第16話 流石筆頭騎士は格が違った
== 14 ==
びくり、と騎士が震えた。まるで理解できない何かを、目の当たりにしたかのように歪んでいる。しかし、
ぎぃん!、硬質な音が耳を叩く。だが、騎士の剣は僕に届くことなく地面に転がった。その剣には、切断された両腕がまだ付着している。騎士は声にならない悲鳴をあげ、口から血を吐きながら地面を転げ回った。
その騎士の背後から姿を現したのは、
騎士──いや、この場で正式な騎士がいるわけだから、盗賊騎士とでもしておこうか──盗賊騎士は血混じりの泡を吹きながら、伯爵たちの方を向いた。きっと、絶望に満ちた顔をしていることだろう。ざまあみろ、と内心思う。しかし、強靭な肉体を持つこの盗賊騎士を一瞬で斬り捨てるとは──ドウェインの剣の腕は出鱈目だ。絶対に敵に回したくない。
嗚呼、思考が妙に加速している気がする。これ、走馬灯……要は、死ぬ寸前だから意識が加速してるだけの奴。僕の意識は、もう限界だ。伯爵たちが何か声を上げているが、もう耳には届かない。身体がぐらりと揺れ、そのまま僕の意識は闇へと呑まれた。
== ○ ○ ○ ==
馬鹿だろう──。
おれ、アレクは思わずそう呟いていた。目の前で血だらけで倒れているのは、友人のヴィーシュだ。おれよりも背が低いくせに、おれよりも圧倒的に強いあいつが、こんなになるまで戦うなんて。確かに、ヴィーシュは騎士様達を目標にしていると言っていたけど、命を賭けてまで戦う奴がどこにいるんだ。おれたちはただの子どもなのに──そう言っていたのは、あいつ自身だろうに。
ヴィーシュを囲むように、伯爵が連れてきた衛生兵たちが救命処置を行っている。様子を見る限り、相当危険な状態だ。顔色は土気色で、生きているようには見えない。その姿に胸が傷んだ。
「バドラークよぉ……。勤勉なお前さんがこんなことをやらかすたぁねぇ……」
ドウェインさんの声が低く冷たい。普段の朗らかさとは、まるで違う。剣を教えてくれる時の優しさなど、微塵も感じられない。目の前の盗賊騎士──バドラーク某の表情も、血に染まった絶望に沈んでいる。何かを言おうとしているが、喉に短剣が深く刺さっていて、水混じりのガラガラ声しか漏れ出ない。
「騎士団長を慕っていたあんたが、こんな低俗な真似をするたぁ俺ぁ思っても見なかったよ……。ここで引導を渡してやりたいところだが、御館様がお怒りだ。楽にぃ死ねるとは思うなよ」
ドウェインさんは剣を構えたまま、一瞬たりとも気を抜かないが、バドラークにはもはや抵抗する気力がないらしい。
こんな恐ろしい場所にいるのも、ヴィーシュの指示があったからだ。あいつと一緒に訓練──いや、遊びの延長のようなものをしていた時、縄で簡単な指示を伝える方法を教わった。僕は賢くないから、複雑なものは無理だったが、ヴィーシュが工夫を凝らして結び目を使って方角や距離を示していたのだ。今回もその方法を使って、盗賊の居場所を僕に知らせてくれた。
『
あのとき、特に最後の言葉の意味に理解が及ばなかった。騎士とは、貴族を守る盾であり剣だ。人の模範足れと厳しく
だが、今はモニカお嬢様が帰ってきたことを喜ぼう。ミモザ伯爵は百面相を浮かべながら、甲斐甲斐しくモニカお嬢様の世話を焼いている。ヴィーシュは、伯爵が溺愛するお嬢様にかなり辛辣な対応を繰り返してきた。だが、あの過保護っぷりを見て、よくあんな対応出来たものだと
だが、ヴィーシュは命を賭けてモニカお嬢様を守った。それは、揺るぎない事実だ。
ヴィーシュのこの事件の解決に一役買ったことは、ひとつの武功となるだろう。そうなれば、伯爵様に取り立てられることだって夢ではない。ヴィーシュは何か、大きな目標があるから、率先してこの機会を活用する。そうしたときに、置いてかれるのは、おれだ。
これから、ヴィーシュの周りは騒がしくなる。友達として、どこまでも突っ走っていくあいつが心配だが、このままでは指を咥えて見ているだけしかできない。それは、悔しいじゃないか。
絶対に、追いつきたいと思った。兵士でも小間
RESULT...
》ヴィーシュ(●原■▲■..error。情報を正しく取得出来ませんでした。)
称号獲得!
NEW! 『
NEW! 『死を
NEW! 『
獲得した称号は、街にいるNPCから参照出来ます。
称号獲得により、クエストが発生しました。街の人に話しかけてみましょう!
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