第31話 唐突に爪が浄化武器になる
「パンツ……パンツ」
纏の側にはエロ豚の頭が転がっている。垂れた細い目は纏の純白のパンティーを見てニタニタと嬉しそうに笑っていた。
(纏ちゃん、コイツまだ動いているぞ)
暗黒生命体は欲望の塊であり、欲望を切り裂く浄化武器以外で攻撃をすればすぐに再生をしてしまう。纏の体に仕込んである7色に光る
(生命源を少し回復したから意識が多少残っているみたいね。でも、もう体を動かすことはできないから安全よ。今回はエロ豚がバカだったから楽勝だったわね。もし、エロ豚が回復した生命源を頭でなく足に送り込んでいたら、少しは苦戦したかもしれないわ)
(どうしてエロ豚は頭に生命源を送り込んだのだ?)
(簡単なことよ。私の体をじっくりと見るために、細い目をできるだけ大きくしたかったのよ。変人は色欲に特化した暗黒生命体が多いから攻撃パターンを予測し易いわ)
(そういうことか)
本体である暗黒生命体は常夜の仮の姿よりも欲望に忠実である。纏は色欲に満ちたエロ豚が頭を大きくするのはわかっていたので、下着姿での戦闘を良しとしたのであった。
(今回はあんこちゃん自身の手で復讐をするのが依頼内容だったわね。だから、あんこちゃんに変異核の回収を任せるわ)
暗黒生命体は生命源である変異核を取り出すと欲望を失い廃人のような従順なロボットになってしまう。
(俺にもできるのか?)
(簡単に解体できるわ。でもあんこちゃんは猫だからナイフを使うことができないわね。でも安心してね。この『異世界爪とぎ板』で爪を研いだら、一定時間内は浄化武器と同等の武器になるのよ)
纏はエル字型の板を取り出した。
(俺にくれるのか?)
(そんなわけないじゃない。1回1万円で研がせてあげるわね)
纏は目を輝かせて俺を相手に商売を始める。俺はいつものことかと思い、驚くそぶりも見せずに呆れ顔になる。
(まずは試し研ぎをさせてくれ。俺の納得がいく切れ味だったら1万円を支払っても構わないぜ)
どうせ金を払わせられるのは目に見えているのだが、少しでも抵抗をすることにした。
(……しかたないわね。1回だけ試し研ぎを認めるわ)
纏は渋々了承した。
俺はエル字型の板を引っ搔いて爪を研ぐ。爪を研ぐと爪が発光して力が付与されたことは一目瞭然だった。それどころか体にも何か得体のしれない力が備わった気もする。
(あんこちゃん、
(わかったぜ)
俺は暗黒生命体と戦う武器を手に入れた。これで少しは一人前の仕事ができるようになったのかもしれない。
俺は頭に意識を集中して額に眠る第三の目を開く、この第三の目を開くことで見えなかったモノが見えるようになる。俺は最初にエロ豚の胴体を見ることにする。細い四本の足に贅肉のかたまりのようなぶよぶよの体、お尻からは10㎝程度の細い尻尾が生えている。俺はぶよぶよの体を見るが特に違和感を感じることはなかった。
(胴体にはないようだな)
俺は視線をかえてエロ豚の頭を見る。相変わらずエロ豚は気持ち悪い細い目で纏の体を見て笑っている。
(纏ちゃん、額の辺りが赤く光っているぞ)
一目瞭然だった。エロ豚の頭を見た瞬間に額の辺りが赤く光っていた。
(やるわね、あんこちゃん。暗黒生命体の動きを止めるには、変異核の位置を見極めるのがとても重要なの)
(そうなのか?纏ちゃんは適当に斬っていたのではないのか)
(もちろん適当よ。私には変異核の位置を完全に特定することはできないの。だから、生命源を減らしてから戦闘に挑んでいるのよ。もし仮に、生命源を減らすことができずに戦闘をする事態に遭遇した時は、暗黒生命体の動きを止めるために、変異核のある部位を切り落とす必要があるの。その時にあんこちゃんの第三の目が非常に役に立つことになるわ)
これは俺が利用価値のあることを意味している。
(こんな俺でも役に立つのだな)
(もちろんよ。そのために私のペット……じゃなくてパートナーになってもらったのよ)
纏は慌てて言い直す。俺は金づると言われないだけマシだと思った。
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