むイメージです。流行りに便乗してダンジョンモノにしたけど味付けを変える為にスペース・オペラ的な雰囲気も入れたくて……


雰囲気としてはキングダムハーツのワールドマップとグミシップみたいな感じです。宇宙空間じゃないけどだいたい宇宙空間みたいな


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