第6話 「」見事な啖呵だと感心されたがどこかおかしいだろうか?
== 6 ==
モニカの衝撃の告白に、思わず僕の思考は停止してしまったのは致し方ない事だろう。ああ、そうだ(悲しみ)。
これは嫌疑を晴らし、僕の名誉を回復しなくてはならない。
それに、これは
──後に、これが取らぬたぬきのなんとやら、と言う事を知る。
「あの時は──そう、稲妻が身体中に
「? はい、それで?」
きょとんと首を傾げる様は、ヒドインといえども可愛いなと感じてしまうが、そうじゃない。
来いよ
「あの時、ソフィア御嬢様に出会った時に、なんか、その、身体全身に衝撃を感じたのです(糞コミュ症発揮)」
「な、なんですって!?」
あれ違うこれは言おうとしたことじゃない!そして、えっ、なんで
いや、
お貴族様の逆鱗に触れるような事をしたら無礼討ちとかありそうだ。今の話題の路線を続けるのは不味いと判断して、僕は更に頭を
「えと、それに、モニカ様は今、この地で人
「……把握、しておりますわ」
「流石でございます」
おお、これで知らなかったなんて言われたらどうしようかと思った。僕は称賛の言葉を偽りながら、
ちなみに、人攫いの
子どもを狙った誘拐は、既に未遂を含め、僅か二ヶ月の間に十数件起きており、ミモザ伯爵家の騎士は毎日これの警邏に追われていた。
これは伯爵家に対する宣戦布告とされており、騎士達は威信をかけて
そりゃそうだ。ミモザ伯爵家の
『ウチの
現在、子どもたちは必ず大人の監視下の中で暮らすように徹底されている。
僕らはいいかだって?ああ、うん。いいのいいの。何故なら、これは伯爵様の慈悲でこうしている訳だから。
僕らミモザ伯爵家使用人達もこの事件に全力で協力することを約束しており、通常時とは異なる勤務形態の騎士や騎馬の補助を、一手に引き受けてるのが平民の使用人達だ。なので、今も飼い葉の運搬やら飲水の確保及び、
必然、使用人の子ども達は親の庇護下にいないから、大変危険な状態だ。
しかし、デキると噂の伯爵様は違った。現在、緊急勤務形態な騎士様達の修練場や食堂を開放し、そこに使用人の子ども達を集めて、非番の従騎士や力仕事に不向きな使用人の親などが面倒を見るといった、託児所みたいな
休日返上を余儀なくされた従騎士や綿密な警邏を任された騎士からの評判は悪いが、使用人一同は伯爵様に大層感謝されているそうだ。
で、まあそんな子どもが
思考を戻そう。
領主の娘であるモニカとしても、
「僕はあの時、ソフィア御嬢様に出会って、感じた衝撃を忘れられません。あの時の衝撃は、何だったのか。その答えを見つける為、ソフィア御嬢様とまた
だから、
たしかに、今は役に立たないかも知れません。ですが、今役に立たない事は、努力を
長々とした言葉を言い切り、モニカを伺う。
これは僕の本心でもある。
ならば、それを埋めるためにどうするか?
──努力するしか、ないよね。
おファンタジーなノベルだと、騎士は随分安っぽく書かれているが、騎士という
前世では適当な大学生活を送って、適当に行き着いた先でブラックな
でも、今世は好きな推しがいる。んでもって、その推しは危険に愛されているってわかってるのなら。
露払いしたいとおもうのは、いちファンとして当然の帰結である。
モニカの
その目には嘘偽りは許さないといった、上位者がこちらを値踏みするような、そんな意思を感じた。
「騎士は狭き門です。今、この時は役に立たないかも知れない。けれども、僕は役に立たないまま終わりたくない。だから、頑張るんですよ。
それが、答えです。モニカ御嬢様」
其の為の鍛錬だ。
言外にそういった意図を込めて、僕は
モニカはきゅっと口を引き絞め、眩しいものを見るように目を細めたあと、温かい目でこちらの目をじっと見つめ返した。その表情は、子どものくせに、どこか慈愛を感じさせるような温かさがある。
何故だか、僕はすこしだけ気恥ずかしくなって、頬を掻いた。
「なるほど。貴方は騎士になりたいのですね。そして、それがスタートラインに過ぎないと……」
だ、誰だこいつ。
モニカは憂いた目を伏せ、胸に手を合わせると、独り言のように呟く。傍目から見ると、深層の御令嬢みたいに見える。いや、そんな優しいものでもなく、これは……。
──あれ、僕なにかやっちゃいました?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます