第15話 ゲームの舞台
スコルがメモしている乙女ゲームの舞台として登場する国は8つだった。
まずは現在俺達が居るプロムナ王国だ。人間優位主義を持っていて、耳長属や毛長族など人間族以外を亜人と呼び差別を行っている国だ。
次はプロムナ王国の西側2つ先にある国がラステア聖国だ。400年前の聖女が生誕した場所にあり、人間族至上主義を掲げる国だ。人間族以外の種族の侵入を許さないという姿勢を取りながら、耳長族狩りの奴隷商の通過を黙認し対価を得ている権力の高い聖職者が多い。
その次がプロムナ王国とラステア聖国の間にあるスレイ公国だ。海洋や河川などの水運が盛んで周辺国の中継貿易をしていて成立している。周辺に比べ国土は小さいけれど経済力の高く、大きな商人ギルドや傭兵ギルドを持つ事で独立を維持している。民族協調というお題目を掲げているけれど、耳長族や魚人族の狩りを行う奴隷商人の多くがスレイ公国を拠点としている。周辺国で一番大きな麻薬や違法魔道具などのブラックマーケットがあるのもスレイ公国の特徴だ。
そしてその三国の北側にあるのがヴィクル帝国だ。北の大山脈に住む毛長族との交流が盛んで耳長族や竜鱗族とも対等な関係を築いていて、スレイ公国と違い完全な民族協調を達成している。北部にある森林地帯の内側を獣人族の自治領としているのも特徴で、皇族は人間族が多数ではあるけれど、人間族以外の血も受け継いでいる。
その他は東方の大砂漠にある竜鱗族が治めるドラゴラ首長国。西の大森林にある耳長族が治めるエルブンガルド評議国。南の太洋沖にある魚人族が治めるマーマル諸島連合国。北の大山脈にある毛長族が治めるドワルド連邦国が舞台として登場するらしい。
大山脈や大森林や大砂漠や太洋沖の先にもいくつか国はあるけれど、それはゲームの舞台には登場しないようだ。
スコルは竜鱗族や魚人族や耳長族や毛長族や獣人族を、リザードマンやマーマンやエルフやドワーフやビーストと表記していた。ゲーム的な呼称がそうなっているのだろう。
ゲームの開始はスコルが15歳になった時から始まるらしい。そして3年間の学園生活で勇者の1人を攻略していくといった事が前半のストーリーらしい。
それが終わると突然ヴィクル帝国で代替わりが起こり、皇太子を飛ばして皇太孫が帝位につく事になる。
その直後ヴィクル帝国はスレイ公国を電撃的に侵攻して併合してしまうらしい。その時スコルは聖女認定を受けるためラステア聖国を訪れていて、その後に続くプロムナ王国への侵攻という難を逃れる事になる。
その後ラステア聖国が代替わりした皇帝が闇の妖魔に導かれた魔王であることを宣言し、聖女とそれに同行していた7人の勇者と共に討伐に向かい倒すというのが後半のストーリーらしい。
ちなみに7人全員を攻略後に解除されるハーレムルートをクリアし、そのデータでリスタートすると裏ルートに進めるらしい。
スコルは学園で亜人差別反対を訴え退学処分となり、ヴィクル帝国に亡命したあと、光魔法の腕を買われ宮廷治癒士になるというルートだ。
舞台に登場する人間族、竜鱗族、耳長族、魚人族、毛長族、獣人族、妖精族の協力を得て、腐敗しているプロムナ王国、ラステア聖国、スレイ公国の大政を転覆させるといった流れになるようだが、その時皇太孫が婚約者を殺されるといった悲劇があり、闇の妖魔に魅入られてしまうという事が起きる。
皇太孫は他の皇位継承者を排除して皇帝につくとそのままスレイ公国、プロムナ王国、ラステア聖国に侵攻し、さらに他種族の国へも侵攻しようとする。
その時にスコルが闇の妖魔を排除する事で魔王は沈静化し、その後は魔王だった皇帝と幸せになるというのが魔王攻略ルートのハッピーエンドらしい。
『魔王側の方が正義って感じだね』
『自身の婚約者がスレイ公国の奴隷狩りに捕まり殺されるのが魔王化する原因だもんね・・・』
