第2話 僕の怒りが有頂天に達っする前
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さて、それでも時は経つもので、はや5年ほど経った。
愛想もなく、う◯ちをしても
流石に5年も経てば、怒りも薄れる。いや、それよりも前に多少は親への態度を軟化させ、まあ無愛想なガキ程度にはなった、と思う。でも、腹の奥底には転生されたことへの憤怒が居座ったままだ。居るなら出てきやがれと、神を呪う日々だ。
そして、転生モノのお約束かどうかはわからないが、魔法という不可思議なちからがある世界だった。知ったこっちゃない。
こちとら、魔法だ魔法だわーいわーい、とよろこぶようなら死にたいなんぞと願っていない。
それでも、社畜の習性からなのか、それともやさしい親から異端申告されるのを避ける為か、定かではないが、最低限度の生活魔法は身に着け、親の仕事である庭師のしごとを見て覚えはじめていた。
随分可愛げのない、現金な思考である。 まあ、こちとら生活があるわけだし。転生してしまったものは仕方ない。
今度はしっかりと、自分が満足するように生きてみよう。ただ”生きる”んじゃなくて、そうだな。家族を護れるような人になって、家族と一緒に笑えるような生き方が出来ると、いいなあ。
──なら、もうちょっと真面目に魔法やら知識を学ぼうか。知識は忘れることはあっても、腐ることはない。ただ、
そうそう、知識といえば。
この国は【セプテン・アルクス】という名前だ。
魔法というものがうまいこと文明の起爆剤となり、【ヴィラス・アルクス】と呼ばれる国から独立を勝ち取った、近世のヨーロッパぐらいの文明度である国であるらしい。
かれこれ独立して500年ほど経っているが、未だに【ヴィラス・アルクス】との確執は収まらず、小競り合いが続いている。
相手が【
魔法がとても身近な存在で、誰もが当たり前のように魔法をつかえるし、たとえ使えなかったとしても迫害されることはない、と思う。魔道具といった、現代でいうところの機械みたいな存在があるので、生活する分には困らないらしい。
ただ、魔力量の大小で人生が左右される程度には、魔法という存在は現文明と紐づけられている。また、他のおファンタジーな作品とは違う要素として”
魔触部位とは、魔法を
よくあるおファンタジーだと丹田やら心臓やらに魔法を司る部位があって、そこから血流を辿ってうんたらかんたらといった工程を踏んで魔法を発動する、というものが定番となっているが、この世界では魔法を司る部位がひとりひとり違う。
例えば、肺が魔触部位のものなら、単純に詠唱に
足が魔触部位なら健脚、腕ならば剛腕、頭なら他と一線を画する明晰な頭脳などなど、魔法を練り上げる為の器官となった部位は、その人が最も発達しやすい部位として生まれて育った時に出来上がる、らしい。
というのも、魔触部位がはっきりとするのは6歳ほどで、まだ僕は正確な位置が判明していないからだ。
また、この魔触部位がおおきければおおきい程優れた魔法使いになりやすい、らしい。又聞き情報ばかりだから、そのうち真偽を確かめてみようか。真面目に生きることを志した訳だし、こういった知識は僕の血肉になるからね。
神官や魔法に長ずる職のものに育って欲しい部位を撫でてもらって発達を願う、という文化があり、しわくちゃの如何にも人が良さそうな神官やら、とんがり帽子にローブといった魔法職ですと自己主張してそうなおじさんおばさん、高級そうな衣服に身を包んだ貴族に、僕はよく背中や頭を
そうそう、ファンタジーの定番、『貴族』という存在も居る。
近世の世界観でありながら、封建的な統治制度で、優れた魔法使いが国に取り立てられて貴族になったりもするそうだが、基本的に貴族の身分と領地は世襲されるものだ。はいはい、ファンタジーファンタジー。
親世代の話は情報の塊だ。すこし耳を傾けるだけで欲しい情報はさておいて、何かしらの蘊蓄が手に入る。真偽を確かめる
ついでに、庭師仲間の子どもも紹介されたが、そっちは何を話したかあんまり覚えてない。辛うじて、子どもの名前が<アレク>、という名前だけは覚えている。やけに快活で顔立ちが整った子で、かけっこも速くて機転が利く子だったなー、といった程度の認識だ。
あ、僕の今生の名前は<ヴィーシュ>。平民だから姓はない。父<ササン>と母<サーシャ>の子、<ヴィーシュ>と名乗るのが平民流らしい。
で、割と頻繁に酒盛りを開催しておふくろにドヤされる親父なんだが、寡黙で不器用といった感じの人だ。年中眉間に皺が寄った気難しそうな顔をして、実際仕事に対しては気難しいが、私生活においては無愛想な寂しがりやといった印象を受ける。基本、むっつりしてるんだよな。だから、僕がこの世に嘆いている時でも見離されなかったのかも知れないな。
おふくろは小柄で快活。可愛らしい感じの美人さんだが、この世の常なのか怒らせると怖い。でも、最終的には笑って許してくれる、優しい人だ。
ふたりの年齢は、たぶんだけど
仕事が忙しすぎて、結婚なんて考える余裕がなかった僕よりよっぽどしっかりした大人たちだ……。今生もおひとり様を貫くかもしれないけど、まあ、そこは許して欲しい。
そんなワケで、僕は今見える
そして、
目が覚めるような輝く
愛くるしさに満ちたかわいらしい
貴族の子どもとしてはどうなのかと思う、ほっそりした頬。まだ未熟な肢体には紫紺のドレスを纏っており、可愛らしい仕草でこちらの様子を伺いっている。
嗚呼。そうか、と。
その
前世で僕の最推しだった娘であり。
『悲鳴の差分がシナリオの数だけある』と言われる、美少女ゲームの
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