第27話 唐突に俺は復讐を決意する

 (あんこちゃん、作戦会議をしたいから空き教室にすぐに来てね)

 (俺も行くのか?)


 (あんこちゃんは自分の手で復讐をしたくないのかしら?)

 (それは・・・)



 弱者の俺は逃げることしか考えることができなかった。復讐など思いもつかない言葉である。



 (できるなら復讐をしたい)

 


 俺をおもちゃのように遊んできた裃達に復讐できるなら復讐をしたい。それが俺の心に隠していた本心である。



 (そうこなくっちゃ。やられたらやり返すとまでいかなくても、自分自身にけじめをつける必要はあるわ。それに、これで依頼成立ね。後で依頼料を請求するわね」



 纏は現金な笑みを浮かべて喜んでいる。



 (待て、待て、別にこれは依頼ではないだろ?お前の任務ではないのか?)



 復讐はしたいがこれ以上借金が増えるのは困る。



 (ここは私の任務とは関係なくあんこちゃんに強くなって欲しいのよ。もし、あんこちゃんが人間に戻った時、ここでの経験が大きく人生に左右すると思うの。私がするのではなく、あんこちゃんが自主的に動くことに意味があるのよ)

 (纏ちゃん・・・。俺の為に言ってくれているのか)


 (もちろんよ。私に依頼をお願いしてみる)



 纏が言っていることは正しいのかもしれない。何事も人に頼ってばかりだと成長はしないだろう。一度は死を覚悟したのだから気負う必要はないはずだ。それに、俺は一人ではない。纏が協力してくれれば復讐を果たすことができるのは明白だ。



 (わかった。俺の復讐を手伝ってくれ)

 (ありがとうございます!依頼内容を詳しく確認したいから急いで来てね)



 俺は纏に騙されているのかもしれないという不安を抱きながらも纏が指定した空き教室に向かった。


 

 (あんこちゃん、依頼内容を確認させてもらうわね)



 纏はすこぶる機嫌が良さそうだ。



 (依頼内容はイジメの首謀者である裃、そして裃の配下である晴天と曇天、それにイジメに加担したクラスメートと担任教師、それを黙認した学校関係全員に復讐をしたい)



 復讐したい相手をあげればキリがない。今回は学校でのイジメに限定した相手をピックアップしたがそれでも数は多くなる。総勢では50名はいると思われる。



 (全員に復讐したい気持ちはわかるわ。でもね、費用が莫大になってしまうわよ。それに、具体的にどのような復讐を望んでいるのかしら)



 纏は確信を突いた質問をする。俺はアイツらにどのような復讐を望んでいるのだろうか?俺はアイツらを全員を殺したいのか。もし俺がクラスメートの立場だったら、俺は何をしただろう。イジメられている人を助けたのか・・・いや、クラスメートと同じ立場をとっていただろう。怖くて誰も裃に逆らえないはずだ。それなら学校関係者はどうなる?アイツらも裃に怯えていたのか・・・。それはわからない。でも、裃にではなく裃の背後に存在する大きな組織に怯えていた可能性はある。俺は本当に全員に復讐をすべきなのか?答えは出てこない。それはこのイジメの全貌がみえないからである。クラスメートや学校関係者がどのような理由で俺のイジメに加担していたのか確固たる根拠が見えてこない。俺は裃たちがクラスメートを脅迫した現場を実際に見ていない。それは学校関係者も同じことが言える。今俺が明確に復讐したいのは誰なのか・・・俺は考える。



 (あんこちゃん、迷っているのね。それなら、私から一つだけアドバイスをしてあげるわ。まずは旧人間シンプルヒューマンには復讐ではなく反省を促すべきね。今回の件は新人間ニューヒューマンの洗脳に近い脅迫によって生み出された事案だと思っているの。さっきも説明したけど変人アグリィヒューマン程度なら抵抗する余地もあるわ。でもね、今回は奇人エキセントリックヒューマンが絡んでいるの。奇人と同じ学校に通うことになったのは災害に遭遇したのと同じこと。不運だったと受け止める必要があるかもね。そして、新人間には反省を促しても無駄だからきちんと制裁を与えるべきね。できるなら殺すのが一番良い選択肢と言えるわね。今回は私の任務に合致しているので殺しても上手くもみ消すことは可能よ)



 実際は奇人のみ殺害の許可が出ているので、纏の言っていることは越権行為に当たるはずである。しかし、纏は俺の気持ちを汲み取って本意を述べている。それは変人は絶対に反省や更生をしない生物だからだ。



 (纏ちゃん、俺の気持ちは決まった。復讐の対象は裃と晴天それに曇天だ。裃は新人間に間違いないが、晴天と曇天はわからない。でも、俺の第三の目サードアイを使えばわかるのだろ。晴天と曇天が新人間とわかれば復讐を実行する。そして肝心の復讐方法は・・・改造でお願いしたい。改造すれば害はなくなるのだろ)

 


 裃、晴天、曇天、この3人は殺したいほど憎い。できるならいたぶって殺してやりたい。でも、俺には殺すという選択肢は怖くて選ぶことができなかった。


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