第2話ミア・マリア・フォン・シェーンベルク

私はこの国が大好きだった。

豊かな自然、笑顔に溢れた国民、決して裕福な国ではないけれど、私にとっては日々満足出来る国だった。


あの日までは。

あの日、春の風が気持ち良い日、私は深夜2時過ぎに目が覚めてしまい、母上を探していた。

母上と父上は2人の寝室にいた。

「本当にやるのね。」

「それしかない、あの白い髪と真っ赤な目、呪われた子。殺すしかない。」

白い髪と真っ赤な目、それは私のことだった。

私は知っていた。この見た目は人から好かれないと。

魔力は髪に宿ると言われている。髪の色の濃淡が濃いほど魔力が強いと言われている。私の髪は真っ白、老人のような白い髪。

老人になると魔力は衰えていく者が多い。

私は初めから魔力が無かった。

魔法がもてはやされているこの世界で、私は魔法が使えなかった。

それが確実になった12歳の誕生日、私はとうとう親に殺されそうになった。

「母上…。」

私に馬乗りなって首を絞めてくる実母。

哀れな母親。

愛娘になるはずだった者を殺さなければならないなんて。

私は遠のく意識と共に、感慨深さを覚えた。

このまま死ぬのか…。

やり残したことも、もはや思い入れもない。

この人生には。

その瞬間、


「何をしている!?」


私と同じ年ぐらいの男の子が部屋に走りこんできて、母上を蹴り飛ばした。


「大丈夫か!?」


男の子の顔が必死すぎる。

大丈夫と言いたいのに、ごほっ、ごほっ、と咳き込むことしかできない。

男の子の顔を見たら、今日の昼間に出会ったヴィルフリート殿下だと分かった。

私の国、もはや私の国と呼んでいいのか分からないが、シェーンベルクとは違い、西の大陸、世界の半分を統治している大国の王子。

髪は真っ黒で艶があり、魔力も強い。

私とは何もかも正反対。

羨ましいなぁ。


「ヴィルフリート殿下…!」


我に返った母上が何か恐ろしいものを見たように殿下の名前を呼ぶ。


「何をしたか、わかっているのか…。」

静かに、しかし途轍もない怒りのこもった声。

ヴィルフリート殿下が心から起こっていた。


その後私は気を失ってしまったので、何があったのかを、私のお付きのメイド、唯一私に優しくしてくれているメアリに後から聞いたのだった。


私が目を覚ました場所は、シュネーシュトルム王国の貴賓室のベットの上だった。


私は遊学に来たらしい。


ヴィルフリート殿下の取り計らいにより、私を殺そうとした両親の件に関しては、一切罪を問わない代わりに、私を引き取りたいとの申し出をしたそうだ。

何をとち狂ったのだろう。

ただ、一国の王女を引き取るというのは難しいため、遊学に出るということになったらしい。


それから2年が経った。

またシェーンベルクで何かあったらしいと風の噂で聞いた。

母上と父上は元気だろうか。


ヴィルに聞いてみるとしよう。

私は自室を出て、殿下の執務室に向かうことにした。

足取りは軽い。

ここでの暮らしは大好きだ。


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