第12話 人工的に淘汰されるのは目に見えているがそれはそれとして僕が全員ぶっ飛ばす
== 12 ==
緊張した空気の中で、モニカの恐怖は続いていた。否、限界に近かった。
しかし、
震える子どもを視界に認めると、モニカははっとなった。そうだ、自分だけ怖いのではない。子ども達だって、怖いんだ。モニカは自分の恐れを脇に押しやると、気丈に振る舞うことを決めた。少しでも子どもたちを安心させるためだ。
「大丈夫ですわ、きっと……きっと誰か……来てくれる」
きっと、の後に続く言葉に、彼女は迷ってしまった。今まで
「ヴィーシュ……」
このとき、胸中にうかんだのは、<ヴィーシュ>であった。
何故だかわからない、物別れしてしまった彼の不貞腐れた顔を思い浮かべると、すこしだけ元気が出た。
すこしだけ、頬を緩めることが出来た矢先のことだ。
唐突に、ガチャン!という音が部屋を貫いた。酔いが回った盗賊のひとりが、震えた手で酒瓶を落としたのだ。苛立っていた他の盗賊たちが一斉に罵声を浴びせ、部屋の中に流れる緊張がピークに達しようとしたその
ガタン!
乾いた大きな音が鳴り響き、蝋燭しか光源のない、薄暗い部屋の粗末な木の扉が突如として開かれた。空気を切り裂くように回転するナイフが飛び、盗賊のひとりの喉元を貫いた。血が勢いよく噴き出し、息も絶え絶えに地面に倒れる。
その光景に、モニカと子どもたちは茫然と立ち尽くす。もしこれが騎士による襲撃ならば、相手の身元を問う、誰何の叫びが飛び交うはずだが、響いているのは盗賊たちの動揺と、馬の甲高い
混乱の中、さらに短剣が放たれ、別の盗賊の肩を貫いた。呻き声が響き、直後にその男が鈍い音を立てて転がり落ちた。何かによって、膝を破壊されたらしい。足を抑え、脂汗を
負けじと、仔馬のセレーネが嘶くと、盗賊のひとりを頭突きで弾き飛ばす。倒れた盗賊の頭を素早く踏み付けて、意識を奪うことも忘れない。
この瞬間になってようやく、盗賊たちは目の前に現れた存在を認識した。得物を抜き放ち、血走った目でヴィーシュに襲い掛かる。しかし、ヴィーシュは冷静だった。懐から外のならず者達から奪った粗末な刃物を取り出すと、一歩退きながら、盗賊たちに向かって
外に出ると、階段が上へと伸びている。やはりここは地下だったらしい。その階段に、点々とついた血の跡は、小さな足跡の形をしていた。外にいた見張りを、ヴィーシュは
こんな幼子に二人も殺された──盗賊たちは、なけなしの大人としての
ヴィーシュは、命を奪うという行為に対して驚くほど無感情でいる自分自身を内心
扉を蹴り開けた当初に持っていた、両手の刃物のうち、片方はすでに投げ放ち、もう片方は倒れた男の喉元に深く埋まっている。ヴィーシュはすぐさま腰に
ヴィーシュが渾身の力で振るった角材は、容易に盗賊の手を破壊すると、その勢いのまま脳天に一撃を叩き込んだ。鈍い音が響き渡り、頭蓋骨が砕け散る。鮮やかな赤と飛び散る
子どもの姿をした彼の異様な力の秘密は、身体強化の魔術にあった。前世の知識から「魔力を使うなら、まずは身体強化でしょ」という安直な発想から、日々走り込みと棒術で極めていった結果、彼はスムーズに筋力を魔力で
ヴィーシュが次々と敵を薙ぎ倒すその傍らで、仔馬のセレーネもまた猛威を振るっていた。ヴィーシュが盗賊の
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