第7話


「…昔ある所に少女がいた…成績優秀、でも家には絶望的に金が無かったから地元の公立にしか行けなかった。そこはまぁ治安が悪くて毎日少女は虐められた、その日も屋上で酷いイジメを食らってた。みんなから「死ね」「臭い」「ブス」殴られ蹴られレイプ紛いな事も…挙句遺書まで書かされてね、誰も助けてくれないならもういっそ金網を飛び越えて死んだ方が楽だと思った時に助けてくれた奴がいた。そいつは見ない顔で制服もまともに着られてない奴だったけどあっという間に虐めてた連中を倒してくれたんだ、女の先輩もいたけど関係無しに全員、物凄く強くてね」

松田も名城も黙って涼木の言葉に耳を傾けていた

「そしてそいつが少女に言うわけさ「群れなきゃ痛めつけられない連中になんか負けてんじゃねぇ、殺す気でやり返してやれ」って少し片言の言葉で。でも殺すなんてそんな勇気はない、怖いって少女が言ったらそいつ「なら心の壊し方を教えてやる、よく見てろ」って言ってさ?何するかと思ったらタバコを咥えながら落ちてたボールペンでリーダー格の足刺しちゃったんだよ。「もうこいつに手を出すなよ?約束しろ、またこんな事してみろ全員歯を全部無くして全身215本の骨を折った後にトラックにダイブさせる、そしてお前らの家に火をつけて家族も全員殺す、お前らの友達も殺す、全員顔を覚えたからどこに逃げようが必ず見つける、俺はやると言ったらやるぞ、お前らを殺すなんてわけないんだ…汚ぇな漏らしてんなよ…見てみろ、死なないが脅せば心は壊れる、心を壊せばお前を痛めつける事は無くなる。やられたら都度やり返せ、そこに性別も年齢も関係ない、そうすりゃお前が泣く心配が1つ減るだろ?だから負けるな…悪い事をしてないお前が泣くなよ」って少し笑いながら頭を撫でてくれた…もう無茶苦茶だよね、騒ぎを聞きつけた教師が大勢来てそいつを連れてったけど次の日から見なくなり聞いたら転校してた。少女が聞いた噂じゃそいつどうやら親がとんでもない事をした息子で海外で訓練までしてたとか…それでソイツは徹底的に悪者になっててねぇ…」

名城はハッとしたのか手を口に当てながら

「?!それって…?!」

「気になって調べたら出るわ出るわ悪口、罵詈雑言、誹謗中傷…でもその少女にはそんなに悪いヤツに見えなかった。イジメから助けてくれたヒーローだったから…それから十数年くらいかな…そいつがガラムトラドで無茶して死んだって記事を読んだ。当時も死んで当然的な風潮だったよ…それから情報を集めるようになった、少女を助けた…虐められっ子を助けるような人が悪いハズが無い!世の中が隠している真実を知りたいって。思えばそれがキッカケだったんだよ。でもやっぱりトコトン悪者扱いだった、で情報屋として食っていけるようになった時、そいつにそっくりな奴を見かけた。調べたら名前が変わってたけどソイツに間違いないよ。喋り方とかたちふるが全然違ったけど笑い方が昔のままだった…いつかお礼を言いたかったけど死んでたらあの世に行かないと言えないからね」

そういいドアノブを回しながら

「アンタがこの国の連中を嫌って恨む気持ちは痛い程分かる、だからアンタがこの国を滅ぼしたいなら好きにしたらいいでもね?アンタはその少女からしたらヒーローだ、そんなアンタが結果論に後付けの理由付けして腐るな。そんなだと助けて貰った側は惨めになる…アンタに託されたその名前の生き方と「本当の名前」ちゃんと噛み締めなよ。…生きてて本当に良かった…あの時助けてくれてありがとうね」

語り終わると振り向き名城にスマホを投げた

「…これは?」

「今朝からかな、弟村を庇う動画が何本かみた、カリフォルニア州副知事や女の子、それにSNSでは弟村に救われたって書き込んでる奴もいる、お前が殺すと言ってる人間には弟村を理解しようとするこういう人間も含まれるんだぞ」

そういい涼木は部屋を出た

名城がスマホを操作するとブロンドの髪で凛々しい女性が喋っていた


ー隠れて人を悪く扱うのは卑怯者の仕業よ!私の知ってる日本人はそんな事しない!フミト・オトムラが居なかったら私はロッシーニの部下に殺されていた。フミトが守ってくれたからここにいる!フミトが罪を犯したなら必ず自首するわ!それをしないのは訳がある。逃げる事は良くないけどそれを寄ってたかって憶測で物を言うのはやめなさい!そんなものは正義感でも何でもない!いいですか?!万が一フミトの身に何かあったら私は日本政府に抗議します!ー


