第6話
「まてぇ!」
「そっち行ったぞ!回れ!」
「逃がすなぁ!」
「下がって!下がって!」
森宿のスポーツストリートは騒然としていた
普段見られないような光景
多数の警察官と思われる人間が男を追う
それを追うマスコミ
通行人はスマホカメラで撮影
追われている男は通り奥の服飾店があるビルを突っ切り反対の通りへ
「ハァ!ハァ……この辺はガキの頃遊んでたんだ!俺の方が詳しいぜ!」
追われている男は弟村 史
弟村は反対の通りを走り追っ手を確認して百貨店分派のホームセンター前の坂を駆け上がりビルとビルの隙間に入り呼吸を整えた
「ハァ…ハァ…ハァ…まさかあんな簡単に見破られるとは…オマケに車にまで先回りされて…俺って奴は甘いな…このまま殺されるくらいなら…!…ッ!」
左肩に激痛が走った
スターライトカフェから逃げる時に左肩を何かで叩かれたのか少し腫れぼったいが今は逃げるが先と覚悟を決めた弟村
「マサキ…やっぱり俺はトチっちまった…ごめん…でもお前が届くまで俺が気を引くから、こんな所でへばってる訳にはいかないよな!」
そう自分に言い聞かせ路地を抜けてまた通りを走ったのだった
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
東部署目の前の車に飛び乗り松田と名城は森宿に急いだ
松田は信号には目もくれずあわや大事故に繋がる可能性もある運転をしていたが狭い車道を縫うようにすり抜け最短距離を想像しステアリングを握る
名城が警告しても聞く耳も持たずただ目的地へ
弟村を救いたい一心なのが痛い程名城に伝わる、しかし最後の一言の真意を知るのが恐怖でもあった
ガラムトラド
国連加盟国で小国の中東産油国だったがある人物が起こした事件でこの世界から消滅した国
名城は伝聞で聞いた真相だがその真実を知る松田がやると言い放ったのは信じ難いことなのだ
「社長!お願いですから無茶しないで!」
「………」
「あの事…脅しですよね?!答えてください!!」
「…俺はこの国が大嫌いだ、反吐が出るくらいに。でも啓介は言ってた「やる事がなくなったらいつか日本でゆっくりしたい、和平も一緒にね。そして日本津々浦々巡って美味いもん食って遊ぼうよ、そしたら君も日本が好きになる」ってね。アイツが俺に言った事…理解したくて俺は日本に帰ってきた、もちろんアイツの意志を遂行するのもあったけどね…名城君が育った国…好きになろうと努力した、弟村君と引き合わせてくれた国、3人で楽しくできたら払拭できると思っていた…だが俺が出ていった頃から何も変わっちゃいない…もうどうでもいい、この国がどうなろうと…無事でいてくれたらそれでいい、弟村君を確保したら直ぐに日本から出る、カミサカに電話してくれないかな?」
乱暴運転をしながら松田はとても冷静に淡々と喋っていた
名城がCIAの極東担当カミサカに電話をかけスピーカーにする
ーそろそろかと思ってたわ、運転手は何やらかしたんだ?ー
「何もしちゃいない、頼みがある」
ー犯罪者の逃亡手助け…ー
「おい、弟村は無実だ、口に気をつけろ」
ー……なんだよ、頼みって?ー
「弟村を確保したら俺達は日本を出る、その時米軍基地からの離陸を頼みたい、空港だと警察がついてくるからな、その点基地に入れば警察も何もできない」
ー見返りは?ー
「お前専属の情報屋になる、出世も手伝う」
ーそれだけじゃなぁ〜旨みはねぇなー
「お前の国の議員が欲しがっていた大陸と癒着してる日本の議員を全て教える、こいつら引きづり降ろしてアメリカに都合良い奴を代わりに置けばい」
