第26話 唐突に証明される
裃が教室から去るとクラスメート達は安堵の笑みを浮かべてホッとしていた。しかし、一番心が安らいでいるのは
「曇天、後は任せたぞ」
「わかった」
晴天は別のクラスなので自分の教室に戻る。残された曇天は教室の外で待機させていた教師に授業を始める許可を出した。
一方
「お待たせ校長先生」
「・・・」
紺のスーツを着た白髪の少しぽっちゃりとした初老の男性が校長室の椅子に座っていた。纏が声をかけるが不機嫌そうな顔で纏を見る。
「あら、どうかしたのかしら。体調でもこわしたの?」
「朝一で来いと連絡したはずだ。なぜ?遅刻したのだ」
「あれ?メールしたはずよ。新人教育をするって」
「届いていないぞ。ちゃんと送信ボタンを押したのか?」
纏は異世界ハンターボックスを手に取る。
「あ!押してない。まだ異世界ハンターボックスを使いこなせていないのよねぇ~。ハハハハハ」
纏は笑ってごまかすが、校長先生は頭から蒸気が出るほど怒っている。
「さすが異世界ハンター試験末席の実力だな・・・」
纏は異世界ハンター試験を最下位で合格した実力者であった・・・。
「もう!それは言わないで。合格したから問題ないの」
「そうだな。さて、本題に入りたいがこの体を長く借りるには危険が伴う。だから、端的に伝えるぞ」
「だったら早く言うのよ」
校長先生は鋭利な目つきで纏を睨みつけたが怒りを抑えて淡々としゃべり出す。
「この学校には複数人の
「了解よ」
「では、検討を祈る」
校長先生から鋭い殺気が消え去り、恵比寿神のような愛嬌溢れる顔になる。
「あれ?君はいつからここに居たのかな?」
校長は少し驚いた表情を見せるが、すぐに笑みを取り戻す。
「さっきから居ましたよ。校長先生」
「そうだったかな?まぁよしとしよう。君が新しく来た転校生の黒揚羽 纏さんですね。警察から君の処遇は聞いていますので、自由に学生生活を過ごして下さいね」
「は〜い」
「ただ一つだけ注意して欲しいことがあるのです。実は公安警察から優遇措置を取るように指定された人物がいるのです。くれぐれもその人物と揉めるのは避けて欲しいのです。もし、何か起きたとしても私たちではあなたを助けることができないのです」
「は〜い」
纏は元気良く返事をするが、校長先生の忠告を聞くつもりはない。逆にその人物こそが本丸であるとにらんでいた。
「それでは教室に行ってきます!」
「纏さん!まだ話は終わっていませんよぉ~」
纏は校長の声を遮るように校長室の扉を閉めて急いで駆けだした。
「私の気配を察知して逃げたのかしら?」
纏は学校に入ってからすぐに気付いていた不気味なオーラを放つ人物に。しかし、今はそのオーラを感じなくなった。
(もしも~し、あんこちゃん。聞こえてますか?)
纏の声が頭に響く。
「にゃ~~~~」
俺は驚いて叫び声をあげた。
(あんこちゃん、あんこちゃ~~~~ん)
(わかった。わかった。聞こえているから何度も呼ぶな)
(聞こえているならすぐに返事してよ)
(まさか離れた場所でも念話ができるなんて知らなかったんだよ)
(そうなのね。念話は1㎞近辺までなら声が届くのよ。ちゃんと覚えておいてね)
(いやいや、はじめから言えよ)
纏はいつも情報が不足している。
(そんなことよりも、あんこちゃんをイジメていた首謀者は教室にいるのかな?)
(いや、今さっき教室から出て行ったぞ)
裃は教室から出て行き学校から姿を消した。
(ビンゴだわ)
(どういうことだ)
(私のメインの依頼であるターゲットの1人があんこちゃんをイジメていた裃って男で間違いないわ)
(メインの依頼とはどのような依頼なのだ?)
(まだ詳しくは話すことはできないわ。でも、公安警察が関与しているってことは非常に危険な相手と言っても過言ではないわ。
(裃はそんなにヤバい奴なのか?)
(この世界では危険人物だと言っても良いわね。おそらく裃は
(奇人?)
(あら?もう忘れたのかしら。新人間には4つのタイプが存在するわ。
俺は纏の話しを聞いて納得した。裃1人では絶対に下僕ゲームを成立させることができないのは百も承知の上だった。裏に何かしらの大きな組織がいるとは思っていたが実際に存在することが証明されたのである。
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