「社長…?!これ!例の…?!それにこっちの動画は…!!」


ー私、広瀬 音羽はライズ事件の被害者の一人。みんなが悪者にしてる弟村さん、名城さん、松田さんが居なかったら私は海外に売られていたの!誰も私を助けてくれなかったのに弟村さん達だけが親身になって話を聞いてくれた…逃げてるってことは弟村さんには何か理由がある!でもあの人は悪い人じゃない!なのに知りもしないで弟村さんや松田さん、名城さん達悪く言うやつ…マジでキモイ!絶てぇパンチするからな!この童貞野郎ども!ー


「音羽ちゃん…」

「社長!他にもほら!」

名城が画面を変えるとそこには弟村を養護するコメントが沢山あった


ー子供を連れている時、ガラの悪い男に絡まれた所、彼が私たち親子を助けてくれました。そんな人が悪く書かれるのは見るに堪えないー


ーアタシが男に殴られそうになった時止めに入って男をボコしてくれた人、マジ神!ー


ー店でごねた男を1発ノックアウト!弟村さんを悪く言う人は今後うちの店出禁!ー


ー私は90歳の婆さんです、孫に書いてもらってます、最近テレビで見る人に道を尋ねたらおんぶして私を連れてってくれました。あの時はありがとうございましたー


ーテレビで追いかけられてる人がフードコートで子供とはぐれた時一生懸命に子供を探してくれました、見つかった時、直ぐに居なくなってしまってお礼が言えませんでした。あの時は本当にありがとうございましたー


そこには打って変わって弟村に感謝を述べる言葉や弟村を叩く者たちへの言葉が並べられていた


「今更…今更変えない、もう決めた…決めたんだ!」

「考え直してください、お願いですから…」

「こんなもんは所詮まやかし…痛めつける言葉にいつかかき消され…」


パチン!


名城が松田の右頬を叩いた


「目を覚まして!貴方が今やろうとしている事は弟村さんの為じゃない!昔貴方がされた事の恨みを弟村さんの理由にかこつけて自身の恨みを晴らそうとしてるだけ!」

名城に叩かれた松田は呆然とし泣きながら名城は続けた

「君まで俺を否定…」

「否定します!前におっしゃってましたよね?!自分が変わってしまったらその時は…って今の貴方はただ自身が納得いかないことにイラつき怒りそれを発散しようとしてるだけ!鏡で顔をご覧なさい!そんな顏を弟村さんに見せられますか?そもそも弟村さんが死ぬって勝手に思ってませんか?!どうして信じないんですか?!絶望はいつでもできます!絶望して貴方が怪物になっても私は貴方が誰であろうと貴方に尽くすと決めています、貴方が人の道から外れるならお供します、だから!だから…お願いですから…一人で絶望して怪物になろうとしないでください…」

名城は泣きながら松田を抱きしめた

「…俺は最低だな」

「?」

「全部君の言う通りだ…この国が大嫌いでガキの頃の鬱憤を弟村君のせいして晴らそうしていただけなんだ…それを認めるが嫌だった、もう不要な暴力は振るわないって決めてたのに…弱者を痛ぶるのは気持ち良かった事すらあった…自分に酔っていたのかもしれない…君がいなかったらあの頃…ガキの頃の自分に戻ってたかもしれない。ありがとう…名城君」

そう言うと名城から離れ涙を拭きながら

「俺なりのケジメをつける、真相を世に出す。ただまた弟村を奴らが襲ってくるかもしれない、だから君が弟村を守ってやって欲しい、それに…」

「それに?」

「目を覚ました時1人だとアイツは寂しがるから…アイツはなんだかんだ1人はダメな奴だから」

「でも貴方は…」

「その心配は俺に危険が及ぶかもかい?それとも俺が無益に人を殺すかもしれないか心配?」

「……」

「約束する、俺はヤケになって暴力を振るわない、だからアイツの傍にいてやってくれ」

それだけ言うと松田は名城から車のカギ受け取りカンファレンス室から出ていった


その後ろ姿は何かを悟った背中に名城は見えたのだった


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「長谷さん?!あの男は何者なんです?!長官付き官房からストップが…」


電話口で片桐は長谷に詰め寄っていた


ーどうやらただの用立て屋じゃないな、様々な所に顔が効く男のようだー


「始めからあの松田って男の素性を…」


ー言い訳か…君には失望したー


「そうやって俺も切るのか?!さんざん身体使わせて!それに処理しろと言ったのは…」


ー知らんね、私はそう言ったかもしれないが方法を考えて実行はキミじゃないかー


「シラを切るか!俺に全てを擦り付けて…」


ーおっと、私用の電話た、もう君と会うこともないだろうが…自分の不始末はキチンと自身でつけることだー


「長谷さん!ちょっ…クソ!クソクソ!どこで間違えた!そもそも子供を隠せと言ったのは…」

片桐は椅子に八つ当たりをしながら親指の爪を噛む

「片桐さん、弟村は…」

「そんなもん自分で考えろ!とにかく…東都のサーバー動画をなんとかしろ!アレがバレたらマズイ!なんとか…」


片桐は頭を抱えて椅子に座った


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松田がホテルに着くと朝居たマスコミは不思議と消えていた

そのままエントランスを抜け1628号室に向かう途中コンシェルジュに呼び止められた


「松田様!すみません」

「ごめん、急い…」

すると小声で

「クレープシュゼットが届いております、特別室にご用意しております」

「?!本当に?!」

「えぇ」

「分かったありがとう!」

松田は小走りでエレベーターに乗り15階へ向かう

エレベーターの扉が開くと1番奥の部屋まで小走りで向かいインターフォンを押し近くの監視カメラに顔を出した

「怪しいもんじゃない、俺は松田啓介、弟村 史の仲間だ、これからこのドアを開けるからね」

ドアノブ近くのカードーリーダーの液晶に指紋を押し付けると鍵が開く音がする

ドアを開けるとそこには初老の男と小さい男の子がいた

小さい男の子が走った松田に詰め寄り

「フミトは?フミトは?!鉄砲で撃たれてた!フミト…大丈夫なの?!」

「君は?」

「ササモト マサキ…ねぇ!フミトは?」

初老の男性も近づき

「お久しぶりです、松田さん」

「?!貴方は…」

「これで貴方に礼ができました、会社の不正を告発したとき貴方が居なかったら反社の連中に殺されていました…」

「…貴方の店に弟村が?」

「えぇ、贔屓にしてもらってます、それとコレ」

初老の男性は松田に小さな箱を渡すと

「弟村さんが回復したら2人で店にきてください、それでは、松田さん」

初老の男性は深々とお辞儀をして部屋を後にした

「ねぇ!答えてよ!フミトは?!」

松田は深呼吸をして体をおろしマサキと目線を合わせると

「今は無事じゃなない、でも弟村は助かる、マサキ君が信じれば絶対アイツは助かる」

そういい箱を開けると中には懐中時計と手紙があった

広げてみると


ー俺が失敗したらマサキを頼みますー


と一言だけ綴ってあった


「馬鹿だなぁ…アイツ…意地張って…始めからすぐに帰って来ればよかったのに…俺がなんとかしてやったのに」

それだけ言うと目頭を拭きマサキの目を見た


「マサキ君、これから君に質問をする、君はお母さんと弟村の仇を取りたいかい?」

マサキも松田の目を見据えて

「うん!」

「インターネットに顔を隠さずにでられるかい?」

「……顔…出さないと…」

「嫌ならいい、俺は無理強いはしない、君を今すぐに安全な場所に逃がす。ただこれだけは言わせてくれ」

「何?」

「逃げる事は悪い事じゃない、でも今逃げたら君はずっと困難から逃げる事になるぞ?」

「…でも顔を出すのは…怖い」

「何が怖い?」

「…色んな人に何かを言われる…」

「いいじゃないか、君が仇を取る事は正しい事だ、君が告発をすれば弟村の容疑は全て晴れる。弟村の名誉を救えるのは君しか居ない、もちろん君に被害が及ばないように俺がアフターケアをする」

「どうやって…?」

「君が戦うのであれば全てが終わった後にアメリカで暮らしてもらう」

「アメリカ…?!僕にそんなお金…」

「金のことは心配するな、君が大人になるまでの滞在費、学費、全て俺が面倒みる。君の世話をしてくれる人も俺が見つける、君が心配することは何もない」

「1つ教えて、どうして日本にじゃなくて外国に行かないといけないの」

「馬鹿が多いからさ、ここはね。馬鹿は正しいことする奴が嫌いなんだ、だから正しいことをした弟村は怪我をした。でもアメリカだって馬鹿が多い、でもな?日本よりかは正しいことをした人間を評価する仕組みなんだ、それに…」

「?」

「こんな小さな国で自分の物差しを作るな、色々な物を見て、感じて考えろ。その経験は金では買えないとてつもない経験になる」

マサキは下唇を噛み締め強く首を縦に振った

「僕、やる」

「よし、分かった」

松田は右手を前に出すとマサキはキョトンとした目で松田の右手を見た

「これから一緒に戦うんだ」

その意味をマサキは理解し2人は硬い握手を結んだ後に松田はスマホを取り出してどこかに電話をしだした



東部署 捜査本部

「片桐管理官!まだ何も解決しちゃいない!」

「さっきの動画はなんなんだよ!」

グレースーツの男とMA1の女刑事が片桐相手に食ってかかっていた

「いちいち君らに説明する義務はない!国防軍の病院に入られたらこっちは何もできん!」

「片桐管理官!テレビ!テレビ!見てください」

片桐の部下が血相変えて本部に入るや否や大画面テレビをつけた

そこには

(これは電波ジャックです、お使いのテレビには何も不具合はありません)