ーおいおいおい、そんなんじゃ日本は議員が居なくなっちまうじゃねか、いいのか?それに本国としてはもう半島の南と日本が協定さえ結んでさえくれればもういいんだわ。それにもう日本は毟るほど金もねぇだろ?思いやり予算増やしてく…ー
「別に日本がどうなろうともう俺には関係ない、それでも不満なら次の大統領選挙の資金を用立てる、これでも不満か?」
ー…どこまで本気なんだか、そんなにお前金集められるのか?半端な額じゃねぇぞ?ー
「日本から出られさえすれば約束は守る、馬鹿な金持ちはどこの国にでもいるから用意するさ」
ーお前に恩を売っとくのも悪くないな…急ぎか?ー
「あぁ」
ー今日の今日だと…難しいな、これから手配するから…こっちから連絡するー
「恩に着るよ、カミサカ」
ーお前…何企んでる?ー
「別に、弟村を救い早くこの薄汚い空気の国から出たいだけだ」
ー珍しく余裕がねぇな?馬鹿な事考えて…ー
「名城君、電話切って」
名城は電話を切ると
「あんな約束して大丈夫ですか?ホントにもう日本には来ないんですか?」
「あぁ…二度と来ない…口惜しいかい?」
名城には探している人物がいる、その事を知らない松田ではない
「…別に…そんな事…」
「また来たかったら君だけで来ればいい、だが俺は二度とこの国を跨ぐ気は無い」
森宿のランドマークになりつつある高層ビルを抜け有名な交差点右折し百貨店通りをそのまま走りY字路の中心にあるファッションビルを左に抜けると通行止めだった
「やっぱりな!弟村はここにいる!」
「なんでわかるんです?!」
「弟村は子供の頃ここで育ったって聞いた、人を撒くならスポーツストリートを抜けてこの坂を上から逃げる、俺が弟村ならそうするし警官が多いから十中八九ここだ」
2人が車から降りると交差点は警官で通行止めされていた
封鎖をしていた警官に松田が
「おい、どけ!」
と掴みかかるが警官も負けない
「ダメだ!下がって下がって!危ないから!」
警官と押し問答していると公共放送局に繋がる交差点で弟村が私服警官に追い詰められていた
「どけ!殺すぞ!お前ら!おい!弟村君!迎えに来た!もう大丈夫だぞ!」
警官に食ってかかると
「アンタ何言ってんだ!」
「こいつらを何とかしてくれ!」
応援を呼ばれ羽交い締めにされ
「離せ!クソバカどもが!目の前にいるんだ!頼むから俺の邪魔しないでくれ!」
名城は最低限の力づく技で押し切るようにするが加減をしているので名城も捕まる
「退いて!これ以上加減しませんよ!弟村さん!弟村さん!」
その喧騒に気がついたのか弟村は松田と目が合った
ー相変わらずすげぇな…もう俺の居場所まで…始めから社長に話してたらこんなふうにならなかったかなー
後悔先に立たず
つまらない意地を通した自分に嫌気が差したがここで泣いたら合わせる顔がないと覚悟を決め銃を向けてる刑事に話しかけた
「なぁあんた?こんな往来で俺を撃つのか?カメラもいるぞ?いいのか?天下の警察さんがよ」
「片桐さんから射殺命令が出ている、カメラなんぞどうとでもなる、東都警備保障がスポンサーとしてもみ消してくれるさ、馬鹿なマスコミはそれでいい、最後のチャンスだ。子供はどこだ?」
「子供?あぁ…お前らの手の届かない所に送ったわ。馬鹿だなぁ〜始めから俺を誘拐か何かで指名手配すればもっと楽に捕まえられたぞ?」
ニヤニヤした弟村に腹を立てたのか相手は少しイラつきながら銃を握る手に力を込めた
「…もういい、色々背負って死ね」
………怖い、怖ぇよ!でも……あの人が見てる!泣くな!前を向け!繋げ!あの人に!……
死の恐怖に負けないように弟村は満面の笑顔で松田、名城の方に顔を向けて精一杯の大声で
