シュネーシュトルム国物語
@Hibiscus_
第1話プロローグ
ある初夏の昼下がり、俺は城の中庭のベンチで目を瞑って微睡んでいた。
「ヴィルフリート様、こんなところにいらっしゃったんですね。」
俺の世話の一切を任せられている従者のエドワードが走り寄ってきた。
「ヴィルフリート様。」
ちょっと怒り気味だ。そりゃそうだ、公務を放り出して、中庭で居眠りこいていたんだから。
まだ白を切って目を瞑っている俺に更に畳みかけるようにエドが言う。
「陛下がお怒りですよ。急に何も言わずに居なくならないでください、お願いですから。」
それでもまだ目を瞑っている俺にため息を吐くエド。
「はいはい、起きればいいんだろ。」
観念した俺が目を覚まし、起き上がる。
それでも上半身を起こしただけなので、まだ寝る気満々であったのだが、次のエドの言葉で、俺の霞んでいた脳みそが完全に目覚めた。
「シェーンベルク国が動き出したそうです。」
周りに人はいないがしっかりと俺にしか聞こえない声で囁くエド。
出来た従者だ。
我ながらいい奴を選んだと思う。
うちの国では、王位継承権を持つ男児が12歳になった際に、自分の従者を自分で選ぶことになっている。
その際に選んだのがこの、エドワード・ヴォルクだ。
こいつは俺よりも2つ年上の流浪の民だった。
俺が選任従者を選ぶ際にはこのせいでひと悶着あった。
流浪の民なんて下賤な、初め父上から言われたのはそんな言葉だった。
流浪の民についてはまた追々説明するから、話を戻そう。
「へーえ。シェーンベルク国ね。あんなに小さい国なのにすごいね。」
俺はにやりと笑い立ち上がる。
何か面倒ごとが起こりそうな気がする。
空は快晴だった、母上が死んだあの日のように。
母上が好きだったフローリアの花を振り返らずにマントを翻して、城の執務室に向かって歩き出したのだった。
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