初戦はサポート成功、だよね?

 公園の入り口に翔くんと戻ると、サコ爺が、満足そうにうなずきながら待っていた。

 わたしを見ると、しらじらしく驚いた表情をしてみせる。


「翔くん、うまくいきましたかな? おや。これは、かわいらしい女の子ですね」

「たまたま公園の中で会った、クラスメイトだよ」


 しぶしぶといった感じで、翔くんは、わたしをサコ爺へ紹介する。

 なので、わたしも、はじめてサコ爺に会ったように、笑顔を向けた。


「これから、翔くんのお手伝いをさせてもらう凛音です! よろしくね! 特技は、かけっこと情報収集、実体化した都市伝説の足止めでぇす」

「かってに決めるな。だれが手伝ってもらうもんか」

「ふふ。もう決めちゃったもの。ね!」


 翔くんの拒否を、わたしは、のらりくらりとはぐらかす。

 あんまり強く、翔くんは言えないはず。

 だって、実際にわたしのサポートで、ワニの足止めができたとわかっているものね。


「ねえ、翔くん。わたしから逃げたりするよりも、いかにわたしをうまく利用するか、考えたほうがお得だと思いますよぉ」

「利用する? その考え方がいやだね」


 わたしに、冷たい目を向ける翔くん。

 でも、顔立ちがいいから、そんな冷ややかな表情が、うっとりするほどステキ。

 写真にして、毎日眺めていたぁ~い。

 ――って、あれ? できるんじゃない?

 ちょっと! 優秀なコンピューターであるドローンくん、彼のカッコイイ場面を撮ってくれない?


 なんて、頭の中で想像していたわたしは、にこにことした笑顔を浮かべて、睨む翔くんに口を開く。


「いやだって言っても、翔くん、それは甘いと思うのです。あ、ちょっと聞いてくださいよ」


 わたしは、くるりとサコ爺のほうへ顔を向けた。


「翔くんったら、真正面から白いワニを斬ろうとするんですよ。本当、バカ正直にも、ほどがあると思いません?」

「バカって言うんじゃねぇよ!」


 ムッとした顔を見せる翔くん。

 思わずわたしは、微笑んでしまう。

 だって、クールで無表情の翔くんも、そりゃあカッコイイけれど。

 やっぱり、感情が顔にでている翔くんのほうが、一緒にいて楽しいもの。

 それが、たとえムッとした表情でもね。

 うん。わたし、もっと一緒にいたい。

 もっと、翔くんのいろんな表情を見てみたいよ。


 やさしい笑みを浮かべたサコ爺は、車の後部座席のドアを開けた。


「それはそれは。心強いですね。どうぞ、お送りいたしましょう」

「こんなやつ、送る必要なんかねぇよ」

「あら、ありがとうございまぁす! お言葉に甘えちゃう」


 ひとり、納得のいかない表情の翔くん。

 でも、わたしは、大好きな翔くんと、こうして一緒にいられるだけで嬉しい!

 それに、これからはひとりじゃなくて、ふたりで戦おうね。

 それにはまず、全力でサコ爺に認めてもらわなきゃ。


 わたしは翔くんを後部座席に押しこむと、強引に横へ乗りこんだ。

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