「社長!俺どうやらここまでっす!例の件はもうこれで自由っすよね?!俺には似合わないので返します!俺みたいなひねくれもん居なくなったら清々するでしょー?!」
両手を上げた弟村は拳銃をつけつけられている状況で叫んでいるが笑っていた
「クソバカ!何言ってんだ!お前の代わりなんていねぇよ!離せよ!おい!そいつに銃を向けるな!俺がそいつの無実を証明したろ?!そんなもん降ろせよ!そいつに傷一つつけたら承知しねぇからな!離せよ!」
「離して!私に触らないで!離して!弟村さん!弟村さん!」
大勢の警察官に松田と名城が取り押さえられながら叫ぶ
銃を向けられた男は何か悟り上げてい両手をさげる
放たれる銃弾
自身の体にとてつもない衝撃が走る
ークソみたいな世界だったけど…和平さん…名城さん…ありがとう…拾ってくれたのに…受け入れてくれたのに…あんな事言ってごめんなさい…素直になれなくてごめんなさいー
彼は撃たれた時感謝と謝罪を思ったのだ
「弟村ぁぁぁぁ!このぉぉ!お前ぇぇぇ!」
銃弾が男の胸部を貫くとその場に倒れたのと同時に銀髪の女は急に動きを変え警察官達を制圧、抑えられていた長身の男も反撃し手を離させて振り切り男を撃った人間に間合いを詰め体術を叩き込んだ後拳銃を取り上げて放り投げ倒れている男に駆け寄り抱きかかえる
「弟村…弟村ぁ…馬鹿だなぁ…早く帰ってくりゃ良かったのに……でももう大丈夫だ…僕が来たから…ほら?ここしっかり抑えるんだ……僕の顔見たくないから目を閉じてるのかい?ごめんよ…最高の医療スタッフを用意するから…心配しないでいい…治ったら3人でご飯行こう…その時くらい秘密のお店教えてくれよ…あれ?君は僕の護衛じゃん…鍛えてたんだろぅ…?いい加減目を開けてくれよ…それに…やられっぱなしは君に似合わないだろう?手伝うよ…大丈夫…僕が…僕が…想像以上の苦しみを…お前が受けた痛みを…クズ共に味あわせてやるから……クズ共が泣いてお前に詫びる様を……一緒に笑ってやろうよ……だから…だから…返事ぐらいしたらどうだい…?…なぁ…?…返事してくれよぉぉぉ!弟村ぁぁぁぁ!なんで血が止まんねぇんだ!この!この!……寄って集って……弟村を……袋叩きにして……満足かよ!これで満足か?!こんな良い奴を……なんでこんな良い奴が…この報いは受けさせるからなぁぁ!!……殺してやる……殺してやるぞ!仮面を被ったクズ共!警察!官僚!政治家!全員殺してやる!この国の奴は俺から全て取り上げた…それでも足りねぇか?!だから弟村もか!…どいつもこいつも!皆殺しだ!俺を舐めがって!絶対に許さねぇからなぁぁぁぁぁ!」
松田は人目をはばからずき泣き叫びながら止血しているが撃たれた弟村は目を瞑ったまま表情はどこか満足気に笑っているようだった…
名城も駆けつけ止血をする
「弟村さん!しっかり!意識保って!社長!まだ息があるから直ぐに処置すれば助かります!」
泣きながら松田は弟村を抱き抱えると警官達が松田達を取り囲んだ
「なんだ!さっきは警察官に手を挙げて脅迫まで!被疑者をどうする気だ?!お前らも今すぐ逮捕してやる!」
「頼むよ!そんなに死にたきゃいつでも殺してやるから!もう俺達に関わならいでくれよ!こいつは俺の家族なんだよ!これ以上俺の物を奪うなよ!もう!ほっといてくれよ!頼むよ!頼むよ!」
泣きながら懇願している松田はもう我を失いかけ子供のように人目をはばからず泣いていた
「もう…もう!もう沢山なんだよ!大切な人を目の前で失うのは!今はコイツ助けさせてくれよ!お願いだよお願いしますお願いします」
遅れて東部署の女刑事2人も到着するなり絶句した
「史…嘘!」
「コイツが疑い晴らしだろうが!なんでこんなことに!」
「黙れ所轄が!お前らは…」