のテロップがあり画面で少年が話していた


ーもう一度聞くね、君はあの夜何をして何を見た?ー


「テレビのクイズを見ていたら時答えとは別の番号が浮かび上がったんだ、お母さんの携帯でそれに電話をすると男の人が出たんだ」


ーそして?ー


「お母さんにバレてすぐに取り上げられて切った後、ご飯を食べた後にドアのチャイムが鳴ったんだ」


ー続けて、辛いなら一旦止めるかい?ー


少年は首を横に振り続けた

「…お母さんがドアを開けると…マスクをした男の人達が入ってきて…ピストルでお母さんを…」


ー君はその時どうやって逃げた?ー


「僕のアパートの部屋は1階だったからベランダから逃げたんだ…そこでテレビに映ってる人が助けてくれたんだ、その人がいなかったから…」


ーそれは今犯人と言われている弟村 史かい?ー


「うん」


ー君のお母さんを撃った人はその弟村だったのかい?ー


「違う!」


ーお母さんを撃ったマスク越しの顔は見たのかい?ー


「うん!マスクをしていたけど甘い匂いをさせていて右目の鼻近くにホクロがある男だよ!」


ーよし、じゃあその人に会いに行こうか?そういえばその電話した番号は覚えているかい?ー


「うん!〇〇×-〇〇△□-…」


「なんだこれは!早く放送を辞めさせ……」

狼狽える片桐の後ろから声がした


「マサキ!お母さんを撃ったのはここにいるか?!」

少年を連れた松田だった

「あの人だよ!あそこにいる人!」

マサキは片桐を真っ直ぐ指を指した


「馬鹿な!今…」

「バーカ!急遽作った録画だよ!お前に言い逃れさせない為に!ちなみにこのやり取りも今別回線で流してるよ」

松田は自身がつけているサングラスを指さすとそこには小さなレンズがあった

「マサキ間違いないな!」

「うん!あの人だよ!」

「フン!子供の証言なんか!」

「そう言うと思ってたよ、涼木ちゃん!例の頼むよ!」

耳の小型インカムに指示を出すと画面が変わった

そこにはマスクをつけた片桐達がアパートの前で


ーここに間違いないな、全員始末するー

その号令でアパート内に侵入

直後に物音と叫び声が響くとマサキと思われる子供が出てきた


「バ!バ!バカな!なんでこれをお前が!」

「東都のサーバーの数分で変わるパスワードだろ?俺の仲間が解析したよ!今東都のシステムの全て俺の仲間が掌握してる!これを見ても言い逃れできるか?!」


画面が切り替わると画面右上に

「東都警備特務局局長室」の文字と日時が表示され画面には椅子に座る男の前に男2人が立っていた

すると物陰からでてきた男が2人の男の頭を撃ち抜かれるシーン

それはまさに片桐と片桐に命令を下す人間、プレートには「特務局局長 長谷」と記載させれていた


「?!?!?!やめろ!止めさせろ!すぐに!」

「無駄だ、これはもう全国に放送されている、東都警備と警察は国民達に秘密裏に監視、盗聴している!これを見ろ」

松田が指を鳴らすと画面が切り替わる

そこには東京の至る所に仕掛けられた監視カメラの映像が流れていた

その映像は街中、駅構内だけではなく企業の内部、街の商店街等まで映し出されていた

「やめろ!これを流すな!」

「これは大問題だな、まぁそんなことはどうでもいい、部長さん、こいつをコレで逮捕できるな?!」

グレースーツの男は片桐に近寄り手錠を掛けた

「片桐管理官、、殺人教唆、殺人で逮捕する、迫田警部達には逮捕状も出ている、ウチの連中が捕まえてくるさ」

「離せ!所…!!」


パチン!


スカートスーツの女刑事が片桐に力いっぱい平手打ちをした

「汚い男!あんた達の企みで史を…このクズ警官!」

「しかしあんたからの電話…もう少し早くしてくれよ、留めるの大変だったわ」

刀を持った女刑事が松田の肩を強めに叩いた

「留める?!なんの…」

片桐が狼狽えていると

「アンタが引き上げる前にどうしてもここに留めて欲しかった…ここで、この場でマサキ君の目の前で手錠をかけさせたかったんだ、ひとつ聞きたい。なぜ現職のキャリアがここまで東都警備に尽くすんだ?再就職だけでここまで…」

片桐が項垂れながら答えた

「…これでようやく解放される…」

「なんの事だ?」

松田は片桐のスーツを掴み問いただす

「東都警備、何を隠してる?!」

「…少しホッとしているよ…東都警備は「警察の暗部」とまで言われてきた、キャリア組はほぼ首を捕まれてるよ。そんなに知りたきゃ自分で長谷さんに聞くんだな…早く俺を連れて行け」

