日曜日

 日曜日らしいのんびりとした陽の光で目が覚めました。

彗ちゃんと集まる日、あらかじめ集合時間は決めません。

2人とも準備できたら、です。

今日は私が彗ちゃんの家に行くことになっています。

「もう行っていい?」

そうLINEを送ったのは午前9時半すぎ。

以前とは違い送った瞬間に既読がつきました。

「うん!待ってるね」

彗ちゃんがふざけたスタンプを送ってきました。

わたしはこれをとても気に入ってるのですが、いつも既読無視します。


「いらっしゃーい」

開いたドアの先に今日は彗ちゃんがいてとても嬉しく思いました。

急に抱きついたら驚かれると思うのでやめておいてあげます。

「おじゃまします」

どうやら今日家にいるのは彗ちゃんだけなようでした。

広いリビングがちょっと寂しそうです。

「おばさんは?」

少しの沈黙のあと、

「買い物じゃない?」

と言いながらサイダーを注いでくれました。

サイダーはいつ飲んでも裏切らない美味しさです。あと誰と飲むかも大事。


 そういえばと彗ちゃんは冷蔵庫から形の崩れたアップルパイを出してきました。

「昨日家来てくれたんでしょ。ママが受け取りたかったけど留守だったから置いていってくれたのねって言ってた」

食べよう食べよう、と彗ちゃんは手際よく切り分けてくれます。

「─違うよ」

ショックでした。

おばさんが自分の娘に嘘をつく人だと知って、ショックでした。

 「?」

彗ちゃんの大きな口がパイを吸い込まず止まりました。

「昨日は、留守じゃ、なかった」

すると彗ちゃんはゆっくり口を閉じ目を伏せて、フォークを皿に音を立てないよう置きました。

大好物が目と鼻の先にある彗ちゃんがこんなことをするのが珍しくて、わたしは見ていて悲しくなってしまいました。

「そっかー」

彗ちゃんは驚く様子もなくサイダーをひとくち飲んだあとふぅと小さく息を吐きました。

「ママさ、やっぱり昨日居たよね」

わたしはうなずくことも首を振ることもできませんでした。


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