羽織っていたMA1を脱具と同時に刀を抜き弟村を撃った刑事に突きつけた
「お前らの言うことなんてもう聞かねぇよ!泣くなNancy!救急車待つんじゃなくてパトカーで病院まで行け!」
涙を堪えたスカートスーツの女刑事の方が松田に
「こっちに乗せるから!ついてきて!」
「お前らの何を信用すればいいんだ!俺は?!えぇ!頼むからもう俺らに関わらないでくれよ!」
泣きながら自身の車に向かう途中に名城のスマホに着信
相手は白川だった
「もしもし!今すみません!………?!本当に?!わかりました!ありがとうございます…社長!白川さんが桜町の国防陸軍病院でスタッフを待機させてくれてます!そちらにと!」
「分かった!どけよ!」
「史は私にとっても大切なの!悲しいのはアナタだけじゃない!私だって助けたいの!」
「わかりました!先導お願いします!社長!早く車載せて!私が運転しますから」
名城が瞬時に判断をし女刑事が先頭に立ち後に名城、弟村を抱えた松田と続く
野次馬達はスマホで撮影していたが流石に血を流している弟村を抱えている姿に圧倒され道を開けるが警官達は阻止しようと立ち塞がるが先程の刑事に着信後に態度を変えた
「…はい?なんですって?!このまま?!……片桐さんには……はい……でも……わかりました。…クソ!奴らを通せ!手を出すな!」
「なんでですか?」
「片桐さんからだ、上からのストップしかもお冠だと…長官付き官房からだ!何モンなんだアイツは!クソ!」
不満たらたらに松田を睨むが気づかれもせずに車は立ち去った
桜町 国防陸軍病院
桜町まで近くパトカーの先導もあってかあっという間に指定の病院にまで着いた
ここは一般の患者も受け入れているが名前通り国防陸軍御用達の病院で一般の病院にはない検査機器等あり保険適用外のガン検査も可能な病院
正面に車をつけ松田が弟村を抱え入るともうストレッチャーや看護師達が待機していた
「こちらに載せて!オペ室に連絡!早く!これから緊急処置します!お連れの方はカンファレンス室に!」
看護師達が的確な指示を出し弟村をストレッチャーに載せて運ぶと
「絶対助けてやってくれよ!頼むよ頼むよ!」
「全力を尽くします!カンファレンス室に案内して!」
松田はそれだけ言いその場に膝から崩れそれを名城が支えながら案内された部屋へ
「…待ちましょう…きっと大丈夫ですから、まずは座って今車から変えのシャツ持ってきます…あっ…」
名城は今の松田を1人できないことに気がついた、すると
「良ければ私持ってきます」
先導したパトカーを運転していた女の刑事だった
「…トランクに着替えが入ってます、お願いします」
「わかりました」
名城が鍵を渡すとすぐに部屋を出ていく素振りをみせたので名城は
「…すみません、本当は…」
「いいんです、私達の不始末ですから…すぐに取ってきます」
そういい立ち去ると案内された広めのカンファレンス室は2人になった
お互い無言のまま時間だけが過ぎる
松田は両手で顔を抑えながら必死で感情を押し殺し小声で何かを言っていた
「…啓介…頼むよ…弟村…を助けて…頼むよ…頼むよ…」
両手についた血も拭かずに泣いているのか手の間から涙が溢れる
かける言葉が見当たらない
一般的な感情が欠落している自分には何も言えない
目の前で恩人が悲しみにくれているのに
こういう時弟村は何を言うだろうと頭を巡らせるが当たり前の言葉しか思い浮かばない自分が名城はつくづく嫌になった
「信じましょう…弟村さんは助かります、私達が信じないでどうするんです?」
そっと肩に手を当てると松田は名城に顔を伏せながら寄りかかった
「みっともなくてごめんなさい、頼りなくてごめんなさい、情けなくてごめんなさい、何もできなくてごめんなさい…」