そう言い残すとグレースーツの刑事が片桐を連行した

「なぁ?ひとつわかんねーんだけど…さっきの電話番号みてぇなのってなに?」

刀を持った女刑事が松田に問うた

「マサキが見えたのはただの電話番号じゃない、数分毎に変わるパスコードだ。恐らく限られた人間にだけが理解できるように暗号化していたのだろうね、万が一の情報漏洩を危惧して暗号化したんだ、それの実験か何かだろう、この暗号が実用化したら「何時何分の何処のカメラ近くの捜査員」って指示を出してパスコードを入力させて画像を見せる事ができる。でもまさかあの少年がそれを破るとは思わなかったろうな、テレビはオワコンだが情報を伝えるのはラクだしね。さっきも伝えたけど…マサキの事頼むよ」

「ちょっと!どこ…」

「総仕上げ、1番悪いやつに会ってくる。分かってると思うが…マサキに何かあったら」

「私達が死んでも守る!」

その目を見て静かに頷き松田はマサキに近寄り

「1番悪い奴を懲らしめてくる、ここで待ってろ」

「うん!帰ってくるよね?!」

「あぁ、帰ったらめちゃくちゃ美味い肉を食わせてやる」

そう言い残し松田は捜査本部を後にした


正面玄関前のクルマに乗り込みエンジンをかけ発進するとスピーカーに着信


「ありがとうね、涼木さん」


ーさんとかつけんな!気持ち悪ぃ!終わった頃だと思ってさ。しっかしまぁアンタらしいよ、やり方が。アタシや白川、じゃじゃ馬刑事達を使ってねぇ…アタシにハッキング、白川ん所で暗号解析…流石に国防軍管轄でハッキングはねぇ〜それをアタシやらせるとはさ〜ー


「適材適所…じゃ理由にならないか?」


ーそういう事にしとくよ、しかし東都警備…思ったより深いよ?ー


「そんなにか?」


ーあぁ、浅松町のおでん屋の親父に言われたよ、情報屋を続けたいなら「東都警備には手を出すな」ってね、表向きは普通の会社だけど不明な金が特務局から流れてる、これが会社を支えてるね、社長なんてお飾りだ、実務のトップは特務局局長だよー


「長谷と言う奴か…」


ー東都警備の設立は…かなり昔だね、例のん億円未解決事件の頃みたいー


「そんな前からあるのか?!」


ー名前は違うけどね…当時は「東京都開発警備」みたい、そうそうさっき長官付き官房とやらがお前さん宛にメールを寄越したよ、読もうか?ー


「お願い」


ー東都警備保障を潰すなら徹底的に潰してくれ だそうだ、しっかりやんなよー



「それくらい自分達でやれよ…俺から金を無心して小間使いまでやらせやがって。俺は弟村のケジメさえ取れればそれでいい」


ーアンタしか頼れないんだろうよ、東都警備にケンカ売れるのはアンタくらいだろ?今…長谷は六松原の高速の下を抜けて浅川商店街の方に向かってる、たぶん本社にむかってるね、車種は…BMW 黒のX6 M ナンバーは…ー


「わかった」


ーねぇ…ー


「何?」


ー馬鹿なことす…ー


「俺なりのケジメをつけるだけだ、もう誰も泣かせない」


ー分かったー


通話が切れると同時に松田はアクセルを強く踏んだ





「ったく…目障りだな…マスコミと言うのは」

「地下に回ります」

「あぁ頼むよ」

東都警備本社はマスコミで溢れていた

長谷を乗せたクルマは地下駐車場へ

螺旋状の坂道を降りて地下3階へ行くと駐車場入口には1台のセダンが停まっていた

長谷を乗せた車の進行方向前に男が立っていた


「やぁ!東都警備保障特務局局長 長谷 誠さん!」


プーーーー!

BMWのX6Mからクラクションが鳴り運転手らしき男が降りてきた

「こら!お前!ここをどこだと…」

「もうこの会社は終わりだよ、カーナビのテレビ見てみろ」


小さい画面には警視庁の警視総監が直々に会見をしていた


ーリークのあった東都警備保障の裏金問題に関し受け取ったと記載がある同社特務局局長「長谷 誠」に逮捕状を請求、可及的速やかに身柄を確保し真相を究明し…


マスコミからのヤジが飛ぶ


ー全監視カメラの件は警察は無関係と?!ー


ーそういった違法捜査は一切感知しておりません、東都警備保障の独断で…ー


長谷が降りてきて運転手と思われる人間に手を払うと運転手は走って駐車場外へ向かった

「アポがない人間とは会わないんだがな…相手が君ならそうも言ってられないな、松田君」

「俺を知ってるのか?」

「用立て屋だろ?にしては随分と顔が効くみたいじゃないか、リークをしたのは君かな?」

「あぁ、弟村を痛めつけたケジメだ、お前の大切な東都警備保障を潰す。明日には株価が楽しみだな」

長谷はタバコを取り出し火をつけた

「お前がここまでやる男とは思わなかった、もっと冷酷かと思ってた、まさか運転手1人の為にここまでやるとはなぁ…」

「…何故マサキの事を隠した?」

「ササモト アヤは私が若い時に遊んだホステスの娘だった、片桐が殺した後に分かったんだがな…つきなみだが孫のマサキは手元に置きたか…」

「人を蹴落とし自分の娘すら忘れて殺しを命じた男がよく言う…東都警備保障ってのは実質特務局が仕切っているのだろ?警察からの裏金の管理、再雇用…そんな事をするだけの会社が随分と大それた事をするんもんだ、それをネタに作ったのが全監視カメラを乗っ取る監視システムか?」

