第7話 パイタッチ
ババァの所で、蜜がある花を探して味わったり、カッコいい虫同士を戦わせたり、一面の星空を飽きることなく眺めたりと10日程のんびりと過ごした。俺はずっとこのままでも良いかなと思ったけれど、マーニがスコルの様子を確認したいと言い出したので王都に向かう事になった。
向かったといっても王都には既に何度か来たことがある場所なので、マーニの瞬間移動ですぐ訪れる事が出来るようになっていた。王都の外壁を文字通り飛び越え、声貴族の屋敷が並ぶ地域に行き、個人的に貴族街の中でも2番目に立派なバラティーア公爵家の屋敷を発見した。
窓ガラスから中を覗き込んでいくと、2階の部屋でスコルを発見する事が出来た。
スコルはなかなか立派な個室が与えらていた。俺は窓が空いて居る部屋から屋敷に入り、廊下を伝ってスコルの居た部屋に向かった。
スコルの部屋の前で待っていると、使用人がスコルの部屋をノックした。そしてそのまま入ろうとしたので、空いたドアの隙間からスコルの部屋に侵入していった。スコルは勉強中なのか机に座り紙に何かを書いていた。
スコルは村に居る時に、紙と書くものをねだっていた時があった。けれど村で紙は村長と教会の神父だけが数枚持っているという程度の貴重品だった。そのためスコルに紙が与えられる事はなかった。
バラティーア公爵家は財力があるためスコルに紙と羽ペンを用意されていた。
スコルは部屋に使用人が入って来た事で、紙に何かを書く手を止めたようだけれど。使用人が入って来るのが慣れているのか、「ご苦労様」と言ったあと紙に何かを書く作業に戻った。
使用人は、部屋にあるベッドの皺を伸ばしたり、ソファーの上のクッションの位置を元に戻したり、部屋起きのタオルの使用具合を見たり、水差しとコップを交換したり、空気の入れ替えの為に窓を開けたり、部屋の奥に強い光が入らないように薄手のカーテンを引いたりといった用事を終えたあと、スコルの邪魔をしないよう、静かに部屋を出て行った。
スコルは羽ペンに苦心しながら小さい手で一心に紙に何かを書いていた。
時々空を見上げてウーンとうなって居るので、何か思い出しながら書いているようだった。
使用人が出て行ったあと、スコルの背後からこっそり近づき紙をみると、そこに書かれているのは日本語だった。読んで見るとこの国の周辺の事を書き留めているようだった。
ダンジョンで何が見つかるかとか、西の大森林へいく方法とか、勇者候補の名前とか特徴とか、そんな内容が見て取れたのだ。魔王と戦う聖女候補と言う事で、そんな事を習って居るのだと思った。
スコルが俺と同じ日本からの転生者だとは思わなかった。けれどスコルが早熟で、母親との別れが平気で、村人では知りようが無いことも知っている理由については、それで理解するこ出来た。
部屋の状況からスコルは大事にされている事が分かったので、俺はその場を去る事にした。
スコルに日本人としての記憶があるのは親近感が沸くけれど、信用出来るかまでは分からないと思っていた。大人だからこそ狡猾に騙して来る可能性が無いとは限らない。
俺も感じて居るが妖精の力は結構強い。肉体的な耐久力については試してないので分からないけれど、レイという光線魔法は城にいる直接的な言葉だと特務騎士という意味を持つ俺が魔法兵と呼称している連中の攻撃魔法より威力が強かった。
そのレイもマーニのスヴェルという闇魔法で完全に防がれる代物なので、同じ闇魔法を使うという魔王には無力な存在だろうけれど、通常の対人や対魔物についてはかなりの優位性がある力だと感じていた。
だからこそこの世界の人は教会の玄関の上に光の妖精のステンドグラスを掲げるのかもしれない。もし俺が油断したら捕まって利用されてしまう可能性があると思ったのだ。
部屋にある空のアンティーク調の鳥籠は、インテリアの可能性もあるけれど、俺を捕まえておくために用意された檻として置かれている感じがしている。
