第78話 桃色の砲弾
ゆ〜ゆ〜さんを仲間に加え、改めてキキョウさんの待つ本部へ元に向かう。
ファンタジーチックなこの村の光景は、相変わらず変わらない。新鮮であり、見たことない場所であり、どこか懐かしい。
リーファもずっと辺りを見渡していて、今も切ない顔をしていた。
「リーファ、気持ちはザワザワしてないか?」
「ん、大丈夫、ます」
ほ……よかった。ここで暴走されると、こっちもそれ相応の対応をしなきゃならないし。
「ツグミさん。いい加減説明して欲しいんだけど。……特に、そのずっとくっ付いてる小娘の事とか」
状況をまったく理解していないゆ〜ゆ〜さんは、俺にずっとくっ付いているリーファを、血の気の多い目で睨み続けている。
そんな目で見ないでやってくれ。色々あるんだよ、この子にも。
「リーファって言います。今日はこの子について、キキョウさんにお願いがあるんです」
「ふーん……」
じーーーーーー……。いや、あの、見すぎです、ゆ〜ゆ〜さん。ほら、リーファも怖がって……。
「何、ます? ド変態」
「
なかったね。いつも通りだ。
ごめんなさい、ゆ〜ゆ〜さん。この子純粋なんです、いろんな意味で。
2人のやり取りに苦笑いを浮かべていると、やっと本部の喫茶店が見えてきた。まだ見えてないのに、ワクワクソワソワしてるのが伝わってくるなぁ。
ビリュウさんが扉に手をかけ、こっちに目を向ける。
ほぼ同時に頷き合い……扉を開けた。
「リーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーファちゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!! 待ってたよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
ほら来た!
飛び出てきた
リーファの前に出ると、片手でキキョウさんのタックルを受け止め……って、この人『無敵』使ってんじゃねーか、危ねぇ!
急遽、両手でキキョウさんの頭部を鷲掴みにする。
そのせいで地面が捲れ上がり、爆発のような暴風が吹き荒れ、衝撃波に似た何かが発生して周囲の葉がバッッッと弾かれた。
後ろにはリーファがいる。ここで少しでも下がったら、この子が危ない……!
「フッ……!」
短く息を吐き、丹田辺りに力を入れる。
同時に地面の奥深くに根を張るイメージで地面を踏みしめ、衝撃を地下深くに受け流すと、そこまでしてようやく勢いを殺すことができた。こんなん、俺以外がぶつかったら死ぬって……。
リリーカさんとビリュウさんは、またか、という顔をしている。さすがの体幹だ。上位陣は格が違う。
逆にゆ~ゆ~さんは倒れてしまい、いろんなところが見えそうになっている。ありがとう、眼福です。
それとは対象的に、きょとんとして首を傾げているリーファ。お前に突っ込んできたんだから、もっと慌てるなりなんなりしなさいよ。
「まったく……キキョウさん、危ないでしょう」
「あはは、ごめんごめん。てか、無敵のアタシのタックルを止めるなんて、ツグミ成長したじゃん! こりゃあ、アタシが抜かされる日も近いかもねぇ~」
と言っても、両腕の痺れが取れないくらいにはダメージ受けてますがね。
キキョウさんは桃色のツインテールをぴょこぴょこ弾ませ、リーファの前に躍り出る。いきなり現れたちっこい女児に、リーファは目を白黒させていた。
「やあやあ、リーファちゃんっ。詳しいことはリリーカから聞いてるよ! 良ければ、フードを取ってもらってもいいかにゃ?」
「フード、ます……?」
リーファがフードを掴み、俺の方をちらちら見る。そうか、俺が人前で取っちゃダメって言ったから。
「大丈夫だよ、リーファ。この人は信用……いや、信頼……信じ……うぅん……?」
「そこは言い切ってもいいんじゃないかな!?」
嘘です、嘘です。冗談です。だから胸倉掴まないで。あとどさくさに紛れておっぱい揉まないで。
「まあなんにせよ、頼れる人だから。保証する」
「……じゃあ、取る、ます」
リーファが少し震える手でフードに手を掛け……取った。
フードにしまわれていた白銀の髪がなびき、およそ人間ではありえない美貌と、長い耳がぴょこと現れる。
「キキョウさん、ゆ~ゆ~さん。改めて紹介します。……異世界からやって来たエルフ、リーファです」
「リーファは、リーファ、ます。……はじめまして、ます」
俺の後ろに隠れて、小さな声で自己紹介をするリーファ。
初めてエルフというものを見たキキョウさんは、目を爛々と輝かせて近付いてきた。
「しゅげぇ、しゅげぇっ! 本当に実在したんだ、エルフ! しかも褐色肌のダークエルフ! やっべ、すんごい美人! ツグミ並みじゃん! うわぁ、うわぁ! 美人が揃うと迫力ちげーわ!」
指で四角を作り、カメラマンのようにいろんな角度から俺たちを画角に収める。興奮してるなぁ、キキョウさん。でも気持ちはわかる。13歳ってそういうのが好きなお年頃だからねぇ。
けど……意外にも、ゆ~ゆ~さんが騒がない。魔法少女の覚醒時に、魔法を使いたいって願うくらいファンタジーが好きだと思ったんだけど。
不思議に思い、隣に立っているゆ~ゆ~さんの顔を覗き込む。
「ゆ~ゆ~さん?」
「…………」
あ……気絶してた。直立不動で、白目を剥いて。興奮しすぎだって、この人。
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