長谷は煙をふかし口を開いた

「……検討ハズレもいいとこだ…」

「検討違いかどうかなんてもう興味もない、どのみち東都警備はもう終わりだ」

「お前は何も分かっちゃいない、東都警備はやらされているのではない、やってやっているのだ、警察の為に。年々公務員予算は削られる、殉職されると金もかかる、国は口を出すだけで何もしない…なら我々警察だけの互助会と警察官僚から政治家を送り出す為の組織固めを作る…その為の東京都市開発警備だ」

「それとどう関係がある?」

「金がとにかく必要だった…根回しに使う金や辞めた人間、殉職した奴に支払う金…しかし余分な金は警察には無い…ならどうするか…」

「?!まさか?!」

「察しがいいな、さすがと言うか…金がある所から奪えばいい、未決事件の4億円事件…あれを元手に金を増やしたんだ、他の未決事件は隠れ蓑に過ぎない、大きな事件を起こし関心をそちらに向け金や人を動かす。悪魔的発想だ、だから特務局という部署でやったんだよ」

「…まさに警察の暗部だな…そうやっていくうちに立場が逆転したんだろ?」

「そうだ…それだけ汚れ仕事をした我々は時の国家公安委員長を脅した、認めさせて名前も変えたんだよ」

「立派な組織だ、だがもう…」

「私はもう終わりだが…どうせ、第2第3の東都警備は生まれる、あの方がいればな」

「まだ黒幕がいるのか!それは誰だ!」

松田が声を張った後、長谷はじっと松田の顔を見た

「お前…どこかで私と会ったか?」

「…お前なんか知らない」

「いや!お前を知っているぞ!名前は違えど…そうか!お前…ハハッ…まさかお前に引導を渡されるとはな!そっくりだ…俺だよ…覚えてないか?お前を学校に迎えに行ったこと…今でも覚えているよ、お前が問題を起こす度に身体に教えてやったよな?」

「…お前なんて知らない!」

「外務省が余計な事をしてお前を助けやがって!お前の素性を流せば馬鹿な民衆はお前を異物と見なし攻撃する、予定通りだったがお前はしぶとかったなぁ〜どこかで首でも括るかと思ったが…ガラムトラドで死んだと聞いた時はホッとしたぞ?なのに…尻尾巻いて日本から出ていった奴が今更…あの怪物が他人の為になぁ…似合わない真似を…」

松田が瞬時に長谷に近寄り右拳を振り抜く

バチン!

「黙れ黙れ!お前が!お前らが!俺の!全てを!」

バチン!バチン!バチン!バチン!

長谷の顔がどんどん膨れ上がりコンクリートに血が滴る

「弟村まで……殺してやる!殺してやる!」

松田は怒りを込めて長谷を殴り続け最後に右手拳に力を込めた時

「そうだ!何も変わっちゃいないお前の本質は立派な怪物だ!人間の皮を被るマネはやめろ!」

長谷は血を吐きながら松田の目を見て言葉を発した時


「わかってる、お前だけは許さない」


あの氷結の風が吹いた瞬間


「社長!やめてください!」

聞き覚えのある声で松田は我に帰った


「ゲホッ!ゲホッ!俺、なんとか助かりました!」

名城に支えられた弟村声

「もう…いいじゃないですか?!辛いこと沢山あったけど…今は名城さんも涼木さん、佐原さんも…カミサカも…白川さん…それに俺も居ます!失った時間、奪われた時間はどうにもできないけど…作っていきましょうよ!俺に…アンタが楽しめる手伝いさせてくださいよ!そんな奴!貴方が手を下す価値なんてない!怪物?アンタは人間だよ!憎まれ口叩くけど目に映った人を必ず助ける…良い人間だ!怪物なんかじゃない!」

それだけ言うと名城が支えきれず弟村は膝から崩れた

弟村の体が地面に触れる前に長谷を投げ捨て松田が弟村を支えた

「馬鹿!病院抜けんなよ…傷が開くじゃんか…」

「イテテ…ゲホッ」

「弟村さん!社長?!やっぱり…」

「僕の車を回す!早く乗せ…」

名城と松田が弟村を支えると

「…貴方に「俺」は似合わないっすよ」

「……かもな」

「へへ…」

松田と弟村は目が合うがすぐによそを向き弟村を車に乗せ松田が運転席のドアに手をかけると

「はぁ…はぁ…やはりお前を殺しておくべきだった…そうすべきだったんだぁ!」

長谷が拳銃を抜き松田の頭に狙いを定めると名城が松田を庇った瞬間


パァン!


