第32話 唐突に世界は入れ替わるⅢ
変異核の位置は確認できたので、後は変異核を取り出せば改造は終了だ。俺はエロ豚の頭部に近づく。変異核の位置はちょうど両目の間にある。俺が小さな右手をエロ豚の額に押し当てると、水面へ手を入れたかのように皮膚の中へ手が入り込む。
(凄い切れ味だな)
(そうね。もう爪というよりも手全体が刃物に変化したと思って問題ないわ)
纏の表現は的確だ。手全体が刃物に変わっているようだ。俺の手はエロ豚の皮膚の中を抵抗なくどこまでも自由に進むことができる。俺の手が赤く光る発光源まで辿り着くと肉球が吸盤の役割をはたし変異核を取り出すことに成功した。
(纏ちゃん、変異核を取り出したぞ)
俺は取り出した変異核を地面に置く。変異核の大きさは5㎝ほどだったが、今朝見た変異核よりも輝きが増しているように見えた。
(あんこちゃんも気づいたようね。今回は今朝よりも純度が高いから輝きが増しているわね)
(純度が高いほど鮮やかに光るのだな)
(そうね。今回は生命源が8%の状態で
(変異核の純度は生命源に比例するのだな)
(その通りね。純度の高い変異核をほしいならできるだけ生命源を残して倒すのが正解ね。でも、生命源が多いほど暗黒生命体は強力になるから危険度は増すけどね)
(危険を取るかお金を取るかということだな)
(そうね。今はあんこちゃんを守るためにも安全を優先しているわ。でも、あんこちゃんが力を付けてきたら純度を優先しても良いかもね。お互いに借金を返さないといけないからね)
纏は悲しげな目をする。
(そうだな。ところでこの変異核はいくらで売れるのだ?)
(う~ん……30万円くらいになりそうね。それではお待ちかねの報酬の結果を教えてあげるわね!)
急に纏は元気になり嬉しそうに話し出す。纏が嬉しそうに語る時は俺にとってはマイナスになることが多い。
(今回あんこちゃんが受け取れる報酬額は……なんと……1……0……円です)
(10万円か!)
(違うわよ!10円よ。今回はめでたく借金ではなく報酬がきちんと支払われます。パチパチ・パチパチ)
纏は拍手で俺に祝福をする。
(ちょっと待て!いくらなんでも10円は酷くないか!俺は一体50万円も支払ったのだぞ。納得がいかないぞ)
(あんこちゃんには依頼料の仕組みを教えてあげたわよね。これが妥当な値段なの)
(今回は諸経費が全く掛からないはずだ。絶対におかしいぞ!)
(はぁ~)
纏は大きなため息をつく。そして、呆れた目をして話し出す。
(あんこちゃん。今回は直接私に依頼を出した形になっているけど、依頼料の一部は異世界ハンター協会に渡さないといけないの)
(そうなのか?俺は纏ちゃん個人が依頼を受けたのだと思っていたぞ)
(私は異世界ハンター協会の会員よ。直接依頼を受けたとしても、異世界ハンター協会に許可を取る必要はあるの。個人で依頼を受けることは闇依頼と言って犯罪行為に値するのよ。私が自由に別の世界でハンター業務ができるのは異世界ハンター協会の庇護下にあるからなの)
纏の言っていることは正しい。それなら最初からきちんと説明をして欲しいものだ。纏はいつも説明不足である。
(そういう事情なら理解した。でも俺は本当に借金を返して人間に戻れるのか……)
不安だけが蓄積する。
(あんこちゃん、今朝と今では格段と変わったとは思わない。今朝は暗黒生命体と対峙して何もできなかったはずよ。でも、今はちがう。戦う武器も手に入れて、急所である変異核の場所も特定できるようになった。あんこちゃんはこの短い時間で確実に成長をしているの。それは間違いなく私のおかげよ)
最後の言葉がなければ、俺は纏の言葉に感動をしたのかもしれない。
(確かに纏ちゃんには感謝をしている。でも、借金があまりにも多すぎる……)
(それは私も同じよ。たくさんの新人間を真人間に改造して稼ぐしかないのよ)
(そうだな)
結局纏の勢いに負けて10円という微々たる報酬で納得することになる。
(変異核も回収したし
(纏ちょっと待て、お前その格好で戻るのはヤバくないか)
纏は下着姿のままである。このまま教室に戻るのはあまりにも破廉恥だ。
(あんこちゃんは紳士なのね。たしかにこの姿のまま戻るのは恥ずかしいわね。異世界ハンターボックスから新しい制服を取り出すわ)
纏は異世界ハンターボックスの買い物アプリを開いて制服を購入する。すると、纏は下着姿から制服姿に戻った。
(これで問題ないわね)
(そうだな)
纏の下着姿が見られなくなったのは残念だが、これで現実世界に戻ることができる。
「
唐突に世界は入れ替わった。
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