第28話 唐突に依頼を発注することなる

 (優しいのね。その依頼受けたわよ)



 まといは喜んで依頼を受ける。心強い仲間だと思いたいが纏の目が爛爛と輝いているので、依頼料の額が非常に気になるところである。



 (纏ちゃん、それで・・・依頼料はいかほどになるのでしょうか?)

 (そうね。お友達料金として50万円ね)



 たしか朝の依頼では変人を真人間イノセントヒューマンに改造する依頼料が20万円だったはず。今回は3人を真人間に改造するのだから50万円なら良心的な値段だといえるだろう。俺は纏を金にがめついヤツだと思っていたことを反省しなければならない。


 (わかった。それで手を打とう)

 (じゃぁ、このスマホの依頼証の画面にサインをお願いね。サインは拇印でかまわないからタッチしてね)



 纏はスマホ【異世界ハンターボックス】を差し出した。俺はスマホに親指をタッチしようとした・・・が、念の為に画面を確信した。



 【変人1体の真人間の改造費50万円もしくは・・・】



 (ちょっと待て!3人で50万円ではないのか?それに奇人なら10倍、怪人なら100倍とはどういう意味だ!)

 (プン!)



 纏はアヒルのように口を尖らして不機嫌になる。



 (俺を騙そうとしていたのか!)

 (違うわよ。これは異世界ハンター料金表の沿って導かれた料金なのよ)


 (そんなことはないだろ。朝に変人を真人間に改造した依頼料は20万円だったはずだ。それなら1体20万円が相場だろ)

 (あんこちゃんは学生だから社会の仕組みを知らないの。朝の依頼主の偉人パーフェクトヒューマンは異世界ハンター協会に100万円を依頼料として渡しているの。その100万円の中から私への支払いが20万円になり、残りの80万円はその他の経費等に使われるわ)


 (その他の経費だと・・・)

 (そうよ。まずは依頼者から寄せられた情報の真偽を確認する必要があるわ。その情報が虚偽であったり間違っていたら大変なことになるからね。次に追加情報の収集ね。依頼者から得た情報だけでは足りないことが多いの。だからあらゆる角度から分析をして情報を集めるの。その集められた情報を頼りにハンターの私が仕事をするのよ。これが依頼に関しての経費ね。でもそれだけでは経営が成り立たないわ。異世界ハンター協会はボランティアで成り立っているわけではないので、さまざまな人が働いているし、ハンターの育成にも力を入れているの。依頼者から出された金額がそもまま自分の儲けになる発想はナンセンスなのよ)


 (・・・)



 俺は纏の説明に納得した。例えばお店で1万円の分の食材で作った料理を1万円で売れば儲けはない。それどころか赤字になるだろう。調理する人の人件費、店の家賃、調理に必要な調味料など必要な経費はたくさんある。食材だけの料金を請求したいのならば自分で買って作れば良いのである。これは俺の依頼にも当てはまるかもしれない。纏の提示する金額に納得がいかないのであれば自分で復讐をすればよいのである。しかしそれができないから纏に頼んでいる。


 

 (纏ちゃん、俺が間違っていた。1体50万円で頼む)

 (まいどあり~)



 俺は纏の現金な笑みに少しイラっとする。すると纏は俺の気持ちを察してすぐにフォローをする。



 (あんこちゃん、勘違いしないでね。この依頼料にはあんこちゃんの報酬は含まれていないのよ。この依頼は私1人で実行するわけではないので、あんこちゃんの報酬分も含まれているわ。あんこちゃんの働き次第では1割、いえ4割は回収できるかもしれないわよ)



 俺は纏に依頼を出したが、俺は纏の相棒として一緒に依頼業務をこなすことになる。すなわち、報酬をもらえるのである。前回は授業料の名目で報酬は貰えずに借金が増えることになったが。今回はちゃんとした報酬をもらえる可能性があるのだろう。



 (纏ちゃん、今回は授業料は発生せずにちゃんと報酬を貰えるのだな)



 ここはきちんと言質を取っておく必要がある。



 (もちろんよ・・・と言いたいところだけど、多少は発生するかもしれないわ。でも、勘違いしないでね。前回のように借金になることは絶対にないわ。あんこちゃんの活躍を期待してるわね)



 やはりまだ授業料が発生するのであった。でも、借金にはならないという言質を取ることには成功した。



 (わかった。それで、これから俺は何をすればよいのだ)

 (そうね、もう裃は学校にいないから後回しにするわ。すると晴天と曇天が新人間であるか確認するのが最初の作業になるわね。あんこちゃん、第三の目サードアイを使って確認してくれるかしら)


 (もちろんだ。外からこっそりと覗いて確認するぜ)

 (それはダメよ。あんこちゃんはまだ第三の目を完全に使いこなせていないわ。だから出来るだけ近づいて確認するのが確実よ。それにね、クラスメート全員を確認した方が良いかもしれないわ。新人間は害をまき散らす害虫だから、野放しにするのは危険だわ)


 (でも、猫の姿で教室に入るのはまずくないのか?)

 (大丈夫よ。私に良い考えがあるの)


 (わかった)

 (あんこちゃん、依頼捜査に行くわよ)



 纏は俺を抱っこして教室に向かった。

 

 

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