松田の腰に装備していた弟村から譲り受けたG18Cを構え弟村が発砲した


「がはぁ!」


「俺の恩人にそんなもん向けんなよ」

それだけ言うと弟村はまた体勢を崩した

「無茶すんなよ!」

「護衛らしくなれましたか?俺?」

「充分過ぎるよ…ありがとう」

「へへ…ゲホッゲホッ」

「社長!早く弟村さんを病院に…」

「椿ちゃん、僕はまだ聞かなきゃいけない事がある、先に病院に…」

松田は撃たれた長谷に近づいた

「あの方とは誰だ!答えろ!」

胸部を撃たれた長谷は血を口から吐きながら

「…私も1度しか会ったことはない…名前は……私も…何度も…殴られ…たよ…ゲホゲホ!お前と…同じ目を…していた……」

「名前は?!言え!」

長谷は口を小さく開くが声が出ない

「誰なんだ!それを言う前に死ぬな!おい!」

「ヒュー…ハー………………」

口を開けなにかを言ったがこと切れた

「クソ野郎が!勝手に死にやがって!」

「社長!早く乗って!弟村さんが!」

その言葉を聞き急いで車に乗りこみエンジン全開で病院に戻るのだった


ーーーーーーーーーーーーーーーー


「東都警備保障の国民総監視システム」は毎日ワイドショーで取り上げられていた

東都警備保障の株価は大暴落

プライバシーの観点から暇な活動家達の格好のターゲットの集団訴訟騒ぎになり何も知らなかったお飾り経営陣は対応でゴタゴタが続き裏金問題では特捜の家宅捜索まで行われた

警察上層部としては絶対に知られたくない暗部でもありこれを機に切り捨てる判断で知らぬ存ぜぬで東都警備保証を切り捨てたのだ




「ん?なんで警察が追求されないかって?」

運転席で松田が後部座席の弟村、名城にミラー越しに訪ねた

「あれだけの不祥事にしては警察に矛先があまり向かないのは不思議ですね」

「えぇ、そこ私も気になりました」

「警察には恩を売っときたかったんだ、本当にヤバいデータは公表しないって約束してね。上辺だけのデータだけをマスコミに渡したんだ、んでマスコミにはスポンサー側に金をばら蒔いて東都警備保障のネガキャンをやれと圧をかけたわけ、もちろん弟村君の名前は出さないというセットつきね」

