第11話 生け花について
それまでの私は、「生け花」など1ミリも関係なく過ごしてきました。
中学校入学。部活は、美術部にしよう!! 兼部ができるけど、塾があるし、水泳部ないからなあ……。
そんなことを考えながら、階段の前に差し掛かった時、急に腕を掴まれます。
「な、何?」
二学年上の、親戚の姉ちゃんでした。私の父の従兄の娘。「はとこ」になりますかね。父に兄弟姉妹がなく、従兄弟との交流が多かったため、姉ちゃんとは小さい頃から仲良くしていました。
「緋雪、『華道部』入れ」
いきなり命令形ですか、お姉様。
「『生け花』とか興味ないんやけど(汗)。美術部入ろうと思ってるし」
「兼部せえ、兼部」
いや、待って、なんで私、「華道部」に入るんでしょう……。
姉ちゃんいわく、今の華道部には2年生がいないそうで、今の3年生が文化祭後に退部してしまうと、部自体がなくなるそうで。
そういうわけにはいかないので、現部長(姉ちゃん)が、直々に勧誘しにきたらしく……。
え? それで、私が都合よく入学してきたから、後を継げと。
え〜? マジか〜? と思いましたが、姉ちゃんの命令に、絶対服従の私。入部届を出しました。
うちの部は、「
草月流は、
あと気をつけないといけないのが、剣山の部分を隠すということ。
本当に、ルールはそれくらいで、あとは、お花以外でも、プラスチックや金属をいけてもいいような面白い流派です。
毎週、作法室でお稽古があります。
選ぶ花材や、型、主軸以外の花の自由な創造性で、皆それぞれまったく違う作品ができていきます。
時には、花や木の形を変えたりもします。水仙などは、そもそも花が葉っぱより長く上に出ているもの。それを、一度根本で切って、葉の長さを変えて調整して、元の袴をはかせ、それごと生けます。また、長い柳などは、曲げてクセをつけ(ためると言います)、使ったりもしました。コウゾなんかは、乾いたものを他の木の上から吊るしたり。
はっきり言って、面白いです。
華道って、もっと堅苦しいイメージがあったので、こんなに自由に生けることができるんだということは知りませんでした。
毎回、作品を先生に見てもらって直してもらったあとは、その日習ったことをノートに書いて、お花を持って帰り、家で生け直しました。
お陰で、うちの玄関には、いつも生け花がありました。
文化祭は、文化部にとって一大イベントです。この日ばかりは、いつもの倍くらいの値段の花を生けられるのです。もー、緊張半端ないです。
部員一人一人(私が3年生の時には12人くらいに増えてました)の作品の展示は勿論でしたが、それ以外にも、ペーパーフラワーや、ドライフラワー、押し花の栞なんかの販売もしました。
作るペーパーフラワーの数がえげつないので、夏休みも毎日学校に通っておりました。運動部では卓球をやってたので、その練習もちょっとだけあって(超弱小部なので、ホントにちょっとだけ)。
薔薇を作るのが得意でしたね~。他にも色々な花を作ったんですけど。
私が毎日出てるので、後輩もなんとな〜く毎日来ていて(全く強制はしてないし、厳しい部長でもなかったと思うんですが……)大量のペーパーフラワーや栞ができました。
結局、1年生後期から3年生の前期まで部長を務めました。
最後の文化祭で、私は先生から難しい題材を与えられました。生けたことのない結構太い立派な枝、と、優しい素材の花々。素材のコントラストが激しいです。
「これは……」
さすがにちょっと悩みながら生けました。いつもみたいに「感性」だけに頼らず、ちゃんと構図も考えて。基本に忠実に、でも自由に、自分のテイストを出して。
先生に出来上がりを見て頂くと、先生が笑って一言、
「さすがやなあ」
と仰いました。手直しもされませんでした。
あの時が一番嬉しかったですね。
基本に忠実に、でも、遊び心や自分らしさは忘れずに。
これは、生け花だけでなく、他の場面でも当てはまることだと思います。私は、あの時、そういう「教え」を受けたのだと思うのです。
高校では教えてくれる流派が違って、自分の好みではなかったので、部活動としては、中学時代だけで終わってしまいました。
それでも、今も、お正月や、お雛祭りなどの節目に花を生けます。
教えてくれる人もいなければ、逆に文句をつけてくる人もいないので、勝手気ままに生けております。まあ、確実に腕は落ちているだろうし、基本形しか生けられなくなっているのですが。
お花を生け始めると、今でも、しゃんと背筋が伸びるのが、とても気持ちよくて好きです。
※近況ノートに写真があります。
https://kakuyomu.jp/users/hiyuki0714/news/16818093078474106742
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