第29話 唐突に自習の時間になる

 「もしもし、裃です。のこのことカモがネギをしょって学校にやって来たようです。私が後始末をしてもよろしいでしょうか」

 「裃君、異世界ハンターを甘く見ないほうが良いです。今朝、同胞である樽腹たるはらさんが暗黒警察に連行されたと報告がありました。無茶な行動は慎んでください」


 「樽腹はただの変人アグリィヒューマンです。相手が異世界ハンターだと認識する術もなくただ欲に暴走する単純生命体です。その点私達は違います。知性も身体能力も優れた選ばれし奇人エキセントリックヒューマンです。相手が異世界人だとわかっていれば対処の仕方もあります。それに嬢花じょうか様に頂いたこの力があれば何も問題はありません」

 「力を過信してはいけません。私たちは今までにたくさんの同胞を異世界ハンターに狩られてきた歴史があるのです。多くの惨劇を糧として私たちは特殊な力を得る方法を見つけることができたのです。ですが、まだその力は万全とはいえません。今はまだ戦う時ではないのです」


 「それは重々承知の上でございます。しかし、このまま放置しておけば私が大事に種を蒔いた場所を失ってしまいます」

 「残念ですが諦めてください。今、私達に大事なことは力の強化です。いつまでも偉人パーフェクトヒューマンに好き勝手させるわけにはいきません。この世界を牛耳るのは偉人ではなく奇人であるべきなのです。それにはたくさんの純粋核が必要なのです。そのために下僕ゲーム、奴隷ゲームを開催しているのです。異世界ハンターが調査に乗り出したのならあの学校からは手を引いた方がよろしいでしょう」



  「・・・わかりました」

 


 裃は少し間を置いてから了承しスマホを切る。そして、別の人物に連絡をする。



 「もしもし、裃です。僕の縄張りに異世界ハンターが姿をみせました。僕は異世界ハンターを葬ろうと思っているのですが協力してくれませんか?」

 「ガハハハハ。俺に手伝って欲しいのか?」



 スマホの相手は【TEAMチーム JACKジャック】の麒麟児きりんじ 邪苦じゃっくであった。



 「僕1人でも問題はないと思いますが、2人なら確実に葬ることができると思うのです。麒麟児君もあの力を試してみたいと思いませんか?」

 「・・・裃、異世界人なら殺しても罪は問われないのか?」


 「もちろんです。ゴキブリを殺しても罪には問われないと同じことです。地球に害悪をもたらす害虫は駆除しなければいけません。公安警察も応援してくれるでしょう」

 「ガハハハハ。お前の話しにのってやってもいいがタダでは無理だ。お前が保有している奴隷を1人よこせ。そしたら手伝ってやる」


 「かまいません。お好きな奴隷を差し上げましょう」

 「ガハハハハ、ガハハハハ。お前はイケメンだからたくさんの奴隷がいて羨ましかったのだ。これで交渉成立だな。それで、いつ異世界ハンターを殺すのだ」



 「今から配下に連絡をして状況を確認する予定です。騒ぎを大きくするのは得策とは言えませんので、異世界ハンターを特定したら、奴隷を使ってあの体育館に誘い出したいと思います」

 「わかったぜ。準備ができ次第連絡をくれ」


 「わかりました」



 裃はスマホを切って晴天に連絡をした。




教室にて・・・



  「突然ですが、転校生を紹介します」



 唐突に授業は中断されて纏の紹介が始まった。



 「彼女は黒揚羽 纏さんです。みなさん仲良くしてあげてください」



 纏の豊満な肉体と美しい顔をみたクラスメートの男子達は目が釘付けになる。



 「先生、俺の隣の席が空いているから、その子はこの席にしてくれ」



 曇天はニタニタと醜い笑みを浮かべながら纏の席を指名する。しかし、その席には別の女子が座っていた。



 「黒揚羽さん、曇天さんの隣の席が空いているので、その席に座って下さい」

 「え!でも他の生徒が座っていますよ」


 「俺が空いてると言えば空いてるのだ。お前は気にせずに席に座れ」

 「わかったわ」



 纏は笑みを浮かべながら席に進む。すると曇天の隣に座っていた女生徒が席から離れて教室の後ろに移動した。



 「強引なのね」



 纏は空いた席に座り笑顔で曇天に声をかける。



 「お前、いい女だな。俺と付き合わないか?」



 曇天は気持ち悪い笑みを浮かべながら纏をナンパする。



 「ごめんなさい。私、女の子を粗末に扱う男は嫌いなの」

 「何をバカなことを言っている。俺はお前の席を用意してやったのだぞ」



 曇天は鋭い目つきで纏を睨みつける。



 「あれ~おかしいなぁ~。この席に座っていた女の子はどこに行ったのかな?」



 纏はわざとらしく曇天に質問を投げかける。



 「お前、いい度胸をしているな。素直に俺の言う通りにしておけば楽しい学校生活を過ごすことができたのに非常に残念だ。先生、今から自習の時間だ。お前は職員室に帰れ」

 「わかりました。先生は急用ができたので今から自習にします。曇天さん後のことはお任せします」



 先生は逃げるように教室から去っていった。

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