とまらない動悸
部屋に戻ってベッドに腰掛けても息切れと動悸が止まりませんでした。
体力がないとか、そういう問題じゃないということに気づいたのは目を閉じてあの甘い香りを思い出したあとでした。
時計の音が鮮明に聞こえました。
冷房が効き始めて汗がひきました。
母がお風呂を入れてくれたようでした。
リビングに行こうと腰を上げました。ぎ、とベットが名残惜しそうに音を立てた、そのとき。
スマートフォンがけたたましく鳴り出しました。
「…彗ちゃん」
また別の動悸がしました。
この電話の向こう側に本当に彗ちゃんがいるのか、不思議な気持ちになりました。
「もしもし」
電話の相手がすごい暗い声だったらどうしようと思ったのは、わたしの余計な心配でした。
「うわー春月久しぶり!声変わりした?って女か春月は笑」
聞きたいことが山程あるのに、彗ちゃんの声が聞けるだけでいいと思えてきてしまいました。
「久しぶり」
「会いたいよ!明日会おう!」
ふふん、と自慢気に笑う彗ちゃんのくせがわたしは好きです。
「いいけど」
「やったね」
今日のわたしはお風呂が長いとお母さんに起こられてしまいました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます