第8話 こんなPTで大丈夫なわけがない・・とあきらめが鬼なった(領主様の怒り発動の連鎖5秒前)
== 8 ==
<ドウェイン=アザミナ>。
ミモザ家の
不器用で融通が効かない性格から、従騎士時代には愚図だ
6年前、王都での政治に参加中に、ミモザ伯爵の妻が急に産気づいたとの報が入った。足が遅くなることを嫌った伯爵は、愛する妻の
伯爵に従っていた騎士と従騎士は全滅。伯爵も窮地に陥ったところに、鬼神が産声を挙げた。
本人が不良騎士、などと自称するのは、そういった部分での自己評価が原因なのかもしれない。
しかし、伯爵へ忠誠心は類を見ない程強く、今もモニカに小言を
「たははは、モニカお嬢も知ってらっしゃるでしょう。俺ぁすっとろいんもんで、捜索隊から外されたンすよ」
頭の後ろを掻きながら、ドウェインは微笑む。
笑顔の人ほど恐ろしいというが、まさにドウェインのことだ。
本人が言うように、自身が動くと
正直、
「もう、いつも笑顔なのは良いことですが、すこしはしゃんとなさいませ」
「面目ない」
それはそれとして、笑顔なままで言われてもあんまり説得力無いと思うよ?
「
頬が風船みたくなってるモニカを尻目に、ドウェインは
「一応ね。ドウェインさんの言う通りの振り方で、ふたりで頑張ってるよ」
「はぁ、そいつぁ勤勉なことだ。
奇っ怪な振り方とは、前世の剣道を真似た
「剣術……!
またもほっぺを膨らませて、モニカはぶぅたれる。だって、仕方ないじゃん。
騎士の剣術は主に
「今のお嬢じゃぁまぁだ筋を痛めちまいまさぁ……堪忍してくだせぇ」
「むむぅ!」
あーらら。モニカのほっぺが限界まで膨れ上がってるわ。
僕らですら、まだドウェイン仕込みの剣術を捌ききれてないのだ。筋トレを始めたばかりのモニカには、まだ棒振りすらろくに出来ないのだ。
「いいです!殿方は剣を取るなら私は杖を取りましょう!見てなさい!私はお母様のような戦場魔法使いになってみせますわ!」
「大魔法使い!いいですなぁ、お嬢。俺ぁ剣を持たれるよりも、そっちのほうが安心して見てられるってぇもんです」
「でもいずれ剣も覚えますわ!魔力が尽きれば剣!騎士を鼓舞してこその貴族でしてよ!」
「たはは、堪忍しなすってぇ…」
モニカの妄想にドウェインは顔を青くして苦笑する。本当、勘弁してくれ。
「さてまぁ、お嬢が剣を覚えるのはいずれという事で……坊たちに、ちと新しい振り方を教えよう──」
「ドウェイン
僕らに剣を教えようとしたドウェインに、従騎士が呼び止める。
「はぃ。おりますよ」と、声を張り上げる従騎士にドウェインは手を挙げる。
「事件に進展あったとの報がありました。付きましては、現場まで御同行願いますとのことです!」
従騎士は緊張した面持ちで告げると、胸に握り拳を当てる敬礼を返す。
そして、僕と従騎士がいる角度だから伺えたが、ほんの一瞬だけ口元を歪めると、首肯する。
「わかった、直ちに向かう。すまんな、坊たち。棒振りぁまた後だ。しっかり、訓練をするんだぞぉ」
「お気をつけて」
「よし、ドゥーネ。賊など、とっちめておやりなさい!」
「たはは、わかりました。それはそうと、御館様にお嬢の言葉が汚いことぁ報告しときますんで」
「な、なんでですのー!」
この世の終わりのような表情を浮かべるモニカを尻目に、ドウェインは従騎士を連れたって小走りに去っていった。
「お嬢様、流石に令嬢がとっちめる、なんて言った日には領主様が顔を青くすると思うよ」
「ぶぅ、そんなに変かしら……?」
そりゃ目に入れても痛くないくらい可愛がってる娘が、場末の酒場のウェイトレスみたいな発言してたらびびるよ。僕らが変な言葉を教えたんじゃないか、って疑われないかな。不良騎士を買収しとくか……?
なんて、無体なことを真剣に考えていたら、モニカはぶぅたれた顔からピコーンと豆電球を光らせたような表情で目を輝かせた。
「ねえ、ヴィーシュ、アレク。
と、
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