第7話 魔法少女、共闘(コラボ)する
◆◆◆
(さて、どうしたものか)
ミケにゃんの手前、余裕を見せていたリリーカだが……内心、冷や汗を流していた。
目の前にいるこのホーンウルフ、明らかにいつもの個体ではない。巨大さも然ることながら、存在感、威圧感、肌から感じる脅威……すべてが別格だ。
辺りの被害を考えず戦うなら、自分一人なら問題ない。
ただ、ミケにゃんと共闘するとなると話は別だ。
(誰かと共に戦う、か)
苦笑したリリーカが、胸の前で手を組む。
組んだ手から陽光のような光が漏れだし、凝縮していくと……身の丈を超える巨大な剣が現れた。
「こ、これがリリーカ様の武器、斬魔の聖剣……美しすぎますぅ……♡」
(それ、非公式の名前だからやめてほしいなぁ……)
事実、剣に名前なんて付けていない。魔物をぶった斬るために作り出した、ただの鉄塊だ。
それなのに、配信やニュースで魔物を両断するところを取り上げられ、今では『斬魔の聖剣』なんて呼ばれてしまっている。
若干の恥ずかしさを覚えつつ、リリーカは大剣を構えた。
「ミケ、付かず離れずついてこい。分断されたら最後、殺されるからな」
「は、はいぃっ♡ あぁ、リリーカ様に護ってもらいながら戦うなんて、贅沢オブ贅沢……!!」
もう少し緊張感を持って欲しいなぁ……という言葉は飲み込んだ。ミケにゃんの
ホーンウルフも戦闘態勢に入り、牙を剥き出しにして威嚇してきた。
「コロロロロロロロ……」
剥き出しの牙は不規則に生えていて、牙同士が擦れジャリジャリと不協和音を響かせる。
ミケにゃんは一瞬怯むが、首を横に振って構えた。
「……行くぞッ!」
「うっしゃー!!」
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ッッッ──!!!!」
ホーンウルフが咆哮の砲弾を放ち、二人は揃って左右に分かれて回避する。
咆哮の砲弾は木々をなぎ倒し、十数メートルも地面を抉った。
「うにゃにゃにゃーッ!」
ミケにゃんは常人離れした身軽さで木々の間を縫うように走り抜け、ホーンウルフに接近する。
その姿はまさに猫のようで、人間というより獣を思わせた。
巨木を駆け上がり、ホーンウルフの横から飛び出る。
が、ホーンウルフはミケにゃんの動きを読んでいたのか、前足を大きく上げて踏みつぶそうとしてきた。
「ふっ……!」
それを更に先読みしたリリーカが、ホーンウルフの前足を大剣で弾く。
硬い体毛と尋常ではない破壊力で、切断することはできなかったが、僅かに傷をつけることはできた。
その隙を突き、ミケにゃんがホーンウルフの腹部へ狙いを定め、猫の手から巨大な爪を伸ばす。
「おりゃあ!!」
勢いのまま、巨大な爪を腹部へと突き刺す。
しかし硬すぎる体毛により、火花と共に弾かれると、大きくバランスを崩した。
「かっっっった……!?」
「ミケ!」
「ッ!?」
ホーンウルフが尻尾を鞭のようにしならせ、真上から攻撃してくる。
腕をクロスして防御の姿勢を取るが、それを嘲笑うかのように吹き飛ばした。
「あがッ……!」
木々を何本かへし折るが、勢いが止まらない。
なんとか地面に爪を突き立て、ようやく勢いを殺した。
横目で、吹き飛ばされたミケにゃんの無事を確認したリリーカはホーンウルフの顎下から大剣を斬り上げた。
「ハッ!!」
「コルロッ!?」
一瞬バランスを崩すホーンウルフだが、口を大きく開けてリリーカに向け咆哮の砲弾を放つ。
ギリギリのところで、光の翼で全身を包むが、凄まじい威力でミケにゃんのいる場所まで吹き飛ばされた。
翼をはためかせて威力を殺し、ミケにゃんの傍に降り立つ。
ミケにゃんは怪我をしているらしく、頭から軽く血を流していた。
「ったぁ……!」
「大丈夫か、ミケ?」
「は、はいっ。も、申し訳ありません、リリーカ様。私が足を引っ張てしまって……」
「そんなことはない。奴は並みの魔法少女では太刀打ちできないほど強い。私でも、このままじゃ無傷じゃ済まない」
事実、あの体毛には武器の類いは効かないだろう。恐らく、銃や砲撃でも傷つけることはできない。
リリーカの剣と力を以てしても、ほんの僅かに傷をつけることしかできなかった。
なら……それ以上の力で、奴に攻撃を仕掛けるしかない。
「攻撃に集中したい。戦えるか、ミケ?」
「……それは、私を頼ってくださっている……ということですか?」
「ああ、もちろんだ」
リリーカの真っ直ぐな瞳に、ミケにゃんは頬を紅潮させ……全身の毛を、逆立てた。
「やります……やってやります! 見ていてください、リリーカ様! あなた様の下僕であるこのミケにゃんが、活路を見出してごらんにいれます!!」
(重い重い。覚悟が重い)
やる気十分。ミケにゃんは全身からアッシュグレーのオーラをみなぎらせると、ホーンウルフへ向けて駆け出した。
彼女を見送り、リリーカは大剣を胸の前で垂直に構え目を閉じる。
リリーカの体が乳白色の光を帯び、渦を巻くように大剣へ凝縮されていった。
(奴を倒せる威力を溜めるまで、およそ三分。ミケ、踏ん張ってくれよ)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます