第20話 読むことについて②

 中学生半ばから、高校生辺りでは、日本の名作文学と言われるようなものを読んでおりました。


 父親が本好きで……というか、このシリーズは飾るのがカッコいいと思っていたんでしょうね。日本名作文学を88冊でしたか、広いリビングの大型キャビネットの上二段にズラッと並べておりました。ファッションの一部のようでした。



 当時、私は、学校の現代国語のテストは、大抵トップクラスだったのですが、作品の作者が覚えられなかったのです。暗記が、致命的にできない人なので。作品と作者を線で結びなさいとか言われてもわからない。……これは、読んでないからわからないんだろう。そう思って、テストに出てくるような作家の作品を沢山読みました。幸運なことに、父のコレクションの中に、それらは全部入っていました。

 多分、父は「飾り」として置いていただけだと思うので、読んでいたのは私だけ。父が77歳で亡くなった後、母によって「邪魔」という理由で捨てられたそうです(泣)。くれればよかったのに。


 中学、高校は太宰治。

『人間失格』や『斜陽』なんかの有名な長編も勿論好きなのですが、もっと好きなのは、太宰の短編で、主人公の女性が一人称で語っている作品です。

 短編集『きりぎりす』は、何度読んだことか。比較的精神が落ち着いている頃の、彼の細やかで丁寧で鋭い五感をダイレクトに感じられる短編集だと思います。


 実は、最初に買った『きりぎりす』は、別れた男の部屋に忘れてきてしまって(笑)、取りに行くわけにもいかず。仕方ないので、近くの古本屋で再度手に入れた物なので他の本よりもボロボロです。ボロボロの心で買ったのだから、いいじゃない、お似合いで。な〜んて思ってましたが、さっき見たらホントに酷いかも。買うか?(笑)


 こんな感じでしたから、「星新一読んだよ〜」「赤川次郎の新作読んだ?」などという会話に殆ど入っていけません。

 ただ、一度、友達に、

「俺、コバルト文庫の○○コンテストに応募しようと思うんやけど、一緒にせんか?」

 と、誘われた頃に2回か3回、コバルト文庫から出ていた雑誌を買ったくらいで。


 雑誌に載っていた作品は、面白かったです。読みやすかった。ライトで。……私がヘビーなのを読み過ぎだったという説もありましたが。


 コンテストには参加しませんでした。友達のが途中までできたからと読ませてもらったら、恥ずかしくなるくらい、自分の文章が稚拙すぎるように思えて……。



 そこから、みんなが辿った、ミステリーの道にも行きませんでした。


 母がミステリーが好きで、特に、アガサ・クリスティとか読んでたんですが、それも2冊くらい手に取っただけ。

 お受験お受験、お勉強お勉強の私には、学校のテストに出てくるような本以外を読む暇がなかったんです。

(っていうか、その暇は、全部絵に費やされてたとも言う)


 この頃には、使う事典や辞書も変わりました。大抵図書館の百科事典を使っていたのですが、家で調べる時は、父のコレクションの百科事典を(笑)。あの人の、ファッションのように持っててカッコいい本を収集する癖は、私にとっては凄く役に立ちました。

 ちなみに、これも、父が亡くなる前の、実家の引っ越しの時に、母によって捨てられたようでした。百科事典や名作文学全集を捨てる人の気持ちが、私には理解不能なんですが、「邪魔だから」っていう理由で捨てられるものなんですか、あれは? 

 勿論、私の『少年少女世界の名作文学』も捨てたそうです。上の弟の子供たちが全く読まないとの理由で。今、下の弟の娘が物凄い本の虫で、彼女にあげれば喜んだものを……。

 もうなかなか手に入れることができないような本を捨てられると、自分はもう読まない、使わないようなものでも、心が痛みます。


 さて、大学生になった私の読書については、もっともっと違う方向に向いて進み始めます。

 それについては、③の方で紹介したいと思います。


※近況ノートに写真があります。

https://kakuyomu.jp/users/hiyuki0714/news/16818093081028211085

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