『裏ルートのスコルは婚約者が殺されたあとに闇の妖魔を排除し、慰めた事で死んだ婚約者の後釜に入る訳か・・・胸糞悪いな』
代替わりした皇帝の婚約者は耳長族だった。故郷であるエルブンガルド評議国に帰国途中に奴隷狩りに魘われる事になる。
『要は現在の帝国の皇太孫の婚約者を殺されなければ魔王化は起きないって事なのかな?』
『そうみたいだね』
日本人であった俺は人種差別とは疎い環境に育ってきた。小学校も中学校も日本人ばかりだったし、働き出しても直接海外の人と知り合う機会は無かった。日本に差別は無かったとは言わないけれど、俺の身内にそういった事が起きているという事は無かった。
聖女候補はスコルで確定している。彼女は前世で俺を殺した女であり、今は逆ハーを目指すビッチだ。
俺を殺した事はマーニが激怒しているけれど、俺は不思議とそこまで怒りが湧かない。
けれど俺はビッチが嫌いだ。処女酔という訳ではない。親分との付き合いで風俗に行くこともあったし、あっけらかんとそういう事が好きという女の子を可愛いと思った事もある。
彼女は快楽としての行為が好きな人で、俺には男好きとは少し違っていたように見えていた。彼女は特定の男は作らず、俺には彼女が出来たら大事にしなよと言っていた。俺が付き合って欲しいと言っても仕事が辞められないからと断って来た。お金が無いのかと聞いたら、お金はあるけど、不特定多数との快楽が辞められないから続けると言っていた。
俺には良く分からなかったけれど、彼女は壊れていて、風俗で働く事は自傷行為のようなものだったのだろうと今では思っている。
それに対してスコルの方は俺の好きなタイプではない。イケメンを侍らせるのが好きで、それ以外の存在を無視するタイプだ。男を自身を着飾るアクセサリーだ思っていて、飽きたらポイしそうでもある。
風俗で働く事を辞められない人と同類に思う人も居ると思うけど俺はそうは思わない。好みと言えばその通りだと思う。
ただ俺は風俗を辞められない女性は受け入れられるけど、スコルのようなビッチは受け入れられなくて、身近に居たら不快に感じる事が間違いないからだ。
『どうするか決めた?』
『とりあえずスコルからは離れようかと思う、ついでに聖女を育成させてしまうダンジョンコアは回収してしまえないかな』
『どうやって?』
『プロムナ王国は、冒険者達に対しては夜間でのダンジョン探索活動を禁じている、そのくせ聖堂騎士団にはダンジョン内での野営を許しているけどな』
『確かに』
『だから夕方にダンジョンに侵入し、朝になる前にダンジョンコアを回収して脱出する』
『聖堂騎士団とダンジョン周辺の家にも被害が出るかもしれないよ?』
『聖堂騎士団はコラテラルダメージだと思うよ、それにエリート意識が強くて、冒険者達の事を見下してて嫌いなんだよね』
『確かに嫌な奴らだったね』
『周辺の住民は義体と聖獣達で被害を抑えようと思う』
『なるほど・・・』
聖堂騎士団が入っている間、冒険者達の稼ぎはかなり制限されていた。無茶な階層に行くか、王都周辺の野外での魔物討伐や採取や商人の護衛任務などをしていたのだ。
聖堂騎士団が集めたポーションは、大聖堂で水属性の魔術で出した水で希釈され効果の低い回復薬に劣化させられ聖水という名で販売されていた。
10分の1に希釈されているのに、冒険者がギルドに卸すポーション価格の2分の1の値段だ。ちなみに教会以外がポーションを希釈し聖水と同じものを作ることは背徳行為と言われて聖堂騎士に連れていかれ、金貨10枚払わないと異端審問を受けて処刑されるらしい。
乙女ゲームというのに随分と血生臭い制度だ。こんな描写がゲームにあったのだろうか。この舞台となった乙女ゲームをしていないため、その辺の事は良くわからなかった。
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