「そんな事ないですから、社長はベストを尽くしてます、情けなくなんてない。泣いたっていいですから…追い詰めないで」
「…俺はいつもそうなんだよなぁ…グス…グス…啓介も目の前で…今度は弟村…大切な人を俺は守れない…」
「私の事助けてくれたじゃないですか…」
「………偶然だよ…人間なんて何もできない、平和に生きる道、意味を探すつもりがさ…俺の報いはいつか受ける覚悟はあった…でもなんで!なんで弟村が…俺のせいだ…俺のせいで…また…人が…」
「それは関係ないです、貴方のせいじゃない。私は貴方救われた1人です、貴方が居なかったら私はあの時殺されてました…」
カンファレンス室ドアが開くと意外な人物が入ってきた
「何泣いてんのさ、みっともない」
涼木だった
「テレビで放送するかねぇ…発砲シーンを、でどうすんの?いつまでメソメソしてんだい?!情けない男だな!」
名城が立ち上がり涼木の服を掴みかかる
「やめて!今そんな事言うの!」
「アンタ何も分かっちゃいないね、こいつは優しくされる事なんて望んでないよ?どうせ自己嫌悪のスパイラルだろ?そんな事はいつでもできる。飯食ってシコるのと一緒、東都警備は次の手を打つよ?それでもいいの?アンタの家族を追いやった連中にケジメとらないのかい?」
涼木の言葉に反応したが松田は黙ったままだった
後からスカートスーツの女刑事が着替えとタオル、ペットボトルの水を持って入り同時にグレースーツの刑事も入ってきたがその直後にタバコの匂いさせたアロハシャツにカーゴパンツの大柄な男が入ってくるなり松田の首元を掴み1発
バチン!
「カミサカさん!なんて事!やめて!」
「やめるかバカが!メイドが口出すな!てめぇ何のつもりだ!あぁん?!メソメソしてブチギレてんじゃねぇぞ!」
グレースーツの刑事と女刑事がカミサカを止めるが収まらない
「何してんだ!アンタ!」
「何考えてるの!」
「離せ!お巡り風情が!俺はこのバカに聞いてる!」
すると両手を顔から離し松田が口を開いた
「…筒抜けか?ラングレーは役立たずの警察にも情報網があるのか?」
「てめぇに教える義理はねぇよ!てめぇ本気か!事と次第によっちゃ…」
カミサカが腰からシルバーのリボルバーを構え撃鉄を起こし松田にむけた
「あの女だって思いとどまったんだぞ!それをてめぇがやる道理がどこにあるんだ!ガラムトラドの惨劇をお前がやるのかよ!えぇ!」
「…みんな死ねばいい、警告はした…俺の…俺の大切な物を奪った連中、痛めつけた連中には当然の報いだ、カミサカ?俺を止めるなら今引き金を弾け…俺はこの国の連中を皆殺しにする、もう決めた」
「何をさっきから言ってる!ガラムトラドって無くなった国だろう?それに皆殺しなんて聞いて黙ってられるか」
グレースーツの男には話が見えてないが危機は察知している
「さっき片桐ってのが言ってたよな?法治国家で警察に逆らう事は全てを敵に回すって…全て敵だよ、俺にとっては…この国連中は」
「待って!もう私たちは本部の言うことなんて聞かない!何が起きてるの?!私だって…納得なんていってない!」
スカートスーツの女も松田に食ってかかった時、相棒と思われる刀を持った女刑事と白川審議官も部屋に入ってきた
そして刀を持った女刑事の方はグレースーツの刑事に手帳を投げ付ける
「部長アタシはもう辞めるよ、相棒の大切な人を傷つけられて黙っていられるほど大人じゃない、それにこんなやり方…間違えてる!おい!アンタ!なんか策あんだろ?!前みたく!」
「ユキ…私も辞める、このまま黙ってなんていられないわ!松田さん!私達が手足になる!だから…」
バァン!