俺にはマーニが居る。日本の思い出話をして異世界での孤独感を解消する事にはマーニが居るだけで大丈夫だと思う。
えっ?マーニも俺が居るから平気?ありがとうよ。
スコルが日本が恋しくて寂しそうにしているなら接触はしたかもしれない。でもあの様子だとその心配は無さそうに思う。とても楽しそうに紙に日本語を書き続けているからだ。
スコルが目にしたダンジョンで見つかるものの記録を見たので、俺は行ってみようと思った。
地下10階のフロアボスを倒すと体力回復の指輪。20階のフロアボスを倒すと光属性強化の腕輪。30階のフロアボスを倒すと状態異常を防止する髪飾り。40階のフロアボスを倒すと闇魔法耐性が付く首飾り。50階層のフロアボスを倒すと4属性の魔法に耐性が付く聖衣。60階のフロアボスを倒すと聖獣を召喚出来る笛。70階層のフロアボスを倒すと消費魔力が半減する杖。80階層のフロアボスを倒すと空を浮遊できる靴。90階層のフロアボスを倒すとで空をかける翼。100階層のフロアボスを倒すと分身用の義体。とスコルは書いていた。
なんか聖女に装備させて魔王を倒させるためのものばかりな気もするけど、聖女育成の為にババアあたりがダンジョンを作った可能性があるので気にしない事にした。
ダンジョンがもしそういうものなら、聖女をそこに導いて修行させるのがババアの「導け」の意味なのかもしれない。けれどダンジョンがどういう所なのか知らなければ導きようが無い。それに俺は分身用の義体が出せる宝玉に少し期待していた。もしかしたら義体がマーニの体になってくれるものなのではと思ったからだ。
えっ?何で体が必要なんだって?そりゃあそれだよ、色々キャッキャウフフしたいんだよ。
何その反応。いやそんなことする気は無いよ?だってマイサンも無いし、穴も無いしさ。
でも空を見上げて寝転がって居る時に、手を握ってくれたり、頭撫でてくれる存在が欲しくない?
えっ?私もして欲しいって?するよ、するする。だって憧れてたんだもん。だから義体に胸とかあったら揉ませて?
何?嫌なの?いいじゃんちょっとぐらいっ!俺の体から想像するに、突起もないツルーンペターンな体になりそうだけど、100億分の1ぐらいの奇跡で義体の胸が膨らんでるかもしれないじゃん。いや義体がマーニの体になってくれるのかも分かってないけどさ。夢ぐらい見たいじゃんよう。
いやスコルと仲良くしとけば将来揉ませてくれるかもしれないよ?でも体格差考えて見てよ。あっちは優しく手を握ったつもりでプチっとされたり、頭を優しく撫でたつもりであっ頭取れちゃったみたない感じにされるかもしれないんだよ?
えっ?泣いてねぇよ。だって涙流す機能なんて無いんだからさ。というか目を閉じても手で覆っても、見ようと思えば見えてしまう頭の部分の目っぽく見えるもの、本当に目なのか良く分からないんだよね。
えっ?胸に手を添えるだけなら良いっ?アザマスっ!
テンション上がりすぎてキモいって?良いじゃん。それだけ嬉しいんだよ。女の胸に触れるってのはよぉ。
口にふくむのも好きだろうって?そんなの当たり前だろうっ! 人間が世にい出て最初に口にする物だぞ? 魂に刻まれてるんだよ、魂によぉ。
必死だなって、良いじゃん必死でもっ!遠慮してたらチャンスはゼロなんだぞ?強引に迫ったら揉ませてくれる可能性が1%あったとしても、迫らなければ0%なんだよっ!
ムード良く誘えば揉み放題ふくみ放題になるかもだって?いやだってマーニって俺の事全部知ってるじゃん。前世の時からずっと一緒じゃん。隠し事なんて出来ないじゃん。女をどういう目で見てたかなんてバレバレじゃん。
よしよしって良いよもう。仕方ないんだしさ。でも体出来た時のパイタッチの予約はしたかんなっ!忘れるなよっ!
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