第17話 作詞について

 詩は中学2年生頃から書いていました。


 当時の詩は、結構暗め。いじめはまだ続いていたし。そんな中でも恋をして、でも、いじめられている自分の立場で、その人に自分の気持ちなんて伝えられない。そんな苦しさ、切なさ、不条理に対する怒り、絶望、そんなものをノートに文字にしてぶつけていました。

 一方で、仲良くなった友達も沢山いて。自分の席が他の子たちと同じ場に当たり前のようにあることを不思議に、奇跡のように、希望のように、思っていました。そんな前向きな詩もありました。


 その頃の私の詩は、私そのものでした。他のことを書く余裕などありませんでした。

 いまでこそ、月の詩なんて書きますが、その頃は、とてもとても。


 私がそんな風に詩を書いていることを、仲間たちは知っていてくれていました。

 ある日、音楽をやっている男の子が、私の詩に曲をつけさせてくれないかと言ってきました。

 私の詩は、自由詩です。歌にできるような「詞」ではありません。でも、やってみたいと思いました。なるべく歌にしやすいように言葉を並べ替えていきます。パズルのように。

 そうして、私が作詞をして、彼が作曲をし、歌う、というスタイルで、2曲ほど作りました。


 できた時には嬉しかったのです。


 高校1年生の時、学生だけのライブステージのようなイベントがありました。私の知り合いや同級生たちで音楽をやっている子たちも出ていて、沢山の観客がいる中、その男の子が、私の作った曲を歌ったのです。私と一緒に作ったということを告げて。みんなの視線が一斉に私に向けられました。

 怖くて……怖くなって……逃げました。会場から逃げ出しました。人前で自分の心を晒すことがこんなに怖いことだとは思いませんでした。


 それで、そこから作詞はしなくなりました。

 相変わらず詩は書いていたけれど。


 月日は流れ、33歳の頃。

 私は自分のHPを持ち、匿名で日記を公開したり、詩やエッセイを公開したりしていました。

 その頃、SNSの走りみたいな所でもウロウロしていて。それで、私の日記や詩を読んでくれている仲間の一人が、

「ねえ、これ、曲になりそうなんだけど、やってみない?」

 と言ってきました。

 匿名で作詞ができる、ということは、大きなチャンスでした。外に自分を晒すこともない。怖いと思わなくて大丈夫なんだ……。

 そこから、彼女との曲作りが始まったのです。


 彼女と作った曲を聞いた別の仲間が、

「俺も曲は作れるんやけど、作詞ができへんねん。手伝ってくれん?」

 と言ってきました。

 彼とは何十曲作ったでしょう。いつの間にかコンビみたいになって(笑)。漫才の相方みたいな関係になりました。ファンもできました。


 他の歌い手さん(ギターの弾き語りさんです)からも、作詞の依頼がきます。

 気がつけば、私は「作詞をする人」になっていました。


 一部ですが、ここに紹介したいと思います。

https://kakuyomu.jp/works/16816927860943357348


(こちらにある詞は、既に曲がついており、著作権は放棄しておりませんので、他の方の使用はご遠慮ください)


 作詞をしたものを、ポイッと作曲者に放り投げるのではなく、私の世界感を伝えたり、ここをもう少し柔らかめにしてほしいとか言ったり、向こうからも、ここの文字数が入らないから少し削れないかとか、ここに「レ」の言葉から始まる英語の歌詞が欲しいとか(なんやねん、それは)、打ち合わせを何度も重ねて、やっと一曲できる感じでした。

 曲作りに「参加している」という感じがして、本当に楽しかったです。


 今は歌詞の方は書いてないです。書きたいと思う気持ちはあるし、最近紹介していただいた、詞をUPすれば、曲をつけてくれるサイトもあるみたいなのですが。

 書きっぱなしで作曲者に放り投げるスタイルは、私の望むものではなくて。

 全然イメージに合わないものができて、「これは違います」なんて言えないじゃないですか。


 実は、先に曲を聴かせてもらうことの方が多かったんですね。曲には「色」があります。その曲を聞くとイメージする色。それに沿って、私は歌詞を書くんですね。

 だから、詞を書いて、渡した時に、全く違う色味の曲が返ってきたら、多分ガッカリしてしまうでしょう。


 ワガママなんです。こだわりが強くて。


 それでも、いつか、お互いに深く相談しながら作品を作れるようなサイトができたら、参加するかもなあと思います。

 その時は、既存の詞は使いません。また新しく書くでしょうね。


 曲の「音色」を感じながら。

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