松田は机を力一杯叩くと
「みんな好きにしろ、俺を撃ちたきゃ撃て、殺せ、辞めたきゃ辞めろ、東都警備も警察ももういい…俺はやる、クズ共にはお似合いだ…アレに感染してお互いを食い合えばいい…最後の一人になるまで…そしたらまたこのタバコ男の国が原発のメルトダウンか何かとして処理してくれるさ…全員出ていけ!俺の前から消えろ!どいつもこいつもぉぉ!」
「松田社長…短絡的になってはダメです、私も協力します!真実を公表しましょうよ!東都警備は元々きな臭い…」
白川審議官も必死で宥めるが聞く耳を持たない
「出ていけ!出てってくれ!もう俺達に関わるな!」
手元にあったペットボトルを壁に力一杯投げつけるとボトルは割れて水が散乱した
第一声はグレースーツの男
「分かった、謝罪する気でいたが今のお前に謝る道理は無い、少なからずお前の能力を当てにしたのが馬鹿だった。我々は好きにする、ユキ、辞めるならこの事を片付けてからだ!Nancyはここにいろ」
「アンタ見損なったよ、もっと頭が良いと思ってたがな」
「私も行きます…私が腐ってたら彼に「行け」と怒られます…松田さん、いつでも連絡ください…」
そう言い残し名刺を置き部屋を後にした
「私にできることがあれば何なりと、ここで貴方を見捨てるほど俺は薄情じゃないですから」
白川審議官も部屋を後に
「フン!あんなもんばら撒きたきゃ好きにしろ!まっ!そん時はどこに逃げても大統領命令でお前を殺すだけだ!それに今のお前を奴が見たら何を言うか見ものだな!じゃあな!クソヤロウ!プッ!」
松田に唾吐きかけ大きな音を立てながらカミサカも出ていった
涼木な何故か留まっていた
「出てけよ…もう…どうせお前も嫌味しか言わねぇんだろ?」
「あんたダサいよ?果てしなく。なんだい、ヤケになって、さっきの女刑事見たかい?やつの方がよっぽど弟村を理解してるよ!」
それだけ言うと松田の胸ぐらを掴み涼木は続けた
「いいかい?!アンタやアタシは「普通」を捨てたんだ!だから他のやつにみたいに普通に生きる事はできないんだよ、そんな奴が一丁前に当たり前を求めるな!でもそんなアタシらにもできる事はあるだろう?!それもやらないで勝手に諦めて!」
名城が間に入り涼木の手を掴む
「涼木さん!やめて!もう!今…」
「アンタは黙りな!アタシ達はサメみたいなもんだ!諦めて止まったらそこで終了!他人の秘密を食って蹴落として生きてるアタシらは死ぬまで泳ぎ続けなきゃならないんだよ!そんな覚悟もないのかい?!そんな性根で日本に帰ってきて何をしたかったんだ?!負け犬根性で裏街道で飯食ってメイドや運転手を巻き込んで家族だなんて言ったのかい?!えぇ?!答えろインポ野郎!」
「…もう決めた、放っておいてくれ」
か細い声で返答する松田
涼木を引き離そうとする名城に力負けし涼木は笑いながら胸倉を離すと
「なぁんてね!アタシは死にたくないからこの国を出るよ。いくらアンタでもあんなもん…おいそれと直ぐに用意できないでしょ?…まぁアンタの可愛い可愛い運転手が目を覚ました時、日本が地獄になってたら…自分のせいで恩人が人の道から外れた外道に落ちたとなったらどんな顔するか見ものだ、じゃあね」
そう言い残し部屋のドアノブに手をかけた涼木立ち止まり口を開き語りだした
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