第5話
色々と考えた結果、壺を作ろうと思った。粘土は土を掘ればあるはずで、壺は魔法で作れそうなのでとりあえず試してみる。確かに、わらび粉を作るだけであれば壺は必要ではないかもしれないが、今後簡易的な冷蔵庫としても扱えそうな壺を持っておいて損はないと思ったからだ。さらに将来的には、味噌なども作れると嬉しいと思っている。本当は醤油もと言いたいところなのだが、醤油は使ったことがないのでわからない。ただ、味噌の上澄み液は、醤油に近い味がすると言われていると聞いたことがあるのでそれを集められれば良いなと思う。
またその他のものの保管にも壺は役に立つと考えられる。さらに、小さな壺が作れれば少量の調味料の代わりにも便利なので作れると料理が一気に楽になると思っている。それに調理中に使いやすいのも良いポイントだ。
その日はもう日も暮れていたため帰ることにする。家に帰ると、今日は獲物を捕まえれなかったのか?と兄たちから聞かれたので、取れなかったと言っておいた。どこか嬉しそうな顔をしていた。なぜかこのような態度を続けられているために、僕はあまり兄たちのことは好きじゃない。自立できるようになったら早く家を出て行こうと思う。
次の日になり、いつも通り水を出して山に向かう。ガイさんの小屋に行くと鍵が閉まっていたので、先罠を確認しに行くことにした。今日は残念ながら獲物は掛かっていなかった。罠以外でも魔法を使えば獲物を取れるかもしれないが、今はあまり必要性を感じていないのでまた今度にしようと思う。そうしていると、ガイさんが小屋にやってきたので鍵を開けてもらった。鍵といっても簡易的なもののようで外から開けられるらしい。誤って動物が中に入るのを防ぐために行なっているようだ。
それから昨日の塩につけたお肉を見に行く。すると漬かっているような気はする。美味しく食べるのが目的ではあるが、何より日持ちをさせるために塩はかなり多めに入れている。そのままではとても食べられたものではないと思う。スープなどに入れて食べるのが良いと思っている。その時に燻製されていると良い香りがしてスープもより美味しくなると思う。しないよりした方が美味しくなるのは間違いない。
一応味見のために塩漬けしたお肉を一枚炙って食べてみる。やはり塩辛い。これはあまり美味しいとは思わない。どこか野生的な香りもするのでこれも消したいと思った。ジビエが好きな人からすると、むしろ残してある方がいいかもしれないが、僕は苦手なのだ。燻製をしてみることにする。
お肉を持って昨日燻製器を使った場所に出る。ヒッコリーのスモークチップも乾燥しているようでちょうど良い塩梅だ。木の網にお肉を並べ燻製器の上の方に入れる。それから、下にスモークチップを並べて軽く火をつける。煙が出てきたところで魔法で入り口を塞ぎ燻製されるようにする。
この世界では初めてだったので火が消えていないかなどを確認するために、目の前にずっといた。しばらくすると、懐かしい燻製の匂いがしてきた。一人で、チーズや豚肉などを燻製したことを思い出してしまい、とても食欲がそそられたが、ここにはないことを思い出す。残念だ。早く美味しいお肉やチーズが食べたいものだ。燻し終わると、ガイさんがやってきて良い香りがすると言ってくれたのもあり、できたものを一緒に食べてみることにした。
燻製にはなっているが、火が入っているわけではないのでまずは火を入れることにする。軽く炙ってから小さめに切ったものを食べる。燻して香りがついただけのはずなのにかなり美味しく感じた。塩辛いはずなのに、この世界に来てから1番美味しいと感じてしまった。だが、僕が求めている美味しい食事とはいかない。ガイさんは結構これで満足しているようで作り方などを聞かれたので教えた。
その後、ガイさんが野菜と鍋を持ってきてくれてたので燻製肉のスープに作ることにした。スープには、いつものおいしくない野菜たちを入れるのだが、この世界に来て初めての料理ということもあり張り切っている。あまりガイさんを待たせるわけにもいかないので、早速調理に取り掛かる。まず各野菜に合った調理をすることにした。余談だが、今は炭火を使って調理をしている。炭火を使った料理はそれだけで美味しくなると僕は思っている。例えば炭火で炊いたご飯と、炊飯器で炊いたご飯では、圧倒的に炭火で炊いたほうが美味しいと僕は考えている。なので今回は炭火を使いたかったのだ。
野菜をそれぞれカットしてから炭火で火を通してから、燻製肉のスープに入れる。それから、最後に軽く下拵えした山菜を入れて完成だ。あまり料理とはいえないかもしれないが、良い香りがする。久しぶりに食欲がそそる香りだ。ガイさんも待ちきれない様子だったので、早速お皿に注いでいただくことにした。
スープは塩で味をつけただけのはずが美味しかった。ただおいしかった。久しぶりに料理と呼べるものを食べた気がする。ガイさんの口にもあったようで、僕もガイさんもいつのまにか鍋にあった全てのスープを完食していた。全部完食したにも関わらず、まだまだ僕は食べれると思っている。ガイさんも同じようで量が足りなかったようだ。今度は多めに作ることを決心したと同時に、スープにとても満足するのであった。
今度は時間をかけておいしい野菜を魔法で作ってからスープにしたいと思った。今度野菜を山で育てられないか試してみようかと思った。ガイさんにはまた今度お礼をするが、今までお世話になっていたから、スープを作る事で少しでも恩返しになっていれば良いなと思う。
異世界で和菓子の布教を目指して @kuma06830
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