「…すみません…俺の…」

気まずそうな弟村の言葉を遮るように

「気にすんなよ、君の価値に見合う金を払っただけだ。これでまたしばらく僕の所辞められないねぇ〜」

ニヤニヤしながら松田は答えた

「本当にすみません!!」

「バーカ!気にすんなって言ってるだろ?」

「なんか久しぶりですね、こういうやり取り」

「名城さんも…迷惑かけてすみ…」

「全然!私も気にしてませんよ!これでまた3人ですね!あ、そろそろ空港に着きますよ」

松田達の車が空港に着き、トランクから車椅子を出して弟村を座らせ松田がそれを押す

「重ね重ねすみません…」

「いいんだよ、そこはすみませんじゃなくてありがとうの方が嬉しいな」

「ありがとうございます」

「素直でよろしい」

そんなやり取りを見て名城は少し笑いながら出発ロビーに先導

その先には

「フミト?!フミト!!」

マサキが走って弟村の所にやってきた

「マサキ!会えなくて悪かった」

「いいんだ!怪我…大丈夫なの?」

「あぁ、もう大丈夫だ。少し見ない間になんか頼もしくなったな、マサキ」

「へへっ…そうかな?」

「アメリカに行っても頑張れよ」

「うん!」

マサキの横にいるカミサカを指さしながら松田が

「この男はタバコ臭いけど頼りになる、マサキ君が困ったらなんでもこの男をコキ使うといいよ、その分のギャラは払ってるから」

「自分の事は自分でやるよ、だから大丈夫!」

頭を掻きながらカミサカが搭乗ゲートへ

「おら!行くぞ!」

「カミサカ、頼んだよ」

「ったく、こういう役目ばかり押し付けやがる」

「いいじゃないか、大統領選に向けての物は払ったろ?」

「…まぁ……ゴホン!このガキの事はうちが責任持つから心配するな、じゃあな」

「マサキ!元気でな!」

「うん!フミト!またオムライス食べに行こうね!」

「おぉ!行ってこい!」

カミサカの後を追うようにマサキは旅立って行った

そして3人は屋上に上がり滑走路が見える場所へ

「弟村、たぶんあれだ」

松田が指をさした飛行機は離陸体勢に入っていた

「ちょっとトイレ」

そう言いい小走りでトイレに向かう

「相変わらず落ち着かない人だなぁ」

「まぁ…社長ですから、内緒の話…聞きたいですか?」

名城が含みのある言い方をすると弟村は興味津々

「え?なんです?」

「弟村さんが撃たれた時、めっちゃ泣いてたんですよ、あの人」

「嘘だー!!」

「ホントですよ、あんなに感情を表したの私初めて見ました、こうも言ってました、「俺の大切な人」とも。だからもう1人で無茶しないでくださいね、約束です」

「はい…わかりました」

「あ!離陸する!」

名城が指を指すと滑走路を駆け抜け飛行機が離陸、その飛行機に弟村は拳をかざした


「がんばれ、マサキ世の中クソだらけだけどこんな世界も悪くないぞ」


同時に機内では何かを感じたマサキが窓にグッドサインをした

「何してんだ?」

カミサカが不思議そうに尋ねると

「フミトが僕に合図を送ってくれたんだ…そんな気がしたんだ」

「気のせいじゃねぇよ、寂しくなったらすぐに飛行機手配してやる」

マサキは首を横に振り

「そんな事したらフミトに叱られるよ!僕頑張る!」

そう言うマサキの顔は気のせいか少し凛々しい顔つきになっていた



〜スターライトカフェ第2ウィング店〜

「見送りはいいのかい?」

アイスチャイティーラテを飲むのは涼木だ

「うん、僕は居なくてもね。あれから東都のシステムは?」

松田がカウンター席の涼木の隣に座る

「全部破壊したよ、アンタの頼みだからね」

「今回のことありがとう、それに…」

「あーー!あの礼は取り消し!アンタによく似てただけ、別人だわ」

「…そういえば例の事なんか分かった?」

「ぜ〜んぜん!さっぱり!」

涼木は天井を仰ぎながら続けた

「全く掴めない…ただ…」

「ただ?」

「東都警備の特務局局長は全員ゴリゴリのタカ派思想。元々は旧幕府の秘密部隊「虚式」に所属していた人間が東京都市開発警備を作ったらしい…」

「秘密部隊「虚式」?」

「うん、将軍直轄の諜報と警護をする部隊ってだけ分かった」

「涼木ちゃん、好奇心は程々にしときな。これ以上は…」

「木曜日の御仁…」

「何?」

「木曜日の御仁と呼ばれている奴がその「虚式」に所属していたんだ、そしてその木曜日の御仁ってのが特務局の局長を選んでいたらしい」

「深いねぇ…底が見えないな」

「さて…アタシは少しばかりバカンスに行ってくるよ」

涼木は席を立ちスーツケースに手をかけた

「どこに行くんだい?」

「クアラルンプール、海辺の家で本でも読みながら酒のんでリフレッシュしてくるよ」

「帰ってきたら何か礼をさせてね」

「オーケー、なんか考えとくわ、んじゃね」

立ち去る涼木を松田が呼び止めた

「なぁ!また会えるよな?」

「…当たり前だろ?あんたにゃ今回の件の貸しを返して貰わ…」

涼木が言い終わる前に松田が駆け寄り自身の腕時計を外して涼木に渡した

「これ預ける、絶対に返してね」

「重いな!この時計!…まぁいいや、困ったら金にする」

「ハハッ、らしいね!気をつけてね!」

そういい2人は別れ後、涼木は小声で

「あんたぐらいだよ、アタシの心配してくれるのは…」

それだけ言うと出発ロビーに向かうのだった



ーーーーーーーーーーーーーーーーー




〜立原 ガード下 立ち飲み屋「酔っていこう」〜


立ち飲み屋のカウンター上では競馬中継が流れていた


「なんなに手綱絞めやがって!」

「ムチ入れるのおせぇよ!オヤジ!オカワリ!」

「じいさん静かだなぁ?レース取ったのか?」

隅で焼酎をロックで飲んでいた初老の男性に酔っ払いが話しかけた

「いやぁ、競馬って難しいですなぁ〜、さて…代金置いてくよ」

金を置き店を出てしばらく歩くと黒いスーツの男がいつの間に男性の後ろにいた

「御仁様、お1人でこのような…」

「たまには1人でいたいのよ。で今回の件はどうするの?」

「長谷に全てを被ってもらいます、東都警備代わりは…」

「いや、もういいよ。長谷は優秀だったけどね…ワシの椅子を狙っていたからさ…黙ってあんな監視システムまで…大方あれはワシを探すものだったんだろう。優秀なハッカーならピンとくるようにシステムを細工して外部からアクセスできるようにしたからな」

「御仁様のおかげです」

「なーに、不確定要素はさっさと潰すだけだよ、さてさて…次は何をしようかねぇ」

そういい黒スーツの男が車のドアを開け「御仁」と呼ばれる男を車に案内し自身も乗り込むと車が発進したのだった…



ーーーーーーーーー了ーーーーーーーーーー

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