第61話 すし詰め

 さすがに白スクを着るのは無理。だがビリュウさんがどうしてもスク水姿を見たいというので、折衷案として旧スクで入ることに。これなら透けないだろう。多分。

 まあ、うん。悪くはないけど、この全身を絞め付ける感覚って慣れないんだよな……。



「いいわね、スク水。写真を撮っていいかしら?」

「撮った瞬間、そのスマホ壊しますよ」



 自撮りをするのは問題ない。でも他人に撮られるのは嫌すぎる。

 ビリュウさんに背を向けて体を守ると、玄関からリリーカさんが戻ってきた。



「戻ったぞ。……ツグミ、お前……」

「俺じゃないですっ。ビリュウさんが悪いんです……!」



 リリーカさんにドン引かれた。死にたい。



「仕方ないでしょう。リーファが、ツグミも一緒じゃないと入らないと言うんだもの」

「な、なるほど、そういうことでしたか。……なら私も入りましょう」



 ……今、なんて?

 と聞く前に、リリーカさんの魔法少女衣装がパージ。明るい黄色の三角ビキニ姿となって現れた。

 年下とわかっていながらも、人間離れしたプロポーションに目が行ってしまう。大丈夫だとわかっているけど、なんか犯罪的で背徳的……!!



「ちょ、リリーカさん……!?」

「わ、私だけ待っているのも手持ち無沙汰だからな。手伝うのは問題ないだろう」



 言いたい事はわかるけど、うちの浴槽そんなに広くないんだけど。ビリュウさんはわかってるよね、隣の部屋で同じ構造だもんね。



「話はまとまったわね。じゃあ行きましょうか」



 全然まとまってないんですけど!? 家主の意見はフル無視ですか!?

 と言うが、民主主義の圧力には勝てず。3対1で、一緒に風呂に入ることになった。



「リリーカ、もう少しそっちに行けるかしら?」

「す、すみません。おしりがキツキツで……!」

「わぁ……リリーカ、大きい、ます」



 仕方なく風呂場に入ることになったが……目の前に、三人の肌色が見える。いや、見え過ぎている。

 リリーカさんとビリュウさんの純白の肌。リーファの褐色の肌。大事なところは小さい布で隠されているが、それ以外はモロだ。目のやり場に困る。

 ポジションとしては俺が浴室の中で、外にいるリーファの手を握っている。リーファの後ろにはビリュウさんがいて、前にはリリーカさんが陣取っていた。



「ついでに女性用のシャンプーを持って来たぞ。ツグミのシャンプーは安物っぽいからな」

「ご名答。めっちゃ安いやつです」



 さすがに髪や体を洗う時は継武の姿だ。ネットで髪の毛の洗い方等々調べてみたが、挫折した。あれは雑な俺には無理だし。

 リリーカさんがシャワーを出すと、お湯を少しずつリーファの脚に掛けた。



「ひゃぅっ……!?」

「す、すまない。リーファ、大丈夫か?」

「だ、大丈夫、ます。あぁ……きもちいい、です」



 これはいいものだと判断したのか、気持ちよさそうに手でお湯に触れる。

 それからは手際がよかった。二人が息を合わせて、長い髪を洗ったり体を洗ったりしていく。

 くすぐったいのか、その都度リーファから艶めかしい声が漏れ出た。俺の手をギュッと握って、もじもじと体をくねらせている。



「んっ、ひゃゎっ。ぁん、んふっ……!」

「くすぐったいだろうが、我慢してくれ」

「髪の毛も結構傷んでいるわね。念入りにお手入れしないと」



 ……美少女三人の、くんずほぐれつの洗い合い……俺、今は男じゃなくてよかったと本気で思う。間違いなく大変変態なことになっていた。

 時間をかけてリーファの全身をピカピカに磨き上げた二人は、そっと息を吐いて立ち上がった。



「これだけ綺麗にすれば、問題ないでしょう」

「後はタオルドライとドライヤーで髪を乾かすだけだ。リーファ、ご苦労様」

「疲れた、ます……」



 慣れないことで相当参っているのか、リーファはぽわぽわした顔をしていた。でも気持ちよくて満足しているみたいだ。



「リーファ、髪を乾かそうな。このままじゃ風邪引いちゃうから」

「うぃ。……んゅ?」



 立ち上がったリーファが、俺の入っている湯舟に興味を持ったのか、じーっと見つめてくる。



「リーファ、どうした?」

「……リーファも入る、です」

「え? ああ、いいぞ。俺はもう出るから、存分に入ってくれ」



 むしろ俺は長湯しすぎたから、そろそろ出たい。

 湯舟から立ち上がり、リーファに譲ろうとすると……肩を掴まれ、リーファに止められた。



「一緒、ます」

「……はい?」

「一緒、ますっ……!」

「えっと……それは一緒に入りたいって言ってる、ます?」

「ます」



 おーのー。なんてこった。さすがにそれはまずいだろう。仮にも男と女だぞ。

 リリーカさんとビリュウさんに助けを求めるが、二人は仕方ないという感じで肩を竦めた。



「現状、リーファが心を許しているのはツグミだけだからな。わがままくらい聞いてやるといい」

「妻の私を差し置いて混浴は許せないけど、仕方ないわね。許可してあげるわ」



 なんで前向きなのお二人さん!?

 部屋で待ってる、と言い残し、浴室を出ていく二人。浴室には、俺とリーファの二人きりになってしまった。

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