第77話 ド変態との遭遇

 なんとかクルミさんの許可を得て、ゲートを使わせてもらうことに。

 ビリュウさんが装置をいじっている間、ふとした疑問が浮かんだ。



「ビリュウさん。前に聞いたんですけど、この装置って魔法少女以外使えないんじゃなかったでしたっけ? リーファって大丈夫なんですか?」

「確かに普通の肉体では、転送時の耐久値的に死んでしまうわ。でもリーファは、異世界からこっちに来た時に無傷で通ってきている。何も問題ないはずよ」



 あ……そうか。モモチもそんなこと言っていたっけ。

 歪みの穴は、普通の人間が通ると存在が消滅してしまう。それを通れたリーファは、魔物と同等の存在……か。

 なら、この装置で魔法少女の村に移動できる俺たち魔法少女は……それと、何が違うんだ……?

 一瞬浮かんだ疑問は、現れた強い光りに包まれ、思考の彼方へ消えてしまった。

 光りに驚いたリーファが、俺に抱き着く。安心させるように頭を撫でていると、ようやく光りが収まって来た。

 目を開けると、既にそこにはリリーカさんがいて、俺たちに向けて手を挙げていた。



「ツグミ、ビリュウさん、リーファ。待ってたぞ」

「お待たせ、リリーカ。……キョウ様は、協会本部かしら?」

「はい。首を長くして待っていますよ」



 キキョウさんの名前に、苦笑いを浮かべるリリーカさん。そうかぁ、そんなに楽しみにしてるんだぁ……なんか、返ってやだなぁ。

 リリーカさんとビリュウさんが先頭を歩き、俺とリーファもついて行く。

 巨木をくり抜いたような家々や、広大な畑や田んぼ、大自然と共存している形で存在する魔法少女の村を見てか、リーファは目を丸くしてあちこちを見ていた。



「どうだ? 驚いたか?」

「なんか、その、わからない、けど……懐かしい、ます……」

「……懐かしい?」



 ということは、リーファは捕まる前はこういう場所で生活をしていたのか?

 聞こうと思った、その時。周囲から俺、リリーカさん、ビリュウさんを呼ぶ黄色い歓声が上がった。しまった、ここにいる奴ら全員、魔法少女オタクだった。

 しかしその中でも、異様に興奮している魔法少女が一人。



「つっ……つ、つつつつつつつつぐ、ツグミ……!? さん……!?」

「え? あ、ゆ~ゆ~さん!」



 俺が推しているR-15系MTuberにして、俺を過激に推しているらしい厄介オタク魔法少女・ゆ~ゆ~さんがいた。

 いやぁ、相変わらず際どい衣装と言うか、目のやり場に困る格好だ。眼福眼福。

 ゆ~ゆ~さんに近付き、ファンサービス(と言う名の俺が触りたいだけ)で手を握る。うへへ、すべすべやで。



「ゆ~ゆ~さん、お久しぶりです。こっちに来ていたんですね」

「きゃ、きゃわっ……え、ええ。ちょっとこちらの様子を見に……ふひ、でゅふ……た、たまには村の人との交流も……ぐひっ……し、しないといけないから、ね」



 よだれを垂らすのを必死に我慢しているゆ~ゆ~さん。うんうん、気持ちはわかるよ。俺だってでゅふでゅふしたいもん。

 ……これで俺の正体が男だってバレたら、殺されるだろうなぁ……。

 と、その様子を見ていたビリュウさんが、ゆ~ゆ~さんに話しかけた。



「ゆ~ゆ~、いい所にいたわね。あなたも付いてきなさい」

「え? び、ビリュウ様っ? え、いい所にって……?」

「今は少しでも人手が欲しいの。説明は後でするわ」

「は、はぁ……?」



 何もわかっていないゆ~ゆ~さんが、頭にハテナをたくさん浮かべながら言われた通りに付いてくる。

 そんな彼女を、リーファはじーっと見つめていた。



「……ミミにゃんと一緒にいた、ド変態……ます……?」



 え? あ、そういやコラボしてたこともあったな。そうか、それで見つめていたんだ。

 ……第一印象がド変態って、最悪だなぁ。間違ってはないから、否定のしようがないんだけど。



「ん? ……誰かしら、このツグミさんに抱き着いてる褐色娘は? 新しい魔法少女……?」



 俺に引っ付いているリーファを快く思っていないのか、ジト目で睨みつけて来た。



「ああ、この子はリーファと言います。彼女のことでお話があるので、手伝ってくれると嬉しいんですけど……ダメ、ですか?」



 秘技、懇願+上目遣い。



「し、仕方ない、わね。ついて行ってあげるわ……ぐふっ」



 ズキューンッ! 効果は抜群だ!

 いやぁ、ちょろいですねぇ、この人も。俺も人のこと言えた義理じゃないけどさ。



「ツグミ、お前に良心はないのか……?」

「ツグミ、ド変態とも仲いい、ます? すごい、です」

「そんな所も愛おしいわ……♡」



 はっはっは。褒めるな褒めるな。……え、褒められてるの? 貶されてるの?

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